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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第一章 穀倉都市 ケルノン
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第4話 人を見かけで判断するな

「さて、そろそろ戻らないと。」

「おや、もう帰るのかい?」

「うん、今日は抜け出してきちゃったからね。」


 魔力探知を広げると護衛騎士達が忙しなく市場を動き回っている。どうやら俺が居なくなったのに気づいて探し始めたみたいだな。

 この魔力探知という技術は人や生命体のもつ魔力を感じ取る索敵術なのだが、食材を調達する上でも便利だと思い練習してみた。今のところ感度を変えることで鼠程の小さな動物でも感知できる程になっている。


「そうかい、あんたが言った事が上手くいったら屋敷にでも報告に行くよ。」

「解った、楽しみに待ってるよ。」


 それじゃ、とシーラに手を振り市場の中心部に向けて足早に向かった。


「あまり長く離れすぎると大事になるからな、早く戻らなくちゃ。」


 呟きつつ最短距離で戻る為路地裏に飛び込み走る。





 だが1.2分走ったところで突如魔力探知の網が違和感を感じ取った。


(ん…?)


 意識を伸ばすと小さい魔力反応が俺のあとを追いかけてきている。

 しかもネットリとした視線と悪意のおまけ付きだ。


「あいたっ」


 つまずいたフリをして後ろを確認しても視界に人影は捉えられない。

 だがそれでいて物陰には魔力反応を感じる。


(キナ臭いな)


 動物が獲物を狙う時に醸し出す独特の雰囲気に似ているが…こういうのは相手に気取られたら負けだ。

 俺は前世で獲物を自力で狩ることも多かったからこそ、この雰囲気はすぐに分かった。


 あと3ブロック程進めば市場の中央広場に出るのだが、そこまでは暗い裏路地だ。

 仕掛けてくるならここ以外には無い。


(ちょいと腕試しと行きますか。)


 この5年間無駄に過ごしていた訳ではない。

 独学の魔力・筋力トレーニングだけではなく、父とシグ兄の組手を見てこの世界の剣術も学んだし、姉に付いている魔術教師の授業を天井裏から見て魔術も身に付けている。


 何より前世で色々な動物を狩ったり、酔っ払いやショバ代をせびるヤクザとしょっちゅうやり合ってたから実戦経験は十分だ。さすがにアマゾンの奥地で現地の部族に包囲された時は死ぬかと思ったけど。


 今回はその経験とこの世界で身に付けた技術を織り交ぜてやってみよう。後々魔物とやりあうならコレぐらいは朝飯前じゃないとな。


「よし、気合い入れてこ。」


 俺は魔力が漏れださないように身体強化の魔法を溜めつつ、十字路を折れ魔力反応を消した。



 急に魔力反応が消えた事に焦ったのか追跡者は息を乱しながら十字路に駆けこんできた。


「クソッ、どこ行きやがった!」


 駆けこんできた男は声を荒げて左右を見回している。

 行商人風の恰好に大きなずた袋、そして腰には不似合いなナイフが数本。

 この装いは…人攫いだろうな。


「こっちだよ。」

「なっ?!」


 頭上からの声に男は驚愕の顔を見せている。

 そりゃまさか子供が建物の壁に取り付いているだなんて思わないだろうよ。


「チィッ!」


 男が腰のナイフに手を伸ばすのを見て確信した。

 元々解っちゃいたが穏やかな感じにはならんわな。


「させないよ。」


 パチンと指を鳴らすと男の顔がすっぽりと水球に覆われた。


「ガボッ!?ガボボガッ!!?」


 男は腰に伸ばした手を思わず顔に伸ばす

 必死に水を取り除こうと手をバタつかせるが水球は顔から離れない。


(これ結構イケるな。)


 俺が使った魔法は基礎魔法の「水球」

 本来は水球を投げつけたり、水球から圧縮した水を飛ばす魔法の前身となる魔法だが、これだけでも十分戦闘に使える。


 俺は地面に飛び降りもがく男をじっくりと観察してみるが大人でも水球を引きはがす事は出来ないらしい。

 次第に男が空気を吐ききってしまい、このままだと死にかねないので水球を解除する。


 バシャアッ


 音を立てて水球が解除され、男が犬のように手をついて倒れ込む。

 服はずぶ濡れになり呼吸は荒い、大分痛めつけてしまったかな。


「ハァッ…ハァッ…何なんだ…お前‥ゲホッ…オウェッ」


 男が困惑の眼差しでこちらを見上げながら震えている。

 まるで化け物を見るかのような目でこっちを見ないでくれよ。


 終わりかな、と思っていると後ろから声が上がった



「そこ!何をしている!」



 ガシャンガシャンと音を立てて足音が近づいてきた。

 うちの騎士団の鎧を身に付けている、衛兵だ。


「クソッ」


 男ははほうぼうの体で這って逃げようとしているが水を大量に飲んでしまったのか動きが鈍い。

 あのままだとすぐ捕まるだろうな、そう思ってみていると衛兵がこちらにやってきた。


「坊ちゃま!ご無事ですか。」

「有難う。僕は大丈夫だよ。」

「御無事で何よりです、さぁこちらへ。」

「うん。」


 衛兵が俺を保護すべく手を差し出してきたのでしっかりと握り返し




 唱えた。




瞬間凍結(ショックフリーズ)

「えっ」


 間抜けな声を漏らし衛兵は凍り付いた。

 体内の水分が瞬間的に凍り付き、氷像と化したその身体からは冷気の帯が流れている。


「この人もグルでしょ?」


 振り返りつつ逃げるフリをしていた男に話を振るとガタガタと震えながら俺を指さし叫んだ


「ななな、なんでだ!?何で気付きやがった!?」

「簡単だよ、ウチの騎士団員じゃない魔力反応だったから。それにウチの騎士団員はどんな時でも必ず二人一組で行動するように訓練されてる。一人でここを歩いてる時点でおかしいんだ。」

「クソッ!クソッ!クソッ!なんなんだよお前は!!」

「まぁ、ただの子供と言っても信じてもらえないだろうね。」


 そう言いつつ錯乱する男に向けて手をかざし、同様に瞬間凍結をかけて無力化した。


 実際に使ってみて思ったが、瞬間的に魔力を練り上げるだけで済むから凍結の魔法は意外と燃費が良いな。

 本当は食材の質を落とさずに輸送したり氷菓を作ったりするために覚えたのだが、料理よりも先に戦闘で使う羽目になるとは…。


 男の大声を聞きつけたのか大通りから足音が此方に向かって来る。

 どうやら今度は本当の衛兵のようだが。


「これ多分父上に怒られるなぁ・・・。」



多くの方に読んでいただき嬉しいです、そしてブクマ・評価頂いた方有難うございます!


今回は主人公をちょっとはっちゃけさせました。

強さについては一応この世界で神の加護持ちは珍しいことになっているので…。

まぁ料理人たるもの材料も自分で獲れなきゃいけませんからね(異世界持論)


急にはっちゃけてしまった主人公はこの後どうなるのか、お楽しみに!

(※早く屋台を登場させたいと思ってますがしばしお待ちを…!)

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