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8~15。投稿を忘れてました。長い連結もあるのでご注意を。

はろーはろー




『太古のヒトと迷い人の邂逅』

少年は困惑した。

この山は数多くの神秘を秘めている。だが、目の前に広がるこれは自分には理解できてしまったのだ。

これは、これは太古の生物だと。それはまるっきり自身と変わらない、人のように見える。なのに、違うのだ。断じて違う。

「どうしたの?怖い?」

少女はこちらを気遣うように尋ねた。


『世界を旅する旅人』

世界は広い。見えているものだけが世界ではない。だから私は歩くことにしている。

自分の目と耳で感じ、自分の手と足で辿り着く。そんな旅をしている。

次は港町に行こう。その海には妖精が居るという。おかしな話だが私はこれを信じて港町に足を向ける。

ところで今山に居るんだ。遭難真っ只中さ。


『深き海の妖し』

潮風に揺られた帽子を押さえながら私は防波堤の上を歩いている。

この港町には妖精が居ると言う。なんでも、船乗りの前に現れて波を呼び、風を呼び、手助けしてくれたり、逆に嵐を呼び、流れを変えて船乗りをからかうと言う。

海を眺める限りでは見当たらない。

妖精の像を眺め、私は淡く笑った。


相当その妖精は信じられているらしい。町の至るところにその像が置かれている。幼く見える少女で共通していて、いかにも妖精らしい。

「お嬢さん、妖精に興味があるのかい。あれは困難な航海であればあるほど現れるっていうよ」

私は船乗りに頼み、悪魔の島と呼ばれる場所まで乗せてもらうことにした。


「なぜ悪魔の島かって?そりゃあ、あそこを通る船の八割が沈むからだよ」

恐ろしい怪物にやられた、と生き残りは言うらしい。どんなものやら。しかし私はそんな至極平凡な怪物に興味はない。

船乗りの話では妖精は嵐を呼ぶがそれを越えた者に宝を授けるとか。

まるで神様。俄然興味が沸いていきたね。


唐突だった。空は暗雲に包まれたかと思えば雷鳴が轟きあっという間に嵐が顕現した。

室内からその様子を眺めていたが、まるで神話のような光景だ。船は軋み波が窓に吹き付け時折光る稲妻。かくいう世界を旅する旅人たる私でも、これほどの嵐は初めてだ。

これが件の妖精の仕業なのだろうか。


私は窓に張り付き嵐を眺めていた。このいっそ神秘的なまでの光景に心が踊ったのだ。

ドンッ。何かが近くを叩いた。下の方だ。徐々に這い上がってくる。

妖精の仕業?違う。悪魔?違う。

それについては文学に触れているだろう君たちに向けてこう表現しよう。

ああ!窓に!窓に!

私の意識は途絶えた。


目覚めるとそこは薄暗い洞窟だった。悪夢にしては目覚める場所のセンスがない。船乗りの男はいない。あれからどのくらい経ったのか。

気配がする。

後ろをハッと振り向くとそこには微笑む幼い少女が居た。

訳もなく私はほっと胸を撫で下ろした。

少女はこちらに手を差し伸べてにっこりと微笑んでいる。


微笑み。微笑。少女のその笑みからはなにも感じられない。作り物のよう。

突如少女が溶解した。なにが、なにが、悪習を放ちながらこの世のものでない色を放ちこちらに目を向け溶け出す手を伸ばしてくる。

私はとっさに跳ねのき洞窟の奥へ走り出した。触手が頬を掠め、気がつくと怪物の姿はなかった。



息を吐いた束の間。

目の前に現れた幼い少女が微笑みながら小さい手を振っていた。

思わず尻餅をつく。これまでのドッキリに心身が疲労していた。

慌てて逃げ出そうとする。

少女は可笑しそうに笑い手を引いて、

「ごめんなさい、怖かったかしら?」

なんて言う。

彼女の姿は港町で見た像に似ていた。


ご褒美と言って少女は一冊の本を手渡してきた。

『世界旅行紀』

世界を旅する旅人に相応しい。なぜ彼女が、というのはそこはかとない恐怖を覚えるが。

そしてちろり、と舌を出して少女は言う。

「お目覚めよ」

辺りを見渡すとそこは港町であった。船乗りが不安げに覗きこむ。

手には一冊の本があった。


『猫の居る霊的物件』

目の前で美少女が寝転がっている。

「うち、出るんですよー」

「猫が?」

「はい。猫が出るんです~」

「えっマジで?」

「マジ寄りの嘘です」

「新しい。汎用性ないですよ」

「猫は猫でも猫の霊なんです」

「縁起がいいんだか悪いんだか」

「いや他人事みたいに。早く出てってくださいよ化け猫さん」


『あいにゆこう』

二羽の鳥が飛んでいる。

不思議と気になり目で追ってしまった。あの鳥達はお互いを支え合うように飛んでいると思った。

眩しいな、と思った。俺は、そんなに周りに頼れないよ。

夏の日差しが照りつけ、蝉が泣き喚く。

独りきりの行進だ。

俺は社の山道をゆっくりと登った。


『少年と老人の人生の楽しみ方』

横たわる老人の傍に少年が座っている。答える者も居ない問いかけを少年は繰り返す。

なあ、爺さん。あんたはいつも人生ってのは楽しく生きたもん勝ちっていって、いい年してはしゃぎ回ってたよな。嫌そうにしてたけど、俺は楽しかったよ。爺さんは、楽しかったか?どうせ、楽しかっただろうけどさ。


『夢の彼方』

夢のために出来ることをやりましょう。

小学校の頃の教師の言葉だった。小賢しい自分はそんな当たり前なことをと笑っていた。

当たり前のことが難しい。そう言う者は真にその意味を理解できていない。

やりたいことがある。方法が不明。判明してもできない。情けない。過去は変えられないから、前へ。


『消失の銅像』

動かない石像があった。

安らかに微笑んでいる?

どこかで見た気がする。

いつからこの像があるのか老婆に聞くと、ひぇ、と笑って答えた。

「失われたものと聞くねぇ。この像の何を調べても失われたものというそうだ。不思議だねぇ」

失われたもの。はて、何だろうか。

「まるで爺さんを見てるようだ」



失われたものが見えるんじゃない。

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