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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
八章 運命を変えよう!

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Awake:85 魔導砲

 魔女討伐作戦の説明が終わったところで、ワーグナー宰相は改めて口を開いた。


「作戦概要は以上です。ですが、皆様には最後にもう一つだけお伝えしておかなければならないことがあります」


 ワーグナーがそう告げると同時に、謁見の間にガラガラと何かが運ばれてきた。

 扉を開けて室内に持ち込まれた物は、かなり古びた大砲だった。


 大きさは四メートルくらいだろうか。

 移動時のガラガラという音は、大砲に取り付けられた車輪が回る音だった。

 どうやらかなり重たいようで、兵士四人が息を切らして押してきたようだ。


 この場の誰もがその古びた大砲を注視する中、俺も今一度しっかりそれを観察する。

 大砲の材質はよく分からないが、どうやら金属というよりは石のような物で出来ているようだ。

 そしてその表面には、古代文字のようなものがびっしりと刻み込まれている。

 文字自体は全く読めないが、俺にはそれがまるで呪文のように思えた。


「まさかこれは……!」


 俺の隣でティアナが驚いている。

 彼女の様子からは、この大砲が何なのかを知っている様子だ。

 これを初めて見る俺にとっては、全く検討も付かないのだが。

 俺が不思議そうに大砲を見つめていると、俺の横でアミィが呟いた。


「これは『魔導砲(まどうほう)』と呼ばれる魔道具ですね」


「アミィはこれが何なのか知っているのか?」


「はい。これは大昔の戦争で使われたとされる、かなり特殊な魔術兵器です」


「へぇ……魔術兵器ねぇ……」


 俺が感心していると、ティアナが声を荒立てた。


「お父様、どういうつもりですか! この『魔導砲』は代々王家が厳重に封印してきた筈! それ持ち出したのですか!」


 そんなティアナの言葉に、ゼウルス陛下は大きく頷いた。


「ああそうだ。必要だったのでな。お主らに伝えておきたいこととはな、この『魔導砲』を此度の討伐作戦に持っていくことが決定したということだったのだ」


「そんな……! お父様も知ってる筈です! この『魔導砲』を使う為には、とてつもなく膨大な魔力が必要だということを!」


「勿論知っているとも。一度この『魔導砲』を放てば、小さな都市くらいは容易く滅ぼせることも、使う為には一度に何百人分もの魔力が必要になることもな」


 たった一撃で、小さな都市を容易く滅ぼせる兵器!?

 今目の前にあるこの『魔導砲』が、そんな恐ろしい物だと言うのか……。

 俺が戦慄していると、アミィが小声で俺に教えてくれた。


「アイク様、どうやらこの『魔導砲』は大昔には複数存在したらしいのですが、現在帝国が所有しているもの以外には発見されてないそうです」


「そうなのか……」


 こんな兵器がまだ数台存在していたことが恐ろしい。

 しかし、アミィは博識だな。

 俺なんて今この兵器の存在を初めて知ったというのに。


「お父様、本当にこんな危険な兵器を表に出すおつもりですか!? かつて『魔導砲』を使った国がどうなったのか、勿論知っていますよね!?」


 声を張り上げるティアナを横目に、俺は隣のアミィにこっそり尋ねる。


「……どうなったんだ?」


「跡形もなく滅びたそうですよ。原因は不明ですが、『魔導砲』の暴発だったという説が有力です」


「そうか……」


 跡形もなく滅びたということは、当時を伝える資料なども消えているのだろう。

『魔導砲』を使うことが、結果的に国の滅びに繋がってしまったという過去の歴史。

 だからこそティアナは、陛下に対して強い警鐘を鳴らしているのだ。


「それにお父様、『魔導砲』を使用する為に必要な数百人分の魔力は、一体どうやって供給するつもりですか? まさかとは思いますが、兵達から供給させるつもりじゃありませんよね?」


「必要に迫られば、その手段もあり得るだろうな」


「お父様!!」


 ティアナの表情が一層険しくなる。

 彼らの会話がいまいち掴めず首を傾げていた俺に、アミィがそっと教えてくれた。


「『魔導砲』への魔力供給は、人体にとってはかなりの負担になります。それこそ魔力を根こそぎ奪われて、廃人になってしまうことも少なくないそうです」


「かなり強引な魔力供給の仕組みなんだな……」


「はい。威力こそは高い兵器ですが、融通は効きませんね。色々と欠陥が多いからこそ、今まで封印されてきたものですし」


 アミィの説明を聞く限り、『魔導砲』という兵器はそれなりにデメリットの大きいもののようだ。

 使用を反対する気持ちも分からなくない。

 そんなティアナに向かって、ワーグナーが言った。


「ご安心下さい、姫様。『魔導砲』への魔力供給は、あらかじめ魔石などを使って終わらせておきました。かなりの量の魔石を使いましたが、およそ二発分の魔力は充填出来ているでしょう」


 間髪入れず陛下も言った。


「ティアナよ、お主の危惧も分かるが、今世界は滅びを目前にしておる。ここで『魔導砲』の力を使わずして、一体どうするというのだ」


「……」


 確かに陛下の言うように、【終わりの魔女】が出現した以上、世界はいつ滅ぼされてもおかしくない状況だ。

 危険だから使わないなんてことを考えているような段階ではない。


「ティアナ、『魔導砲』を持っていこう。使うか使わないかは別にしてな」


「アイク……」


 隣で不安げな表情を作るティアナ。

 そんな彼女の肩に、俺はポンと手を置いた。

 そして、玉座に座るゼウルス陛下に言った。


「陛下、魔女討伐作戦における『魔導砲』の使用は、現場の俺達に一任させて貰えませんか?」


 俺がそう言うと、陛下は口を開いた。


「いいだろう。そもそも余は持っていけとは言ったが、何も必ず使えとまでは言ってはいない。この兵器を使うか使わないかは、お主らが現場で判断するがいい」


「ティアナ様、この『魔導砲』はあくまで保険です。もしもの時、魔女を殺す最終手段としての」


 ワーグナーはそう言ってティアナを嗜めた。


「もしもの時……それは……」


 俺は薄々分かっていた。

 ワーグナーは言った。


「もしもの時――それはあなた方勇者パーティーが魔女に敗北した時です」


 その言葉が重苦しく部屋に響いた。

 そんなワーグナーの発言の後には、誰一人として会話をすることなく、静かに作戦会議はお開きとなった。


 ――そして、一週間が経った。

 魔女討伐作戦は決行され、俺達勇者パーティーは連合軍と共に旧エルタシア王国へ進軍を開始した。

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