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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第一章 穀倉都市 ケルノン
8/64

第6話 姉という名の鬼

25人もの方にブクマ頂けて…感謝感激です。

もっと多くの方に読んでいただけるように頑張りますのでよろしくお願いします!


さて今回話の途中で半年ほど経過します。

そしてそろそろ主人公が料理する兆しが…?

 翌日


 俺は自室で半分眠りながら魔力のトレーニングを行っていた、のだがーー



 バガァン!!!



 突如朝の静寂を打ち破ってドアが吹き飛んだ。


(げ・・・来たか・・・。)


 もともとドアがあった場所に目をやると寝起きの目には眩しい真っ赤に燃えるような長い髪が揺らいでいた。



「ちょっとレオン!アンタ随分と舐めた真似してくれるじゃない!!!」



 ドアだけじゃなく俺まで吹き飛ばす勢いで甲高い声が俺の部屋に鳴り響いた。


「・・・どうしたのローゼ姉さん。」


 この人は俺の姉、ローゼス=リズベルグ。

 名前は花のような可憐な名前がついているが、特徴的な外見と性格からこの町で炎髪鬼といえばうちの姉というぐらいに名前が通っている狂犬だ。

 本当は母さんが花のように可憐でありつつたくましい女性に育つように、という願いを込めたようだが可憐さは何処かに忘れてきてしまったようだ。


「アンタ魔法が使えたらしいじゃないのよ!」

「うん、そうだね。」


 言ったところでこう言う風に絡まれて面倒事になるのが目に見えていたので黙っていたのだが、とうとう来たか。


「決闘よ!」

「嫌だよ。」


 気に入らない事があるとすぐ決闘でねじ伏せようとするのがローゼ姉の悪い癖だ。だから狂犬って呼ばれるんだぞ。

 しかも朝から決闘を申し込まれるとか寝起きに背脂タップリのラーメンを食わされるぐらい嫌だ。

 しかも姉さんは負けん気が強いから受けたら受けたで全然諦めないんだろうなぁ。


「何ですって・・・!」


 あ、ヤバイ。これはキレるぞ。


「こんっの…馬鹿レオー!!!!」


 轟々と音を立てて魔力が放出され部屋に熱風が吹き荒れる。

 ローゼ姉さんの得意な魔術は火魔術だ。得意とする魔術は性格や術者の精神面に大きく左右されるのだが姉さんと火の相性はバッチリ、昔ウチの店で飲んでる時にガリノスが零していた好みの女性のタイプと一緒だ。

 解らんけど多分姉さんもガリノスから加護授かってるんじゃないかな。


(って、そんなこと考えてる場合じゃないな。)


 このままだと部屋を消し炭にされる。

 俺は自分の魔力を放出し、中和を試みる。

 申し訳ない気分になるが俺は4神から加護を授かっている身だし、火の魔力と相性の悪い水の魔力も多分に有している。


「むぅー!!!」


 俺の魔力を押し返そうとローゼ姉が魔力の放出を強め、指先で魔法式を刻み始めた。


(マズい!)


 そう思い咄嗟に「水球」を発動させローゼ姉の手を覆った。


「くっ・・・何よこれ!」


 ローゼ姉は必死に水球を解除しようとするが、上手く魔法式が組み立てられずジタバタしているうちに


 シュゥ…


 魔力の放出が止まった。

 あの勢いで魔力を放出していれば当たり前だが、魔法を撃たれる前に尽きてくれてよかった。

 ローゼ姉も年の割に魔力量が多いのでちょっとマズいかなと思ったぜ。


「ふ、ふぬぬぬ・・・!」


 ローゼ姉はまだ魔力を絞り出そうとしているがこれ以上はやめた方が良い。

 無理をすると生命力を削る事になる。


「ちょっと姉さん・・・!」

「うぅっ…覚えてなさい!」


 三下のような捨て台詞を吐き捨てローゼ姉は走り去っていった。

 本当に嵐のような人だな、いきなり怒っていきなり帰っていった。


「年頃の娘が考えてる事はわからんな。」


 前世では兄弟もいなけりゃ恋人もいなかった俺には女心はとんとわからん。そういう背景もあって俺はローゼ姉がちょっと苦手だ。


「まぁいつもの癇癪みたいなもんだろう。」


 そう思って俺は部屋の修復をいそいそと始めた。

 だが、俺が思っていたよりも今日の出来事は姉の心に傷を残していた事を知るのはまだ先の話である。



 ーーーーーーーーーーーーー



 そして俺が自宅謹慎を食らったあの日から約半年

 既に謹慎は解かれて自由に外出出来るようになったのだが、遠出しようとすると両親が微妙な顔をするので自室か家の近辺で訓練をする程度にしている。


 あの半年前の事件は皆に衝撃を与えてしまったようで、シグ兄とレノ兄は一層訓練に精を出すようになり、ローゼ姉は俺を避けるようになった。

 ローゼ姉の方はあの事件というか、その翌日の一件が原因にありそうだが…。


 家族の変化に思いをはせつつ自室で魔力トレーニングを行っていると、この日は珍しい事があった。



 コンコン



「はい?」

「坊っちゃまにお客様がお見えですよ。」

「僕に?誰だろう」

「シーラという青果商のようですが。」

「! すぐ行く!」


 服を着替え部屋を飛び出した。

 あのドタバタで忘れてたけどどうなったんだろう。


 応接間に急行すると母さんとシーラが会話を弾ませているところだった。


「いやぁ、おたくの坊ちゃんは大したもんですよ!お陰様でこっちは大助かりで!」

「あらあら、レオンちゃんがそんな事をしていたなんて私知りませんでしたわ、シーラさんのお店は最近市場でも有名でしたから気になっていたのですよ。」

「奥様のお眼鏡に叶うならこりゃありがたい事ですわ、ぜひ今後ともご贔屓に!」


 話から察するにどうやら上手くいったようだな。


「やぁシーラ、久しぶり。」

「お!レオンの旦那お久しぶりで!」

「なんか随分と雰囲気が変わったね。」


 前もエスニック風の衣装を身にまとっていたが今の服は材質が良さそうだ。小綺麗な化粧もしていて商人っ気が増している。


「そりゃね、お陰様でがっぽりさ!見ておくんな、この半年の成果さ!」


 そういってシーラは持参していた籠を差し出して来た。


「おぉ…いいね!」


 中にはギッシリと瑞々しいアプールやモレン、他にもいくつかの果物と野菜が詰められていた。

 母さんはキラキラと輝くような自然の宝に目を奪われ感嘆の声を漏らしている。


「凄いね!傷一つなくて見た目もいい!」


 鼻腔を擽る香りもなかなかのものだ、これなら皮だけでも料理に使えるぞ。


「だろぅ?シーラの店の売りもんはみんな別嬪だっていってくれるし、傷がつかなくなってから味が良くなったって評判でね。」

「へぇ、どれどれ?」


 前と同じようにモレンに被りつく。


「レオンちゃん!?」


 母さんが止めようとするが御構い無しだ。


「っくぅぅぅ〜〜!!」

「どうだい?」


 前に比べて痛みから来ていたエグ味が消え痛烈な酸っぱさと爽やかな苦味が冴え渡っている。果汁も申し分ない!


「最高だね!」

「ははっ!期待に添えたならよかった。」


 そんな俺とシーラのやり取りを母さんは目をパチクリさせながら眺めていた。



 腰を落ち着けて話を聞けばシーラは想像以上に良い方向に動いてくれたようだ。運搬方法を変えたことから傷物が減り売り物にならない青果が減っただけでなく、値段を若干高くしても売れるようになったらしい。

 とはいえ早くも半年で投資分は取り返せたというからシーラの手腕が光ったのだろう。ゆくゆくは千◯屋みたいになったりしてな。


「良かったじゃないか、でも半年で黒字にするとは流石シーラだね。」

「いやぁ、旦那のひらめきが有ってこそさ、感謝しても仕切れないね」

「その旦那ってのやめない?母さんの前で言われるの恥ずかしいんだけど。」

「何言ってんだい、旦那は燻ってたアタシを救ってくれた救世主なんだ。そんな人を呼び捨てにゃ出来ないね。」


 母さんの耳に入るぐらいシーラの店が繁盛しているのであればそれは間違いないのだろう。

 しかし・・・何というかおだてられてる感じがするな、こういう時ってなんか裏があるんだよな。


「ねぇシーラ。」

「なんだい旦那?」

「なんか企んでるでしょ?」


 そう問い詰めるとシーラは苦笑しつつ白状した。


「やっぱ旦那にゃバレるか、いったいどんな教育受けてるんだか」

「で、本題は何?」


 すると今までの和気藹々とした雰囲気から一転、重苦しい空気が漂い始めた。



「実は…相談があってね。」



 沈痛な面持ちでポツリポツリと静かに絞り出すようにシーラは言葉を紡ぐ




「俺でよければ乗るけど、何だい?」




 水を向けるとシーラは顔の前で手を合わせ拝むようにしてこう言った。




「アタシにもっと儲ける手段を教えてくれ!!」




 思わず俺と母さんは椅子からずり落ちた。

お読みいただきありがとうございました。

今回で家族が出揃いました、激情家の姉です。


家族全体の年齢はこういうイメージで書いてます。

父マグナス 34歳

母ネメア 32歳

長男シグムント 9歳

次男レノマ 8歳

長女ローゼス 7歳

三男レオン 5歳


兄弟達との絡みは大人になってからが本番、の予定ですがちょこちょこ出て来ます。

そして長くなる幼少期編!早く料理を書きたい作者の葛藤!


四苦八苦しながらですが随時執筆して参りますのでよろしくお願いします。

また、コメント・評価もお待ちしてます!


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