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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第一章 穀倉都市 ケルノン
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第一章 エピローグ

「今ので完売ですよー!また明日来てくださいねー!」


俺がそう叫ぶとワラワラと群がっていた客が一人また一人と雑踏に消えていった。


屋台を手に入れて半年、俺は晴れて念願の屋台料理人をやっている。

場所は市場のある中央広場の一角だ。


今は昼だけの営業で、売り物はパンを使った軽食と果汁を使ったサイダーを取り扱っている。


今まで難航していたパン作りも屋台のおかげで大きく改善した。


温度調節とかを自力でやってた酵母づくりも安定して出来る様になった訳で、他にも蛇口から炭酸水でないかなーって思ったら出たもんだからサイダーもメニューに加えられた。


「よっ旦那!今日も景気良さそうだねぇ。」

「やぁシーラ、ぼちぼちだよ。」


早々に店仕舞いをしているとシーラがやって来た。


シーラには相変わらず世話になっていて屋台で使っている青果はシーラの店から仕入れていてウチの店でもメニュー表替わりの黒板でもシーラの店の青果を使っている事を宣伝している。

そうすることでシーラの店の宣伝になるし、ウチはシーラの店の知名度に肖れる、WINWINの関係だ。


「旦那のぼちぼちは信用ならないからねぇ、どんだけ儲けるんだか。」

「ケルノンに来る人が増えたからね、僕だけじゃなくてシーラも儲かってるでしょ。」

「そりゃそうさね、あんな場所が出来ちまえば誰でも一度は来たくなるだろうさ。」


そう、実はここ最近ケルノンの町に来る人の量が増えているのだ。

理由は簡単、俺が神器を起動した裏山が()()になったからだ。


「神が4柱も、しかも創造神まで降臨した土地なんざケルノン以外にないだろうねぇ。」

「あー、うん。本当にねビックリだよね。」

「あそこ旦那の家の裏だろう?旦那が絡んでるんじゃないのかい?」


ギクッ、本当にこういう時の勘が鋭いからシーラは油断ならない。


あの時天から落ちてきた光の柱は近隣の都市からも確認できる程のものだったようで、噂を聞きつけた各宗教の偉い司祭達が「神気が満ちておる!」とか言い出して俺の家の裏山は聖地になった。


しかも4宗教合同の聖地という異例も良いとこになってしまったもんだから参拝客や巡礼者が大量になだれ込む事態になってしまったのだ。


「さ、さぁねー?」

「…まぁいいよ。ウチも儲かってるけど旦那の店も大分有名になったじゃないか。」

「シーラの店とは事情が違うけどね…。」

「あの祭りは色々な意味でかなり盛り上がったからねぇ。」


そう、有名になった原因はあのバーサークホーンを大盤振る舞いした祭りだ。


街の半分近い人間がやって来たので、あれだけあったバーサークホーンの肉を半分ぐらい消費する羽目になったが料理は大好評で俺の名前も顔も売れた、のだが。


有名になった理由はそこだけではない。


実は食べた客に異変が起きてしまったのだ。


「アタシも食べてたからちょっとヤバかったよ…。」

「いやぁ面目ない、まさかあんなことになるなんてな。」


これだけ聞くと悪いことがあったように聞こえるが、別に悪いことがあったわけではない。

寧ろみんな元気になった。


いや、()()()()()()()()のだ。


最初はみんなテンション高いなぐらいに思っていたんだが、最後には客が全員某世紀末覇者みたいな身体つきになっていたから驚きだ。


考えてもみればバーサークホーンの肉という特殊な素材を加護付きの水や炎で調理したら何かあって然るべきだと考えなくてはならなかった。


「一番大変だったの旦那のお兄さん達じゃないかい?」

「うん…レノ兄はともかくシグ兄はちょっと可哀想だった。」


ウチの兄弟は身体がキレッキレになっただけでなく、その…アッチの方も元気になってしまったわけだ。


普段から自由奔放なレノ兄さんはいいけど、シグ兄さんはイメージぶち壊しな言動をしてたからドンマイと言わざるを得ない。


他にもそういった変化が起きた人は結構いたようで、来年あたりにはケルノンにベビーブームが来てしまうかもしれない、すまんな皆!


「本当、旦那の料理は底が知れないねぇ。」

「まさかこんな事になるなんてね、バーサークホーンの肉を使った料理は当分控えるよ。」


結論として加護のオンパレードでブーストされまくった俺の料理はそんじょそこらの強化魔法を超える効果を発揮してしまったのだ。


特にバーサークホーンの肉だと効果が増強されるらしい。


今は普通のホーンブルの肉やロコバードという鶏に似た魔物の肉を使って販売しているのだが、それでも効果は程ほどにあるようで普通の客や冒険者に飛ぶように売れている。


正直仕込みが追い付かないスピードなので多忙を極めるが料理人にとっては嬉しい悲鳴だ。


そんなこんなで俺の屋台は有名になり日々忙しく働いているという訳だ。


「それじゃシーラ、俺仕込みに戻るわ。また後で材料屋敷に運んでもらっていい?」

「あいよ、お安い御用さ。」

「じゃ、宜しくね。」



そうして俺は市場を後にした。


ーーーーーーーーー


「おかえりなさいレオンちゃん。」


家に帰ると母さんが出迎えてくれた。


「ただいま戻りました母上。」

「今日ももう売れちゃったの?」

「はい、多めに仕込んだんですがあっという間でした。」

「良かったわねぇ、母さんもレオンちゃんのお店が有名になって鼻高々だわぁ。」


この前の祭りで俺の腕前は証明されたので最早誰も俺が料理人になることを反対しなかった、父さんは少し残念そうだったが、母さんは「自分の道を行きなさい」と応援してくれた。


「あれ?そういえば父上は?」

「えぇ、なんだか王都から使者の方が来られていてね。今応接室におられるわよ。」

「そうですか。」


ふぅーん?王都から使者?

なんだろうね、聖地が出来た事絡みかな?



っと思ったら終わったようだ。


…随分と父さんの顔色が芳しくないな。


「どうしたのですか、アナタ?」


母さんも流石に気付いたみたいだな。


「あぁ、ネメアとレオンか。」

「顔色が良くないですよ、何か良くない知らせでも?」


父さんの雰囲気から察するに何か只事ではないようだ。

本当に一体何事だ?


「実はな、王命を仰せつかった。」

「ヴィノ王様からのですか!?」


王命、それは国王から下される命令。

まず一介の騎士団長に下されることなど無いはずだがどういうことだ。


「あぁ、バーサークホーン討伐の功績を称えて、とのことだがそれは建前だな。」

「どういうことですか、父上。」

「いずれ解るだろうが、大人の事情というやつだ。ここが聖地になったことも絡んでいるとみて間違いないだろう。」


どういうことだ?


「アナタ、いったいどの様な命を受けられたのです?」


王命となるとまず断ることは出来ない。

断ろうものなら王の逆鱗に触れ家が取り潰されたりするし、騎士としてこの国で生きていくことはできないだろう。

逆に言えば王命を達成出来ればそれ相応の地位が約束されるのだが。


「ある都市の戦術顧問として赴任するようにと仰せつかった。」

「まぁそれは…して、いったいその都市とは何処なのです?」



父さんは重々しく口を開き、その都市の名を言った。




「王国防衛の最前線、城塞都市ヴェルスタッドだ。」




こうして突如として訪れた転機によって俺たち家族は新たな街へと移り住む事となったのだった。

ようやっと第一章が終わりました。

皆様に応援頂いて何とか一区切りがつきました。


最初は過去編とか5話ぐらいでーと考えていたのに、まだ続きます。

あれー?こんなはずでは。。。


次回からは新しい街での生活を描区予定です。

いったいどのような展開になるのか、そして新しい出会いはあるのか?

妄想膨らませて書いていきますのでお楽しみに!


あと最後に今日は本編について一つ。

主人公の一人称が僕だったり俺だったりするのは、素が出ているか出ていないかの違いです。

シーラには気を許しているので「俺」が結構出ている感じにしています。


ただこういう設定するとどっかの話で直し忘れてないかとかソワソワしたりしてます。


そんなこんなですが次回以降もよろしくお願いします!

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