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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第二章 城塞都市 ヴェルスタッド
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第48話 戦後のそれからこれから

※また長くなりました本当ごめんなさい!

「メンチ1にトーフハンバーグ1、ラーメン2入りました!」

「はいよー。」



 ――終戦宣言から半年



 凍えるような冬が過ぎ、城塞都市に春が来た。


 終戦に伴い傭兵や戦争を商売にしていた人種が減って街は少し様変わりしつつあるが、俺は変わらずこの街で屋台を続けている。


 変わった事と言えばこの半年であり過ぎて思い出すのもしんどいが、順を追って整理していこう。


 まず北方部族達だが、どうやら聞いた話では今年の冬、餓死者は一人も出ずに済んだらしい。


 シーラ商会から供給した食糧が最初は毒入りなんじゃないかとか色々と向こうの人たちに疑われて大変だったが、レツオウ自ら民衆の前で野菜や果物を食って見せた事からすんなりと民衆に受け入れられたそうだ。


 そのレツオウは一部の民衆から売国奴だ何だと反発を受けているらしいが、その考えも自由だと説きつつ自身はヴィノ王国との友好条約締結や、北方部族達の集落を新たな町として纏め上げたりと精力的に活動しているそうだ。


 まぁそんなお偉方の尽力もあって最近この街と北方部族との交流が開始された訳だ。

 ちらほらと町中に北方出身の人が見られるようになったが、正直トラブルは結構ある。


 やはり長年軋轢があって殺し合いをしていた者同士、積もり積もった確執があるのだろう。

 そればっかりはすぐに解決する話じゃないからじっくりやっていくしかないな。


「先にラーメンが出るぞー。」

「はーい!ラーメンお待ちどうさまです!」

「おぉこれが噂の!」「よっしゃ啜るぜ!」


 俺の方はと言えばお陰様で繁盛している。


 前にダンジョンで振舞ったラーメンが冒険者間で話題になって、冒険者がゲン担ぎにラーメンを食いに来る事が増えた気がする。

 元々販売していたカツ系のメニューはシーラ商会でも買えるが、ラーメンだけはどうしてもウチの屋台でしか提供していないので尚更客が集中している。


「今日も相変わらずお客さん多いですね。」

「そうだな、でもセイラが居てくれて助かるよ。」


 正直そんな感じでてんてこ舞いの毎日だが、セイラが時折サポートに入ってくれるので助かっている。


 セイラは仕事が有る日は北方に向かう食料補給隊の警護や負傷者の治療のために病院に行ったりと、根っからの聖女っぷりを発揮している。

 最近はそのせいかセイラ目当ての客まで屋台に来るようになって色んな意味で大助かりだ。


「ふへへ、私も頑張りますね!ほかの皆さんに負けてられません!」

「まぁセイラはセイラのままでいいと思うんだけど…程々にね?」


 そうだ、他の面子というと俺の代わりに北方部族の街に出向いてレベンの栽培や、畜産ラインの構築等様々な仕事の対応をしてもらっている。

 その筆頭がハルとシーラで現地通訳的な感じで橋渡しをしているのがイナリだ。


 俺が直接動いていない理由は例の如く政治や権力の世界に深入りしないためだ。


 終戦の為にかなり動いてしまったので手遅れ間は否めないが、ゼオンの爺さんに頼んで俺が動いた事はヴィノ国王含め口外しないように頼んだ結果今こうして呑気に屋台が出来ている。


 ちょっと今回ばかりは我がままで申し訳ないと思ったが神器やジェノの話が明るみに出ると非常にめんどくさい話になるのでこうしてひっそりと生活させてもらっている。


 因みにイナリはミヤビの懇願と俺達からの嘆願もあってお咎めなしになった。

 この話が出たときにミヤビさんから「今後ともよろしぅに。」と言われたけど何のことだろうか、正直怖い。


「追加お客様3名入りまーす!」


 じっくりと思い出話を振り返りたいが、この続きは営業がちょっと落ち着いてからにしよう。


「いらっしゃいませー!空いてる席へどうぞー!」


 ――――――――――――


「やっと一息つけるな。」

「そう、ですね今日は特にお客さん達が多かったですね」


 昼の営業が終わったのは日が傾き始めた夕方だった。

 この分だと仕込み量的に今晩の営業はやめておこうかな…。


 皿を洗いながらそう考えていると豪快な腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。




 グゴギュルルルルゥ…




「あはは…すいませんお昼食べていなかったので限界かもしれないです…。」


 見ればセイラの顔が若干コケ始めている気がする。


(いかんこの元聖女滅茶苦茶燃費悪いの忘れてた。)


「すぐ作るよ、ナポリタンでいい?」

「えっと、今日は…あれが食べたいです、ジェ、ジェノ…何でしたっけ?」

「あぁジェノベーゼか、すぐ作るよちょっと待ってて。」


 ジェノベーゼは最近ラインナップに新しく加わったパスタだ。

 前までは中々材料が手に入らないメニューの一つだったが、最近はジェノのお陰で安定して作れるようになった。


「しかしジェノさんがあんなことを始めるなんて微塵も思いませんでしたよ。」

「それなー、俺も呼ばれて行った時凄く驚いたよ。」


 ジェノが始めた事、というのはまさかの農場経営だ。

 奴が住んでいるダンジョンの第十階層は一度俺のせいで焼け野原になったが、終戦後からジェノがちくちくと整地作業を行い、人間でも食べられる野菜やハーブを広大なダンジョン内で育て始めたのだ。


 焼け野原が青々とした植物で埋め尽くされている事に勿論驚いたが、育てられている物の中に探し求めていたオリーブやアブラナのような油がとれる植物が何種類かあった事にはさらに驚かされた。


 お陰でシーラ商会ぐるみで食用油の生産業にも着手することが出来て俺やシーラの懐がさらに潤い、ダンジョン農場様様である。


 元々到達する冒険者が少なかった第十階層だが、そんな事情でゼオン直々に関係者以外立ち入りを禁止するルールが制定された。

 突然のお触れだったので一部冒険者が反発していたが、そういう奴ほど十階層にたどり着く前に魔物に敗れて痛い目を見ていたので当分の間は大丈夫そうだ。



「ほい、出来たぞー。」

「わぁ、鮮やかな緑色!春って感じがしますね!」

「そうだな、見た目も味も春を感じさせるいい料理だよ。」



 鮮やかな緑色のソースが絡んだパスタが春を感じさせるため、このメニューは冒険者よりも文化的情緒を重んじる上流階級にウケが良い。 


 それにジェノベーゼというネーミングをゼオンが気に入ったらしく、話題を呼んでいる。

 なんでも【ジェノベーゼ】という響きが【ジェノの寵愛】と取れるらしく味も相まってお忍びで食べに来るぐらいだ。

 いつしかその話がうわさで広がり、城塞伯が愛するパスタとして流行の兆しが見えている。


 因みにジェノベーゼソースは瓶詰めしてシーラ商会で販売中、上流階級の奥様方に大人気だ。

 まさかダンジョンの主が仲間になるなんて思っても見なかったが大きな収穫だよ本当に。


 まぁ半年で色々あったがそんな感じで元気にやっている。




「ひままへひはいあひでおいひいでふほ!(今までにない味で美味しいですよ!)」





 腹ペコ元聖女様が吸引力の変わらない唯一の掃除機ばりにパスタを吸い込んでいると暖簾を潜って客が入ってきた。



「おー、相変わらずいい食いっぷりじゃのー。」




「ハルしゃん!」

「アタシも居るよ、久しぶり旦那ぁ。」

「お、シーラもか!おかえり!」



 表れたのは俺の代わりに戦後処理に走り回っていたハルとシーラの2人だった。

 春先には戻れそうだと手紙を貰っていたが予想より早い帰還だ。


「取り敢えずキンキンに冷えたエールを頼むのじゃー。」

「アタシも同じのを一つ頼むさね。」

「はーい!私用意しますね。」


 口の周りを春色に染めたセイラがサーバーへ駆けていくと同時に二人はどっかりと椅子に腰かけた。

 疲れ切った顔でカウンターに座る二人は前世でよく見たサラリーマンのようだ。


「ほい、お通しとおしぼり。」

「はわぁぁ有難いのじゃあぁぁぁ…」

「旦那の屋台に来るとコレがあるから最高さー・・・。」


 二人は程よく暖められたおしぼりを顔に押し当てリラックスしている。

 中々にオッサンじみているがアレは気持ちいから咎めようがない。


 その後、セイラが持ってきたエールで乾杯をして、俺以外の成人しているメンバーは酒盛りを始めた。

 今日は半年ぶりの再開だ、貸し切り営業にしてじっくり話を聞くとしよう。





「で、どうだったよ?」


 ひとしきり二人の腹が膨れたところで報告を促した。

 出来上がる前に聞かないとハルの場合は口から言葉じゃなくて虹が出るからな。


「そうじゃなー、お主が言っていた温室という仕組みは大体出来たのじゃ、これでレベンに限らず色々な作物が作れるじゃろう。」

「そっか、それは良かった。」


 レベンの栽培だけに頼ってしまうと万が一レベンだけがかかる病気が流行した時に生活が維持できなくなる。だからハルには土壌調査に加えて温室の概念を伝えていたのだが、上手くやってくれたようだ。


「シーラの方は?」

「こっちは大分苦戦したよ、だけど何とか試作品が出来たから見ておくんな…よっと。」


 そう言うとシーラは背負子から革袋を二つ取り出しカウンターの上に置いた。

 俺はそれらを手に取り袋の中を覗き込んだ。


「おぉ!いーい感じじゃないか。」


 袋の中に詰まっていたのは茶色い粉末と、淡い黄色の塊。

 そう、俺が期待してやまなかった砂糖とバターだ!


 厨房備え付けの匙とナイフを使って各々を口に運ぶと懐かしい味が口全体に広がった。


「純度も申し分ないし雑味も少ない、どっちも良い仕上がりだよ。」

「旦那の眼鏡に適ってよかった、砂糖の方は買い手がいい感じに付きそうだし供給ラインが整ったら本格的に売り出していくさね。」


 今この世界では砂糖は贅沢の象徴でべらぼうに高い。

 しかも一部の植物から取れる花の蜜を煮詰めた物なので、数が少なくて滅多に料理には使えない。



「バターは当分ウチで使う事になるかな、まぁ新しいものが受け入れられるには時間がかかるしそこはしょうがない。」



 バターは北方で飼育されている魔獣から取れた乳で作っている。

 まだこの世界では魔獣の乳を口にする事には抵抗があるだろうから、これは徐々に鳴らしていかなければな。


「しかしレベンって野菜は凄いねぇ、根っこは砂糖の元になるし、絞り終えたカスと残った葉っぱは魔獣の餌になる。本当捨てるところがない野菜さね。」

「鑑定した時にはこんな使い方まで出てこなかったからのう、お主から話を聞いた時には腰を抜かすところじゃったわ。」


 今回の終戦の立役者であるジェノが作り出した野菜「レベン」これは前世で言うテンサイと似ている。

 あのタイミングでこの作物が手に入ったのは本当に運が良かった、畜産文化の醸成に製糖拠点の構築、両方がレベンのお陰で解決した。


「堕落の種って聞いた時はもっとおどろおどろしい物だと思ったけど、蓋を開けてみれば無限に湧き出る命の泉みたいな作物だったな。」

「そうですねぇ、争いも無くなりましたしこれからは皆でゆっくり過ごせますね!」


 そうだな、平和が訪れた事だし新メニュー開発も本腰を入れてやらないとな。


 街に来る人も変わってきたし新たな食材との出会いも有るかもしれない。



(これからまた楽しくなるなぁ!)



 能天気にそんなことを思いながらレモネードを傾けていると、申し訳なさそうにハルが口を開いた。




「あー、それなんじゃがな。」




 歯切れ悪くハルが口ごもる。






「そろそろワシはこの街を離れようと思う。」

「え?」






 思いもしなかった言葉に理解が追い付かない。


 え、街を離れる?何で?



 頭が処理しきれない衝撃を受けフリーズしたが、そんな俺に更に追い討ちをかけるように声が上がった。






「因みに旦那、アタシも同じく。」

「は?」







 申し訳なさそうに手を上げるのは長年連れ添ったシーラだった。

お読み頂きありがとうございました…!

またまた長くなってしまってすいません。


書こうと思っていたことを詰め込んだらめちゃくちゃ長くなりました、反省。


次回で第2章エピローグです。

どうか最後までお付き合い下さい!


※作品は続きます

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