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「まぁ……これは個人の考えで独り言と流してもらって構わない。今回のあの女絡みの問題が大きくなってしまったのは王家の介入が遅くなってしまったせいもある。言い訳にしかならないが、最初は学生の間の火遊びだと目されていたしな。婚約者が浮気を止められなかったのがいけないとか宣う輩もいるが、僕は関係ないと考えている。まずは使用人や側近、友人たちが諫めるべきだし、それでも聞かないなら兄弟や親がもっと注意すべきだったんだ。婚約者のご令嬢方に責任はない。まだ仮説しか出ていないが、呪いの道具が関与していたとしてもね」


兄の過労死云々のセリフはさらりと無視された。


「僕もスチュアートが大して使えないからって注意を払っていなかったしね。そこは反省してる」


王太子殿下はその時だけ困ったように笑った。さきほどまでの自信満々な様子はその瞬間だけ離散する。

王太子殿下とはほとんど言葉を交わしたことなどなかったが、彼なりに気にかけてくれていることが伝わってくる。


「じゃあ、アシェルをここに呼んできて」


近くにいた使用人に王太子殿下は指示を出す。


「え? あの……」


「じゃあ、トファー。任せている仕事の続きをよろしく」


慌てて兄を見るとムスッと機嫌悪そうに王太子殿下を睨んでいた。


「目的はアシェル殿下と会わせることだったのか?」


「いいや? そんなわけ無いじゃないか。全てが目的だよ」


王太子殿下はまたウィンクする。


「ま、弟に会っていってよ。君が登城することは前もって伝えてあるからさ。来ないようなら帰ったらいいよ。馬車なら出すから」


王太子殿下はさらにウィンクすると、輝く笑顔で嫌がる兄を引き摺って行く。


「あ、あの! 私はまだ何も!」


圧倒されて口を挟めなかったが、このまま流されてはいけないと王太子殿下に向かって叫ぶ。


「私は大して優れていませんし。婚約者ともまだきちんと向き合わず、父の意向で婚約だけが続行している状態です。そんな私が……このままの私がお会いすることはできませんし、そんな提案をしていただけるような人間ではありません……!」


緊張のあまり途中で声が裏返りかけた。喉がカラカラだ。手も震えている。

兄はそんな私を見てなぜか少し嬉しそうにした。

王太子殿下はちょっと考える素振りをしたが、また輝く笑顔をこちらに向ける。


「順番なんて些細なことだよ、エリーゼ嬢。向き合うと決めた瞬間、また向き合っていないと自分で分かった瞬間、君はもう既に向き合い始めている」


「なんだよ。その哲学者か新興宗教のトップみたいな発言は」


王太子殿下の決め台詞を兄はぶった斬る。王太子殿下は肩をすくめた。困ったような素振りだが、ジェスチャーがわざとらしい。


「まぁ、気にすることはないよ、エリーゼ嬢。アシェルはいずれ結婚して子を成さないといけない。王族の血を絶やさないために。将来、伝染病とか何が起こるか分からないからね。アシェルも理解してると思うけど、興味があるものとないもので扱いの差が激しいなんてもんじゃないから。僕が気にしてるのはそこ。アシェルがもし君を本当に気に入ったなら、飼っているトカゲやヘビのように籠の中で飼われちゃうかもね? ま、そしたら婚約は僕が責任もって、王太子の名のもとに解消してあげよう!」


「王太子が暴君且つブラコンで、第2王子が変態とか大丈夫なの、この国……」


「大丈夫だ、自覚している!」


「はぁ……休暇欲しい……エリーゼ、今日はディナーまでに屋敷に帰るようにするから」


兄は引き摺られて部屋から退出した。豪奢な部屋に取り残される。

彼と向き合わないといけないと思ったばかりなのに、とんでもない方向に話が転がりだした。


「はぁ……」


「やぁ」


「ひっ!」


さっさと帰ってしまおうと考えながら緊張が解けてため息がこぼれる。

扉から入ってくると思っていた人物は部屋に飾られていた絵画の後ろから突然現れた。


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