第3話 シゲキ的な出会い
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どんどん書いていきますので今後ともよろしくお願いします!
翌日、俺は町の中心にある市場へやってきた。
市場は町の規模のわりに活気に溢れ、行商人らしき人間が背負子や頭に品物を乗せて練り歩いているかと思えば、構えた店舗から客を呼び込む威勢の良い商人の声が響いていたりする。
(これだよコレ!やっぱ知らない町の市場はテンションが上がるなぁ!)
やっぱり母上に相談して良かった!
今日はじっくり市場を見て回るぞ!
と、思っていたのだが。
「レオン、この果物も美味しいだろう?」
「う、うん美味しいよシグ兄さん。」
「おい、あっちの肉屋にも行こうぜ!」
「あ、待ってよレノ兄さん!」
悲しいかな、兄弟と護衛の騎士同伴である。
父曰く治安が良いとは言え騎士団長の息子が市場を一人で歩くのは危険だ、という判断のもと護衛騎士がつけられたのだが、それならば!と2人の兄が同行を申し出たのだ。
父は社会見学になるから、と了承した結果がコレである。
「レノ、あまり離れるんじゃない。」
長兄のシグムント=リズベルグことシグ兄さん。性格は品行方正でゆくゆくは父の騎士団を継ぐのが夢だそうだ。昔から父さんに剣の稽古を付けてもらっていて最近帯剣を許されたらしい。
「いいじゃねーか、護衛の騎士も居るんだし。」
そして次兄のレノマ=リズベルグことレノ兄さん。自由奔放な性格ながら抜群の戦闘センスを持っており、槍を持たせたら同年代では敵なしという腕の持ち主だ。
ただ…2人は真逆の性格なので、この2人が一緒になると色々な意味で面倒くさいのだ。
まぁこの場に姉が居るともっと大変なんだが…。
「坊ちゃま方あまり我々から離れられませぬよう。」
「「「はーい」」」
護衛騎士も仕事とは言え辟易した感じだ。上司の子供のお守りを任されるとは割りが合わない仕事だろうし同情するなぁ。
(まぁ、動きづらくなったがやる事は変わらないな)
市場調査
それが今日の俺の目的だ。
市場を一通り見てみたがケルノンが穀倉地帯ということもあって粉物問屋が多い。
そしてそことの取引の為に訪れる行商人が多いため流通量も悪くないように見える、が。
正直に言って溢れんばかりの活気とは裏腹に商品の質が…悪い。
先ほどシグ兄からもらったアプールというリンゴに似た果物を手に考える。
スが入っており、甘味よりも酸味が強い。品種改良等もされていなさそうだ。
しかも若干痛みかけている気配すらある。
(うーむ…。ちょっと聞き込みでもするか。)
そう決めると俺は気配を消して騒がしい兄弟と騎士に気付かれないように裏道に逸れた。
そして少しふらついて、野菜や果物を扱う店舗の前で客引きをするこなれた感じの女性に声をかけることにした。
「ねぇねぇお姉さん。」
「ん、どうしたんだい坊や?迷子かい?」
「ううん違うよ。果物一つ買うから僕とちょっとお話ししない?」
「なんだい面白い子だね。いいよ、どれが欲しいんだい?」
「んーじゃあこれ!」
そういうと俺はレモンのような黄色い果物を指さす。
「あぁ…本当にそれでいいのかい?」
「なんで?」
「ちょっと坊やには刺激が強いんじゃないかな。」
「大丈夫!人生は経験だって父上も言ってた!」
「そうかい、泣いてもしらないよ。それじゃ石貨5枚だよ。」
提示額を支払い手渡されたレモンのような果物、モレンを受け取る。
大体石貨5枚なら前世でいうと50円ぐらいかね。
しかし…皮が痛み始めているあたりやはり質が悪いな。
まぁいい、肝心なのは味だ。食べてみよう。
そう思い指で皮をむいて果肉にかぶりつく
「あ!これ!」
女性が目を見開いて手を伸ばしてくる。
「うわっ!」
「あぁ!だから言っただろう。」
酸っぱい!
味はレモンに近いな、香りも柑橘系の爽やかな香り。これはグッドだ。
レモンは色々な料理に応用が利く。こういった食材が有ると分かっただけでも儲けもんだ。
ただ痛んでいるせいかエグ味があって苦味がしつこい。もっと品質が良ければなぁ。
「これは普段眠気覚ましや気付けに使われるんだよ。そのまま食べるなんて中々するもんじゃないさ。」
やれやれとあきれ顔で笑いながら女性は語る。
「すごいねこれ、びっくりして漏らしちゃうかと思った。」
「やめとくれよ店先で。」
「冗談だよ。お店に迷惑なんてかけないさ。」
ニカっと歯を見せていたずらっぽく笑うと女性も口元を歪めて応じてきた。
「食えない子だねぇ。で、なんだい話って。」
「うん、色々聞きたいんだけどーー」
まず質問したのは流通技術についてだ。
想像していた通り流通技術はお粗末なものだった。物を冷やすと痛まない、という事は知られているものの氷を創り出したり温度を一定にする技術は魔法でしか実現できず、できたとしてもコストが嵩み過ぎて導入する意味が無くなってしまうという。
そして運搬にかかる時間は産地によるが3~4日はかかる上に梱包は木箱やずた袋に直入れ、舗装されていない道を馬車に揺られ果物同士がぶつかり合うとなると痛むにきまってる。
うーん、これがワールドスタンダードだとするといい食材を入手するには産地に直接赴くか流通技術を発展させない限りは難しいな。
他には扱う食材についても聞いてみたが、内陸ということもあって海産物は手に入らないらしい。そして調味料的なものがないか聞いてみたが辛うじて取り扱いがあるのが砂糖ぐらい、香辛料のようなものは薬問屋に行けばあるんじゃないかという事だった。
他にも色々と質問をしたが問題は山積みだ。
そしてこの問題について認識はしていてもどう対応していいのか解らない、というのが現状。それならば…
「ねぇお姉さん。」
「なんだい?」
「一つ提案なんだけどさ。果物や野菜を運ぶとき緩衝材っていうのを使ってみない?」
「かんしょう…なんだいそりゃ?」
「果物と果物がぶつかって痛むのを避けるための道具だよ。」
「そりゃあればいいけど…どうするんだい?」
「あれだよ。」
俺が指さす先には粉物問屋の横にうず高く積まれた籾殻の山があった。
ケルノンは穀倉地帯という特性上ギムの精粉作業も行われている。
それゆえに籾殻がそこかしこに有り余っているのだ。
「あれを敷き詰めるのかい?」
「うん。お姉さんも小さいころ籾殻の上に寝たことあるでしょ?すごいフカフカだよ。」
「確かにそりゃそうだが…意味あるのかね?」
「物は試しだよ。しかもアレ普通はただのゴミでしょ?きっとタダでもらえるよ。」
「ふぅん、まぁ確かにそうだね。」
「あと個人的にオススメするのは運搬はずた袋じゃなくて大きさを統一した木箱がいいと思う。」
「またなんでだい?」
これは「統一規格」の概念に近いもの、かな?
木箱ならば荷物を積み重ねられるし安定性も増すし、木箱の中身を升で仕切ることで一箱に何個果物が入っているのかを一々調べずに済むという利点もある。
他にも木箱に店の紋章なんかを焼印で入れれば宣伝にもなるから輸送コストと宣伝コストを纏められるはずだ。
一通りそんなことを説明すると女性は目を白黒させながらも金の匂いを感じ取ったようだ。
「あんた、ただの坊やじゃないね。どこの子だい?」
「ただの子供だよ、名前はレオン。レオン=リズベルグ」
「騎士団長さんの息子さんかい!全く心臓に悪いこった。」
今日の身なりは平民の装いだったからバレなかったようだ。
俺が上手くいったと内心ほくそえむ反面、女性のほうはバツが悪そうだ。
「やれやれ、参ったね。騎士団長の息子さんに言われた事やらなかったら後で何言われるか解ったもんじゃないね。」
「僕はそんなことしないよ。」
「まぁ、そうだろうけどね。でも、さっきのあんたの話は面白そうだし、やって損は無さそうだ。」
「そう?それならよかった。」
少し口元を歪め目をギラつかせる女性の顔は商人のそれだ。
上手くノせられたようで良かった。
「全く末恐ろしい子供だねぇ。」
「さあね、僕は将来料理人になりたいからさ。いい食材を取り扱う人と知り合いたいだけなんだよ。」
俺がそういうと女性は噴き出した。
「ブッ!ハハハハハ!本当かい!?騎士団長の息子さんが?料理人にねぇ!?」
腹を抱えて大笑いしている。ちょっとムカっとくるがこれが普通のリアクションだろうなぁ。
「いやー、笑った笑った。気に入ったよレオン坊ちゃん。」
「嘘だとか思わないの?」
「別に嘘か本当かなんて大事じゃないのさ。ただそういう事を平然と言える坊ちゃんに賭けるのも悪かないと思ったのさ。」
「そういうものかな?」
この人がどこまで意図を組んで動いてくれるか解らないが、掴みは上々のようだ。
「アタシはシーラだ、よろしくなレオン坊ちゃん。」
「よろしく、シーラお姉さん。それと坊ちゃんはやめてよ。」
「んじゃお互い呼び捨て、それで手打ちにしよう。」
「解ったよ、シーラ。」
こうして俺は今後長い付き合いになるシーラ=エストラーダと知り合う事となった。
というわけで結構長い付き合いになるシーラが登場しました。
最初は結構年のいったキャラにする予定だったのですが、色々考えて18歳~20歳ぐらいの女性をイメージしています。
この世界は15歳で成人なので昔から家の商売を手伝っていれば18歳でも充分ベテランかなと。
ちょいちょいキャラが登場しますがその時その時であとがきで設定など触れていきます。
それでは次話もよろしくお願いします。