第24話 ヴィンテージっていいよね
バチンッ!
突如として体を衝撃が駆け巡った。
「いってぇ!」
思わず目を開くとハルヴェニーが眉間を撃ち抜かれたが如く仰け反りながら崩れ落ちる所だった。
「お、おいっ!大丈夫か?!」
思わず身体を抱き寄せたが意識がない。
呼吸と脈を確かめるが…命に別状は無さそうだ。
良かった。
だが一体どうしたというのだろう。
真理眼で見られている間、俺自身も中身を弄られているような感覚がしていたが、とある所まで踏み込まれた瞬間に先程の衝撃に襲われた。
感覚的な物だが恐らく俺が転生する直前の風景を視ようとした瞬間だっただろうか…。
あの風景は死後の世界、ましてや神まで居る世界だ。
人の身では踏み込む事が出来なかった、そんなとこだろう。
「ちょっと…休ませるか。」
華奢な彼女の身体を担ぎ上げると女性特有の甘い匂いが鼻腔を擽る…
…。
イカンイカン俺は何をしているんだか。
そっとベッドに寝かせ、気を取り直して魔法陣に向き合う。
幸いまだ魔法陣自体は壊れていなかったので俺が魔力を肩代わりする事で結界は維持できているから安全だ。
ちょっと魔力の消費がキツイが多分俺のせいでこんな目に合わせてしまったのだからちょっとぐらい頑張ろう。
ーーーそして小一時間が経過した頃。
「ん…ぅ… っは!?」
ハルヴェニーが目を覚ました。
「おはよう、大丈夫だった?」
まだ頭が寝起きで混乱しているようだがちゃんと目覚めてくれて良かった。
「ワシは…お主を真理眼で鑑定して… そうじゃ!!」
ベッドから飛び起きてハルヴェニーは叫んだ。
「お主一体何者じゃ!?」
いや何者と言われてもな…。
「レオン=リズベルグその人ですが。」
「えぇいワシが言っているのはそういう事ではないのじゃ!」
「というと?」
「どうもこうも無いんじゃ!10歳児の癖に妙に魂に深さがあるかと思えば神器に四つも神の加護を授っておる人間なぞ初めて見たわ!」
そうだよねー、俺もそう思う。
俺が相槌を打つ間も無く錯乱気味のハルヴェニーがまくしたてる。
「しかも加護を授けているのがガリノス、ミーミスに加えメリュスにオルスじゃと!?ふざけるのも大概にせんか!」
「そんなに凄い事なの?」
「カァーッ!信じられん今時の若いモンは!」
キャラ崩壊が激しくなりつつあるが大丈夫か。
「良いか?魔術神メリュスの加護を授かった人間はワシが知る限り魔術師ギルドの創始者しかおらん!加えて創造神オルスの加護を授かった人間なぞ生まれてこのかた見た事がないわ!」
そうなのかー。
「ハルヴェニーが見た事がないって事は100年ぐらい?」
「馬鹿を言うでない!358年じゃ!」
…。
そ…そうなんだ…。
ちょっと落ち着かせようと思って悪ふざけで言ったのに年齢解っちゃった…。
俺のリアクションを見てハルヴェニーも自分が言ったことの重大さが解ったのか顔から玉汗が吹き出し狼狽している。
「いいいいい、いやいやいや35年の間違いじゃよ?ほらワシピッチピチじゃろ?」
「いいんだよ…無理しなくて…。」
生温かい目で諭すと枕に顔を埋めて泣き出してしまった。
「う、うわあぁぁぁん!もう本当にお嫁に行けないのじゃぁぁぁぁ!!」
しかし358歳で未婚とは中々…。
干物女子なんか目じゃないなヴィンテージ女子だヴィンテージ女子。
何でハルヴェニーがそんなに歳をくっているのか判らないが、彼女の身体に刻み込まれている魔法…いや呪いだろうか。
メリュスの加護で得た力を以ってしても異質な力がそうさせているのだろうという推測の域を出ない。
聞けば教えてくれるかもしれないが、今はちょっと無理そうだな。
このまま泣き続けられるのも可哀想だし…何より不憫だ。
「ま、まぁ落ち着いてよ。ローゼ姉とかレノ兄は同い年ぐらいだと思ってるみたいだし。」
くっ…まだ泣き止まないか。
「レノ兄に至っては口説きたいぐらい美人だって言ってたよ?」
するとピクッと聞き耳が立ち鳴き声が止まった。
「…本当かの?」
「あぁ!」
一応本当の事だからな。
本当は隠しておくつもりだったんだが…レノ兄すまん。
「じゃが…ワシの身体ずっとこんなんじゃから相手がいた事なぞないのじゃぞ…?」
そう言いながら華奢な身体に目線を落とす。
こりゃ相当自信喪失してるな…彼女が言うほど魅力が無いわけじゃ無いのに。
「も、勿論!月光樹のようにしなやかで美しい指先!そして妖精の如く透き通った肌!!神銀で作られたかのような輝く髪!!!更には神がつくりたもうたとしか思えない整った顔立ち、君ほどの女性が美人で無ければオルタミナ中の女性は豚だとすら言っていたさ!」
自分でも言っていて思ったが
…ちょっと盛りすぎたか?
レノ兄さん、世の中の女性の皆さん許してください。
今話した事は俺が思っていることを可能な限り最大限誇張して表現した結果です、決して豚だなんて思ってませんから!
「…ほーう?」
しかしどうやらお気に召したのか調子が戻ってきたようだ。
「そうかそうか、ワシのことをそんな風にのぅ…。」
そういうとニヤケ顔でフワリと空間を漂い始めた。
良かった、持ち直してくれたみたいだな。
「うむうむ。まぁなんじゃ、話はそれたがお主のポテンシャルは中々のものじゃぞ。もしかしたら世界を統べる王になれるかもしれぬ。」
でしょうね、神様にそう頼んだからね。
でも王なんぞにはなりたくないな、自由無さそうだし。
「じゃが、ワシとしては放っておいてもお主は十分世界で通用する人間になると思うが、何故力を求めるのじゃ?不自由する事は無かろうて。」
まぁ確かに不自由はしないんだけどさ。
これからやりたい事を考えると色々できるようになっていたいんだよな。
「俺の夢のため、かな。」
「夢とな?」
「うん、この世界中を屋台を引いて旅をして、美味いもんを広めて回りたいんだ。」
昔から、前世から変わらない俺の夢を真っ直ぐに伝えた。
あと5年もすれば成人して旅に出られる、それまでにできる事はしておきたい。
「それならば普通に旅をすればよかろうて、今の実力でも十分出来るじゃろ?」
「旅は出来るかもしれないけど材料になる魔物が手強かったらさ、使えないじゃん、料理に。」
「…理屈は解ったのじゃがやはりお主変わっとるのぅ…。」
ハルヴェニーは呆れ顔だ。
そうかな?
命を使わせてもらって料理をするんだから自分が命をかけるのは当たり前だろ?
「まぁ解ったのじゃ、悪行に力を振るうつもりもなさそうで安心したのじゃ。」
そう言うとハルヴェニーは安堵の表情を見せつつ大きく伸びをしたあと、気合いを入れるようにパンパンと顔を叩いた。
「うむ!然らば約束通りお主にワシの魔術を教えてやらねばな。」
「有難う、宜しく頼むよハルヴェニー。」
「ッ…!」
手を差し出し握手を求めたがハルヴェニーがモジモジしている。どうした?
「その、じゃな。お主が気にせんのじゃったらワシの事をハルと呼んでも良いのじゃぞ?」
帽子のツバを弄くり回しながら目線を合わさず口籠っている、随分と可愛らしい358歳だこと。
まぁでも少しでも気を許してくれた証拠か。
有り難くその好意は受け取っておくとしよう。
「解った、それじゃこれからも宜しく、ハル。」
「うむ!」
こうして俺とハルは互いの秘密を共有し合う関係になったのだった。
「しかしお主も嘘をつくのが下手じゃのぅ…」
「なんか言った?」
「なんでもないのじゃー」
お読み頂きありがとうございます!
またいつも評価、ブクマ有難う御座います。
今日も滑り込みで更新完了!
誤字脱字、展開におかしいところがあったらご容赦下さい。
さて、本編はハルヴェニーの年齢がばれましたね。
358に特に大きな意味はありません。
551とかにしようと思ったんですが豚まんになっちゃうしね…。笑
次回からまた少し物語が進みます、お楽しみに。




