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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第一章 穀倉都市 ケルノン
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第14話 匠の遊び心

「ところでレオン、神器は使えそうか?」


父さんは何だかんだで神器に興味津々らしい。

そりゃ男の子ならいつになってもこういった物に心踊らないわけがないよな。


「多分…いけます。」


宝玉に語りかけるように魔力を注ぐと何となく出来る気がした。

頭の中に答えが浮かぶというか、まるで対話しているかのような感覚だ。


「おぉ!本当か?!」

「はい、やってみます!」


いよいよ対面できるのかと思うと胸が踊る。


「それぐらいでいいですよー父上ー!」


一応何が起きるかわからないので、念の為父さんには離れてもらい宝玉へ魔力を注ぎ始めた。



「ふんぬっ…!」



かなりの魔力を蓄えている筈なのにゴリゴリと魔力が吸われていく。


「大食いだなっ…!」


だが流れ込む俺の魔力が一つ一つ鍵を開けていくかのように宝玉の深くまで染み込んでいくのがわかる。



ホワァン…



魔力が深くに染み込むに連れて宝玉は光を帯び始めた。



(あと少しだな。)



残りの魔力を注ぎ込むと光が一層強くなり



ーーー宝玉が宙に浮いた。



ここから変形したりするのか?

と、ワクワクしながら見上げた



次の瞬間



ドオオオオォォォォォン!!!



天から光の柱が降り注いだ。


轟音と共に強烈な爆風が辺りを吹き荒らす。


「うおおぉぉぉ!?」


流石にこれは予想外だぞ?!

なんでこんなもんが降ってくるんだ!?



風に耐えること数秒



風は収まり、宝玉があった場所には一筋の光が差し込んでいた


もうもうと上がる土煙が段々と晴れ、神々しい気配を纏った何かがその姿を徐々に表す。



現れたるは


厳かな雰囲気と共に金色を纏い


所々に神鉄の彫像や宝玉が散りばめられ


屋根には獅子の彫像があしらわれた


ーーー『屋台』が降臨した



「な」

「な」



「「なんじゃこりゃあぁぁぁ!?」」



ーーーーーーーーーーーーーーー


「レ、レオン、これは一体なんだ?」

「父上、僕も整理がおいついてないのでちょっと待ってください。」

「あ、あぁ。」


父さんの混乱は尤もだろう。

てっきり神剣とか雷を纏った大槌とかが出てくると思ったら屋台だもんな、しょうがない。


だが問題はそこではない!


どうしてこうなった!?


確かにリヤカー風の車輪や取っ手が付いてるけどなんか車輪浮いてない?取っ手には羽みたいなのついちゃってるし。


それに眩しい!むしろ目に悪い!

こんな金ピカギラギラを見ながら落ち着いて飯が食えるか!?


もうこれ屋台じゃなくて移動式の神殿だよ!

絶対参拝客とか来ちゃうよ、屋根に神々しい獅子像まで乗っかってるし!


あぁ…赤提灯まで真っ白にされちゃって…


魔改造もいいとこだコレ…。


「大丈夫かレオン!?」


思わず崩れ落ちた俺に父さんが駆け寄る。

父さん…息子は心が折れそうです…。


呆然と地に伏していると脳内に声が響き渡った。


『お、やぁっと起動しよったわい。おーいお主ら、人の子が神器使いよったぞ。』


この声、久しぶりに聞いたが爺さんか。

爺さんこと創造神オルスの呼びかけに応じるように遠くの方がにわかに騒がしくなった。


『あら、本当ですわね。待ちくたびれましたわ。』

『本当100年200年なんて普段ならあっという間だったのに今回は長く感じたわぁ…。』

『精進が足らんぞ人の子よ!』


あーあー騒がしい、一遍に喋らないでほしい。

しかし俺に加護をくれた神様勢揃いっぽいな。


騒々しさに辟易していると光の筋を辿って神々が降臨した。


『久しいのぅ人の子よ。』

「やぁ爺さん久しぶり。まさか創造神だったとは思わなかったよ。」

『フォッフォッフォッ、あの場で明かしても面白くなかったしのぅ。驚くお主は中々傑作じゃったぞ。』


全く趣味が悪い爺さんだ。


『しかしようやっと神器を起動しおったか、お主が全然使わんもんじゃからワシらで弄くり回してしもうたわい。』

「もとの姿見る影もなくなってるんだけど…。」

『すぐに使わんお主が悪いのじゃぞ?何回お主の父親に神罰を下そうかと思ったか解らんわい。』

「いやそれはダメでしょ!?」


本当に軽々しく天罰おとそうとするなこの爺さん。


「で、待ちあぐねた結果がコレか。」


神殿みたいになってしまった俺の相棒を見てため息をつく。


『技巧神のやつが絡んだら収拾がつかなくなっての。だがほれ、外見だけではなく中身もぱわぁあっぷしとるぞ。』


そういうと各々の神が関わったであろう部分について説明を始めた。


『まずはアタシねぇ、アナタが私の魔法をよく使ってくれるから奮発しちゃったわぁ。』


気だるげながらもどこか嬉しそうなこの女神は水貴神ミーミス。

確かに俺は氷や水の魔法を主に使っているからな、有難いことだ。


『前世でアナタが水で料理の味は変わると言っていたからどんな水でも出せるようにしたわよぉ、勿論私の加護付きでねぇ。』


そういって彼女が説明するのは流し台の蛇口だ。

蛇口から神様の加護付きの水が出るとか相当えげつない状況なのでは…?

他にも加護付きの氷が出来る製氷機や冷蔵庫・冷凍庫までつけてくれたらしい、有難い話だ。


『続いては私だが…人の子よ、お主に言わねばならぬことがある。』


阿修羅のような面持ちのこの神は火焔神ガリノス、多分あの事だろうなぁ…。


『何故お主は私の魔法を使わぬ!?』


轟っと炎がガリノスの背後に立ち上る。やっぱりね。

一応恐れずに余り使用していない理由を説明した、どうしても初めて見た食材は食べられるか試さざるを得ないから黒焦げにしてしまう火魔法が使えないんだよなぁ。


『むぅ…お主がそこまで言うのであれば仕方ないか…。』


どうやら納得してもらえたようだ、背中の炎も鎮火した。


「因みにガリノス様ってウチの姉にも加護授けてますよね?」

『む、よく分かったな。』

「ガリノス様の好みの女性まんまだったので、もしやと思いまして。」


俺がそう言うとガリノスが慌てふためいて赤面した、バレてないとでも思っていたのか。

赤面する阿修羅顔とか見ていて凄い微妙な気分になるな、誰得だよ。


『と、兎に角私が関わったのはこの部分だ!』


あ、胡麻化したなこの色ボケ神、まぁいいや。

ガリノス曰くコンロと店の提灯に関わったらしい。

勿論炎は加護付きで強さも自由自在に調節可能。


そして提灯が地味に良い働きをする代物だった、提灯に使われている光源は『魔払いの灯』といって原初の火に近い悪意・敵意を持った者をこの屋台に近付けないという効果があるそうだ。

聞けば聞くほど神話に出てくるようなアイテムがぽこじゃかと実装されている、この屋台ヤバいな。


『あとは私の関わった部分ですね。』


俺の傍らに降り立ったこの女神はメリュス、爺さんの奥さんだ。


正直爺さんとこの神様の加護の力が半端ない。

メリュスの加護のおかげで初めて見た魔術でもどの様に術式が組まれているのかすぐに解るから見ただけで魔法をコピー出来るというかなりのチートっぷりだ。

因みに俺が【神縛氷鎖】や【操血】の魔法を作り出せたのもメリュスの加護のおかげだ。


『恥ずかしながら私も本気で屋台づくりに関わってしまいましてね。ほら、おいでなさい。』


導かれるままに屋台に乗り込むと内側は昔と変わらぬ様相・・・いや少し前より広くなったかな?

だが大まかな形は変わらずコの字状の形をしたカウンターとその内側に調理場がある形のままだ。


『皆が余りにも色々な物を作り込むので空間を少し弄りましたよ。』


確かに外見と内側の縮尺が有ってない気がする、それでちょっと広く感じたのか。


他にも色々と細工をしてくれたようだが、その中でも一番有難いのが『食材保管庫』の存在だ。

調理台の下に冷蔵庫と一緒に併設されているソレは無尽蔵に食材が入れられる、という代物だ。

しかも中に入れてしまえば時間の経過も止まるという優れもので、保管庫と直結している別の袋からも直接食材を入れ込めるというから驚きだ。


他にもイメージすればコンロの数が増えたり、調理器具の配置が変更出来たり、ブロック状に収納されているオーブン等の調理器具を展開出来たりとトンデモ機能のオンパレードにしてくれていた。



わぁー、これはもう屋台のレベルを超えてるな・・・。

っていうか創世級のアーティファクトだコレ。


『どうじゃ、かなりの逸品に仕上がっとるじゃろう。』

「かなりどころの騒ぎじゃないよ・・・。料理人冥利に尽きるどころか手にあまりそうだよ爺さん。」

『ふぉっふぉっふぉ、そこを努力で補うのがお主の矜持じゃろうて。』

「期待が重すぎるけど応えられるように頑張るよ。」


元々屋台で料理する気満々だったけど、神様の加護ドカ盛りだしこの屋台越しに神様たちの期待が透けて見えるようで胃が痛い。


「ただ・・・」

『ん?どうしたんじゃ?』

「外観だけでも元に戻せない?」


俺がそう言うと神々に電撃が走った。

皆口々に「カッコいいのに…」とか言ってるけどダメです。


「普通の人間相手にも俺は商売したいんだけど、このままじゃ崇められて商売どころじゃないと思うんだ。そうなると食材探しもおちおち出来ないしさ、どうにかならない?」

『むぅ…ワシと技巧神のセンスで美しく仕上げたんじゃが、お主が気に入らないのであれば仕方ない。」


爺さんがそう言うとパァッと屋台が光に包まれみるみるうちに外観が変わっていく。



光が止むと…


なんということでしょう。


そこに現れたのは昭和情緒あふれる庶民の屋台


古びた木製の壁やカウンターにくたびれたゴムタイヤ


千社札がベタベタと貼られた赤提灯


獅子像は可愛いライオンの置物に


先程の神々しい外観はどこへやら、匠もビックリのビフォータフター再びだ。



「おぉおぉぉ!!これだよこれ!懐かしきわが相棒!」

『魔法でその外観の皮をかぶせているだけじゃからの、お主の気分が変わればいつでもさっきの外観に戻るようにしといたぞい。』


未練がましいな本当に、正直あのモードで屋台開く事はまずないと思うけどな。

まぁでも俺の屋台をこれだけ素晴らしいものにしてくれたんだ、御礼は言わなければな。


「解った、ありがとうな爺さんたち。期待に応えられるように美味いもんを作ってみせるよ。もうちょっとだけ待っててくれな。」

『うむ、期待しておるぞ、人の子よ。』


他の神々も同様に俺に期待している旨を伝えながら天に還っていった。


本当騒がしい神達だったな、早く料理を食べさせないと神罰落とされそうで怖いわ。



しかし、やっと戻ってきてくれたな。


これで俺の異世界屋台生活が本格的に始まるぜ!




「またよろしくな、相棒。」


お読み頂きありがとうございました!


やーーーっとタイトル回収しました。

いやもう一章終わるんだけど!?


本当タイトル詐欺続きで申し訳ありませんでした。


今回は屋台の性能を伝えたくてどうしても長くなってしまいました、最初は5500字ぐらいだったので削ったのですが、取り敢えず魔改造屋台なのは間違いないです。


これを使って徐々に料理したりあれやこれやしていきます。


乞うご期待下さい!



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