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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第一章 穀倉都市 ケルノン
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第15話 解体するね?

「ふぅ〜〜。」


俺は今一つの山を前に佇んでいる。

その黒々とした山は冷気を帯びただならぬ雰囲気を醸し出しており、見ているものを圧倒する存在感を放っている。


山に対峙する俺の手には大ぶりのナイフ

そして背後に設置された作業台には鋸や大ぶりの肉切り包丁が並んでいる。


「ついにこの時が…!」


ここは騎士団が所有する倉庫の一つ。

そして俺の目の前に聳える山は先日仕留めたバーサークホーンだ。


「いい獲物じゃねぇか、ボウズ。」


この眼帯をした禿頭のオッサンはアドーラ。

見た目は完璧にそっちの道の人だが、俺が市場に出入りするようになってから気にかけてくれる優しいオッサン、しかしてその正体はベテランの肉屋だ。


実は今日、アドーラに魔物の解体方法について教わる事になっている。

バーサークホーンは食肉としても絶品だということで是非使いたいと思っていたのだが、父さんが「お前が倒した獲物だから」と処遇を任せてくれたのだ。


となるとすぐに捌いて食肉加工だ!


と思っていたのだが、如何せん保管する場所が無くて取り掛かれなかった。

だが、屋台の登場でその問題は解消した、ならいつ解体する?今でしょ!


ということで肉のプロ、アドーラに相談したら捌き方を教えてくれることになったのだ。


「日が経っているのにかなり具合がいいな。ボウズが血抜きをやったのか?」


プロの眼から見てもコンディションは上々らしい、良かった。


「はい、魔法でやりました!」


因みにアドーラは俺がバーサークホーンを倒したことを知っている。


アドーラは元々金級の冒険者でギルドの教官も務めたことがある腕利きだ。

ただ魔物との戦闘中に片目を負傷して一線を退いた、そんな背景の人だから一目で俺の実力を見抜かれてしまったわけだ。


幸い口が固い人なので話せる所までは話してあるからやりやすい。

因みにシーラにも同様に俺がバーサークホーンを倒したことは話してある。


「随分便利な魔法があるもんだな、それなら便利ついでに魔法でこいつを逆さ吊りにできるか?」

「出来ますよ。」


まだ神縛氷鎖は維持しているのである程度コントロールが効く。

俺は鎖を操作してバーサークホーンの身体を逆さ吊りにした。


「はぁぁ、試しで言ってみただけだがすげぇもんだな、これなら早く終わりそうだ。」


腕まくりをしつつ皮剥用の包丁を手にする、スイッチが入ったようだ。


「よし、それじゃ始めるぞ―――」


それからのアドーラの手捌きは鮮やかなものだった。

俺は氷で足場を作りながら作業をサポートしたが、山の如き身体がどんどんと切り分けられていくのは圧巻だった。


―――――――――――――――


「ふぅー、ボウズのサポートのお陰でこんなに早く終わったぜ。」

「いやぁ、アドーラさんの腕前にも恐れ入りました、全くムダがなかったです。」

「よせやい、ボウズの魔法で肉が凍ってる分切り分けやすかったしな、間違いなく最速記録だ。」



昼過ぎには解体が終わり、倉庫の中には肉、革、骨、内臓と綺麗に切り分けられたバーサークホーンの山が出来上がっていた。

見たところ可食部でいっても3、4トンは有りそうだ、当分牛肉に困る事は無さそうだぞ。


そしてやはり、というか見学していて解ったが魔物の身体構造は所々俺が知っている動物とは違うようだ。

明らかに異なった部分は魔力関連の体内基幹が有るという事だ。


前世の動物であれば胸腺にあたる部分に魔石と呼ばれる黒曜石のような外見の基幹が備わっており、そこから血管や神経と同じように全身へ魔力を送る筋のような物が走っていた。


魔石は心臓と同じように魔物の急所とされ、砕くと魔力不全を起こして死に至るらしい。

だが、魔石は狩猟の証になったり武器・道具の核となるのでむやみに狙う事はオススメされなかった。

しかも魔石を砕かれた魔物の肉は味が落ちるらしい、戦う時は気を付けないとな。


「しかしボウズ、本当にこんなもん食うのか?」


アドーラがしかめっ面で指をさすのは内臓の山だ。


そう、これも新たに解った事だがこの世界では内臓を食べるという文化が無いらしい。

一部の物好きは魔物を狩ったその場でハツを食べたりするらしいが、他の臓物は殆ど廃棄するという。


アドーラが捌いている時に思いっきりゴミみたいに扱おうとしたから必死で止めるハメになった。

あんなに美味そうなシマチョウを捨てるとかアホじゃないのか?


「これはこれで美味いハズですよ。」

「本当かぁ?俺も元冒険者だからゲテモノは結構食ってきたが、臭くて食えたもんじゃねぇぞ。」


ふっふーん、それは下処理の仕方を知らないからだな。

それならば御礼がてら腕を振るうとしますか!


「アドーラさん、僕ならコイツを美味く調理してみせますよ。」

「・・・その目は冗談じゃねぇみたいだな。」

「えぇ、今日のお礼に僕が料理をするので食べていきませんか?」

「お!そりゃいい!マグナスの奴がボウズの作る飯は絶品だって言ってたからな!」


父さん自慢してるのかよ、まったく親バカだなぁ。


「よし、そうと決まれば他の奴等も呼ばねぇとな!」

「え?」


なんて?


「また夕方来るから楽しみにしてるぜボウズ!」

「え、ちょっ…。」


行ってしまった…。

アドーラが宴会好きなのは知ってたけどまさか自分で企画するとは思わなかった。

しかもアドーラは顔が利くからなぁ…何人来るか解らないぞコレ。


まぁだが俺の顔と料理売り込むチャンスか。

夕飯の時間までは5,6時間ある、屋台を使ってフル稼働で行けばなんとかなる・・・かな?



初めて家族以外に料理を出すチャンスだ、気合い入れていくか。


お読み頂き有難うございました!

そしてブクマ・評価頂き有難うございます。


今回は初めての魔物解体でしたね。

作者は猪やシカの処理を見たことがあるのですがあれは中々壮絶ですね。

それほど生々しく書くべきか迷いましたが、そもそも文章力がなかったので割愛となりました。

トホホ


百聞は一見にしかずなので興味がある方はぜひ、地元の猟友会に相談すれば見れると思います。


それでは次話もよろしくお願いします!

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