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いつもありがとうございます!

あともうちょいで完結。書きたいシーンが増えてしまったので年内完結目指していたけど、お正月くらいになりそうです……。

私たちがいるから変なことにはならないわよ、とフライア様はにやにや、ナディア様はにこにこ笑う様子に気圧されて、ここに案内するようメリーに告げる。

メリーは一旦屋敷に入って何か指示を飛ばしたかと思えば、すぐに門の方向へ走って行った。


「いまさら何かしらねぇ?」


「子爵令嬢にも逃げられたから復縁のお願いではなくって?」


「えぇー」


面白がる2人を横目に私は一体彼が何の用なのか全く分からない。


「私達もいるし大丈夫よ。さぁなんて言ってくるのかしら、楽しみね」


少ししてからメリーに先導されて元婚約者がやってきた。領地での勉強や実践が忙しすぎて思い出すこともなかった元婚約者なのだが、爽やか系だったはずの見た目が結構やつれている。あれでは5つくらい年上に見えるのではないだろうか。


元婚約者が案内されるタイミングを見計らったかのように、最近メリーといい感じとウワサの料理人がフライパンと麺棒を持って屋敷からコソコソ出てきて木の影に隠れる。

元婚約者は料理人に背を向けているので見えていないが、フライア様とナディア様からは丸見えなので2人とも笑みを深くしていた。

まさかあのフライパンや麺棒が活躍することはないと思うが……。


「えーと……お久しぶりです。本日はどういったご用件でしょうか?」


元婚約者は居心地悪そうにフライア様とナディア様にちらちら目線を投げかけ、話を始めないので仕方なく口を開く。


「せっかく私が隣国へ行く前の楽しいお茶会でしたのに、とんだ邪魔が入ってしまいましたわ」


「本当に。無粋ですわ。知らせも出さずにいきなり来訪だなんてありえませんわ」


私の言葉に追随してナディア様とフライア様が扇で口元を隠しながらコソコソと話す。しかし、その声はしっかり耳に届く声量だ。ただ、あくまでコソコソ話をしているという体だ。


「侯爵家ではどんな教育をしていらっしゃるのかしら」


「あら、でももしかしたらこれが最近のマナーなのかもしれませんわ。だって少し前ですが人前で婚約者を罵倒したりすることが学園でありましたもの。しかも殿下が率先してされていましたし」


「まぁ! そういえばそんなこともありましたわ! それに婚約者がいるにも関わらず1人のご令嬢に何人も不適切な距離で群がっていらっしゃいましたね。あれが最近のマナーですの?」


「あの当時では眉を顰める方も多かったはずですが……あの当事者の方が再教育されてこのようなマナーなわけでしょう? もしかしたら王都での最新のマナーはこうだったのかもしれませんわ。私、まだまだ不勉強ですわ」


「ナディア様が不勉強なら私なんか足元にも及びませんわ。同じ侯爵家でもこんなに差があっただなんて」


ナディア様とフライア様のコソコソ話(ばっちり聞こえる)が怖すぎて、目の前の元婚約者に中々集中できない。しかもかなり直接的な当て擦りだ。


「あの、このような田舎までどういったご用件でしょうか?」


ストレートな皮肉に笑いを堪えるのと2人の雰囲気が怖いのとで、私の再度の問いかけの声まで上ずってしまった。


「そういえば、キャンベル侯爵家ってある子爵家と婚約寸前でダメになったみたいね。お茶会に参加したお母様が話していたわ」


「一体なぜ婚約寸前までいってダメになったのでしょう?」


「相手のご令嬢が嫌がって逃げたみたいなのよ」


「まぁ! そのご令嬢は修道院にでも逃げ込んだんですの?」


「いいえ。ずっと慕っていた方と入籍したというお話よ。お相手は使用人の方なんですって」


「素敵! 身分差ですのね! それって真実の愛ではありませんの!?」


「貴族としての望まない婚約より好きな人との愛を貫いているからそうかもしれないわ」


元婚約者が言いづらそうに口を開こうとするが、ナディア様とフライア様の話に遮られる。

さっきより会話の内容がえげつない。


「エリーゼ、その……」


「まぁ! 最新のマナーでは婚約していないご令嬢の名前を呼び捨てにするのかしら!」


「うーん……分からないわ……私が勉強したマナーでは違うのだけれど……」


やっと元婚約者が言葉を発したと思ったらまた2人にぶった切られている。

今気づいたけど、元婚約者の顔色がさっきよりも悪い気がする。

そして元婚約者の後ろには、フライパンを受け取ったメリーと麺棒を手にした料理人。

なんだかシュールすぎて、思わずアシェル殿下との出会いを思い出してしまった。今の状況はアシェル殿下が池でオタマジャクシを捕まえているのくらいシュールである。


「君に会いたいと伯爵に手紙は送っていたんだが……返事を全く貰えなくて。ここまで来たんだ」


「えーと……そうですか……」


さすがに会話が進まないと思ったのか、気が済んだのか、2人はコソコソ話をやめてこちらの会話に聞き耳を立てている。


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