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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第一章 穀倉都市 ケルノン
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第2話 塩しか持ってねぇ!

評価・ブクマ有難うございます!

結構な数の方に見ていただけて嬉しくて…睡眠時間削って5話ほど書き上げてしまいました。

その結果過去編が長くなってしまったのですがご容赦くださいorz


 それから時は経ち、俺は5歳になった。


 生まれた頃から比べると背も伸びて歩き回れるし、大人と会話もできる。

 読み書きも予備知識のおかげで恙なく出来るようになったし、今ではこっそりと我流の魔力・筋力トレーニングを始め料理人人生に向けて特訓している。


 まだ屋台は手元に無いが夢に向かって順調に歩みを進める俺。

 

 しかし、そんな俺は今自室で打ちひしがれていた。


「まさか…ここまで酷いとは…。」


 打ちひしがれている理由、それはもちろんこの世界の食文化に関することだ。

 つい先程初めて母に「お手伝い」という名目で料理を手伝わせてもらったのだが、それはもう…思い出すだけで涙が出てくるような状況だった。


 夕飯の仕込みをする母について周り、家庭料理の現状について調査することにしたのだが…



 ―――――――――――――――――――――――――――



「母上!僕もお料理お手伝いしたいです!」

「あらあら、レオンは優しいのね。それじゃお願いしようかしら」


 よし、普段は火や刃物があるから入ってはいけない、と言われているが今日は母がいるからじっくりと見て回ることができる。


 厨房に入ると壁に掛けられた調理器具や大きな調理台が目に入る。

 しかしアイランドキッチンとは洒落てるな、召使のまかないも作る関係上屋敷の中でも厨房は結構大きく間取りされているようだ。


 調理器具は銅製の鍋や寸胴か、鉄のフライパンもあるにはあるようだ。

 ただ…この竃はなんだ?


「母上、これは?」

「それは火の魔石を使った竃ですよ」

「おぉ!これが魔力竃ですか我が家にあったんですね!」

「そうよ、父上がこの家を建てる時に苦心して用意して下さったのよ」


 事前知識として知ってはいたが実物を見るのは初めてだ。前も話したかもしれないが、この世界で魔法は戦争に使われるもの、という認識が強くこういった生活の場面に活用される事は少ないのだ。

 因みに価値は普通の竃の100倍は下らない、父さん頑張ったんだろうなぁ。


「このように魔力を込めると…ほら!」

「おぉ!」


 母が魔力を注ぐと中火程の火が現れた。

 薪を燃やしている訳ではないので煙も出ないし、一酸化炭素中毒の心配もなさそうだ。


「母上、火加減はどのように調整するのですか?」

「それはね…こう、やって!」


 注がれる魔力量に比例して炎が大きくなった。

 どうやら注ぐ魔力の量で火の大きさが変わるらしい、これはトレーニングにも使えそうだな。


「さて、火も起こしたことですし、お料理を始めましょうか。」

「はい!」


 さて、初めての異世界クッキングの見学だ。

 調理台には前世でいうトマトやナスのような野菜と大きな赤身肉のブロックが置かれている。


「大きなお肉ですね!母上!」

「美味しそうでしょう?今日はホーンブルのお肉を使いますよ。」


 ホーンブルとは前世の水牛に似た魔物でこの世界で親しまれている食材のひとつだ。脂はそこまでのっていないがジューシーな赤身が特徴だ。


「母上、この肉はどのように調理するのですか?」

「塩を振ってそのまま焼くのがお父様は好きね。」

「確かに父上はその召し上がり方が好きですよね、他にはどのような料理があるのでしょうか?」

「そうね、塩で味を調えつつ野菜と一緒に煮込むわね。」

「なるほど、他には?」

「他?…無いわね。」

「え?」

「それだけで充分美味しいじゃない?」

「え、えぇ。母上の料理はいつもおいしいです!」


 焼く。煮る。以上

 うおぉぉい!?マジで言ってるのか?

 揚げたり蒸したりしないの?

 っていうかソースとか付け合わせは?


「母上、つかぬ事を伺いますが油を料理に使ったりは…」

「…油?レオンは面白いことを言いますね、油は燃料でしょう?」

「そうですよね、自分でもおかしいなと思いました。」


 まずその認識か、参ったな。思わず笑顔が引きつる。

 母さんのリアクションからして「ガソリンを料理に使いますか?」って質問したような感じなんだろうな。

 この世界で油は魔物から取ったりしているようだが、灯りに使われたり火攻めの際に使われる兵器として使われるイメージが強すぎるのか。


 その後作られた料理はホーンブルのグリル、麦のような穀物のギムを使った無発酵パン、若干新鮮ではない野菜の煮込みの3品だった。


 もう俺は思わず泣きそうになった、というか泣いた。

 古代メソポタミアでももっとマシな料理作ってたはずだぞ。


「泣くほど美味しいってお母さん嬉しいわぁ」

「はい”母”上”…!」


 母さん、これはこれで悪くないんだけど素材そのままの味すぎるよ…!

 パンはカッチカチでギムの風味…というか野性味溢れる風味だし

 野菜は痩せた味しかしない…!


 涙の味で余計塩気しか感じなくなった料理を味わいつつ、料理を終えた。


「ごちそうさまでした…!」

「はい、ごちそうさまでした。」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そうして俺はフラフラと部屋に戻り絶望に打ちひしがれていた訳だ。

 毎日出される料理から薄々感じてはいたが、裕福な家庭であるこの家でこのレベルだ。

 一般庶民の家庭だとどうなることやら…。


「いや、待てよ。」


 そうだ、正直調理法の少なさとバリエーションの少なさにショックすぎて絶望していたが、冷静に考えると希望が無い訳ではない事に気付いた。


「逆に考えれば色々と伸びしろがある世界と思えば良いのか。」


 そう、食材は有る、そしてまだ試されていない調理法が沢山ある。

 寧ろポテンシャルは前の世界より高い食材かもしれないのだ。


 先程俺が食べたギム一つとっても結構なトンデモ穀物なのだ。

 このギムという穀物はあまりにも応用が利く、小麦のようにパンや麦粥として食べられるだけでなく、父が飲んでいたエールの材料としても使えるということは大麦のような特製も有している可能性がある。


 製粉技術や調理技術が未発達なため、そのポテンシャルを生かし切れていないだけ、と考えるとゆくゆくは前世を上回る食文化がこの世界には根付くかもしれない。


 俺が死後の世界で爺さんに言ったように創意工夫次第で料理はどこまでも進化出来る。


「よし。」


 俺は決めた。

 世界中の食材を食べつくすだけでなく、この世界の食文化すら変えてやろう。

 そして前世の食文化を上回る豊かな世界にしよう。


 そうと決まればこれは食材を扱っている市場の現状も確認せねばなるまい。


 部屋を飛び出し階段を飛び降り母の元へ駆け寄る


「母上!僕、今度市場も見に行きたいです!」

「あらあら、ご飯食べたばかりなのにまた食べ物のこと?」

「えぇ、母上が作る料理が美味しかったのでもっと料理のことが知りたいです!」


 母をおだてつつ俺の意思を示す


「ふふふ、良いでしょう、父上に相談してあげます。」

「有難う御座います!」


 その後母の計らいもあって父からはあっさり了承が出た。

 明日の朝市場見学に行ける…!


「よーし、やるぞー!」


 俺は部屋で高らかに拳を突き上げ、そう叫んだ。




お読み頂き有難うございます!

今回と次話はこの世界の食文化に纏わるエピソードになります。

主人公が料理らしい料理をするのは…ちょっと先になりそうです。


しばしお付き合い下さい!

もし宜しければコメント・評価をいただけると嬉しいです!

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