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ランキングにも載り続けていてびびっております。
馬車に向かいながら、久しぶりに晴れやかな気分になった。
行かなくてはいけない社交も学園も今まではルルの件があったため、針の筵だった。
浮気してみたら彼の気持ちが分かるだろうか。
少しは胸のすくような思いになるだろうか。
そもそもずっと彼と婚約していたのに誰かを急に好きになったりできるだろうか。
不安は山のようにある。
でも、いつまでもウジウジしていられない。
ナディア様の言う、私の気持ちはまだよく分からない。
でも今のままではいたくない。だからひとまず決心してみた。
この舞踏会で誰かにときめいたりしなかったら、彼と結婚する。
もしかしたらすぐに揺らいでしまう決心かもしれない。でも、ずっとうちに居ても、私は役立たずだ。
今は触れられるのも嫌だから結婚して義務を果たせるかも分からないけれど、私の母のように子供を産んで引っ込んでもいいならアリかもしれない。
それに、今なら誰もが彼より素敵に見える気がした。
兄からの助言で、彼には学園再開まで領地にいると伝えてある。
仮面舞踏会の準備があるのに訪ねてこられてバレても困るからだ。
呼んだいつもの仕立て屋はルルの噂を聞いていたらしく、最初はひどく心配された。
最近はパーティーや茶会にもほぼ出ていなかったので余計にだ。
今は当の本人そっちのけでメリーとノリノリでデザイン画を描いている。
「これまではグリーン系のドレスが多かったので全く違う色にしましょう。仮面舞踏会なら派手に!」
「赤やピンクですか? お嬢様には青も似合うとずっと思っていました!」
「パステルカラーも捨てがたいですね!」
「髪型も新しい編み方に挑戦しましょうね!」
他人のことなのに熱量が凄い。
私はその熱さに気圧されながら、珍しく休みの兄とダンスをおさらいした。
貧血は軽めだったが、何曲も立て続けに踊るのはキツイので休憩を多めに挟み、兄と本当に久しぶりにステップを踏んだ。
「お嬢様、楽しんできて下さいませ」
オズワルドが蝶を型取り、羽根をあしらった仮面を手渡してくれる。
「いってくるわ」
背中はこれまでのドレスに比べてかなり開いている。今まで纏ったことのない真紅のドレスを翻して私は裏口に停まる馬車に乗り込んだ。
次回から舞踏会の場面になります。




