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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
七章 転移魔術を作ろう!

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Retrace:80 誕生日②

 セレンからプレゼントを受け取り、次はネルファの番になった。


「実は何を渡そうかずっと悩んでまして……。ノルン様のお気に召す物かは分かりませんが……」


 そう言って、ネルファは自信無さげにプレゼントを渡してきた。

 何かしら?


「これは……“私”よね?」


「はい。ノルン様がモデルです」


 ネルファから貰った物は、なんと“私”だった。

 ただし、1/10スケールくらいの大きさだけど。


「これは私が自作した木製の彫刻になります。我ながら素晴らしい出来だとは思うのですが、今になってプレゼントとしてどうなのかと思い始めまして……」


 ネルファのプレゼントは、私をモデルに彫った木の彫刻だった。

 大きさ的には手のひらよりも少し大きいくらいである。

 それにこの彫刻は、細部までしっかり彫られていて、まさに私のミニチュアだった。


「自作ってことは、これをネルファが作ったってことよね?」


「はい。私が作りました」


「へぇ~凄いじゃない! ネルファにこんな特技があるなんて、今初めて知ったわ」


「実は昔からよく剣の修行の合間に、一人で木を削って遊んでまして……。自然と上手くなってしまったんです」


「そうだったのね」


 普段から大雑把そうなネルファが、こんな彫刻を作れるなんて思いもしなかった。

 意外な特技を隠していたわね。


 実際よーく見ても、私の姿を模した彫刻のクオリティは異常に高い。

 目元や鼻、髪の毛までしっかりと表現されている。

 あと恥ずかしいことに、私の寝癖まで再現してあった。


 それとしっかり塗装もされており、かなりリアルな色彩が付いている。

 本当にネルファがこれを作ったとしたら、まさにプロ級の腕を持っていると言えるだろう。 


「ところで、ネルファ。貴方に一つ聞きたいんだけど、何で彫刻の私は半裸なの? 何で身に付けてるものがタオル一枚だけなの?」


「芸術ですから」


「ネルファ、芸術って言えば何でも誤魔化せると思ってるの?」


「……すみません。ノルン様が半裸なのは、私の趣味です」


「うん。知ってた」


 前にお風呂を一緒入ったこともあったし、私の裸はしっかりリサーチ出来ていたようね。

 それをこうして彫刻で表現までされると、何だか複雑な気持ちだけど。


「あのね、正直に言うわ。わざわざ作ってくれたネルファには悪いけど、私が私の姿の彫刻を貰っても反応に困るわよ」


 彼女の腕前は称賛に値する。

 ただし、私へのプレゼントとして考えるなら、明らかにモデルの人選ミスだ。


「……やっぱりそうですよね。ノルン様に言われるまでもなく、自分でも薄々気付いてました。でも、実はこれ以外にも沢山あるんです」


 そう言って、ネルファはどこからともなく次々と彫刻を取り出していく。

 どうやら私へのプレゼント以外にも、似たような作品はいっぱいあるようだ。


「わわっ! どれだけあるのよ!?」


「私の仕事は基本暇なので、ほぼ毎日のように作ってました」


 仕事しろよ! と言いたいところだけど、実際この部屋の警備ってやることないわよね。


「というか、他の彫刻も私ばっかりじゃない……」


 ラムの上に寝そべってる私。本を読んでいる私。眼鏡をかけてる私。

 ネルファが並べた作品を見ても、どれも私をモデルにしたものばかりだった。


 どうせこの場の彫刻は、全て私がモデルなのだろう。

 そう思っていた矢先、私は一つの彫刻に視線が吸い寄せられた。


「何よ。ちゃんと私以外の彫刻もあるじゃない。これってネルファ自身の彫刻よね? 凄く格好いいわ!」


 見付けたのは、剣を構えてポージングするネルファの彫刻。

 表情もキリッとしていて、凛々しい騎士って感じだ。


「これは鏡の前でポージングした自分を参考に作りました」


 思わずはしゃいだ私に、ネルファはそう教えてくれた。

 鏡の前で自らポージングする彼女を想像すると、何だが痛々しい気持ちになってくる。


「この私やノルン様をモデルにした彫刻以外にもまだありますよ?」


 そう言って、ネルファは更に他の作品を取り出してきた。

 その中には、これまでとは全く別の人物をモデルにしたものが沢山あった。


「これはセレンの彫刻よね? あっ、こっちにはリッカやラムのもあるわ!」


「まあ、気分で作ってみました」


 セレンやリッカ、更にはラムまで。

 かなりの再現率でネルファによって彫刻が作られていた。


 この量。この質。

 もはや感心を通り越して、リスペクトすら抱くレベルね。


 私は試しに部下達全員の彫刻を、自分の彫刻の周りに並べてみた。

 そして、私は唸るように言った。


「こうして並べて見ると壮観ね。全員の姿が揃っていると、格好良さが三倍増しになって見えるわ」


 クオリティが高いことも相まって、かなり素晴らしい眺めである。

 いつまでも飽きずに見ていられそうだ。


「ネルファ、これ全部セットで貰っても良いかしら?」


「元よりノルン様の為に作ったので、構いませんよ」


「そう、なら有り難く貰っておくわ。どうせだし、部屋の目立つところに飾っておきましょう」


 何かケースに入れて、目の届くところに置いておこう。

 適当に置いちゃうと、部屋に散らばるガラクタの中に混ざっちゃうからね。


「ネルファ、最初は貴方のプレゼントをいらないなんて思ったけど、それは私の間違いだったわ。許して頂戴」


「いえ、ノルン様が謝ることなど何もありません! ノルン様が喜んで頂けなければ、プレゼントの意味がありませんからっ!」


 私の言葉に、ネルファはそう声を上げた。

 私はコホンと一度咳払いし、彼女と話を続ける。


「まあとにかく、貴方から貰ったあの彫刻は絶対に大切にするわね。今度機会があったら、また別の彫刻も作ってくれると嬉しいわ」


「は、はい! 是非!」


 嬉しそうに瞳を輝かせ、ネルファは私に返事をした。

 彼女から貰った彫刻、大切に保管しよう。



 ◆



「次は誰かしら?」


 セレンとネルファからプレゼントを貰い終え、私はそう問い掛けた。

 すると、セレンが答えた。


「次はラムの番になります」


「え!? ラムもプレゼントをくれるの!?」


 私は素直に驚いた。

 頭が良いと言っても、スライムのラムが誕生日というものを理解しているとは考えにくい。

 おそらくセレン辺りが、事前に誕生日プレゼントの事を彼に教えておいたのだろう。


 ところで、ラムはどんなプレゼントをくれるのかしら?

 全然想像出来ないわね。


 そんな事を考えていると、ラムがプレゼントを私の元に運んできた。


「えっ! これをラムから私に?」


 私がそのプレゼントに驚くと、ラムはコクコクと頷くように体を揺らす。

 そして、そんな彼から渡されたのは、宝石のようにカットされた高純度の魔石だった。

 しかもかなりデッカく、ずっしり重い。


 ラムは魔力を元に、魔石を作り出すことが出来る。

 おそらくその力で、私の為にこの大きな魔石を作ってくれたのだろう。


 どうやらラムは、この魔石を私の実験に役立てて欲しいようだ。

 けど、ここまでキラキラしているとちょっと使うのに躊躇する。


「ありがとう、ラム。でも、これは出来る限り実験には使わず、部屋に飾っておくことにするわ」


 まあ、急遽魔石が必要になったら使っちゃうかもだけど。

 ラムからのプレゼントを受け取り、残すのはあと一人となった。



 ◆



「次はリッカの番ですが、姫様宛てに彼女から手紙とプレゼントが送られてきております」


「そう言えば、前に送るって言ってたわね」


 私はセレンから手紙とプレゼントを受け取った。


『一人だけ姫さんの誕生会に出席出来なくて、本当に申し訳ないっす! このお詫びは次の機会にさせてもらうとして、今回は姫さんの部下として、友人として、純粋に誕生日を祝わせて下さいっす』


 誕生日おめでとう。

 その文字が綴られた後に、プレゼントを開けて欲しいとの指示が書かれていた。

 私はリッカの手紙に従い、丁寧に包装されたプレゼントの箱を開封する。


『これはデール帝国で購入した高級ティーセットっす。姫さんはよく気分転換でお茶を飲んでいるので、その時にでも使ってくれると嬉しいっす』


 中から出てきたものは、ティーポットとティーカップのセットだった。


「ふーん、今リッカってあの帝国にいるのね。それにしても、素人目に見ても高そうなティーセットだわ。一体どのくらいの値段だったのかしら?」


 今まで使っていたティーセットもそれなりのものだったけど、リッカのプレゼントから伺える高級感はこれまで以上だ。

 ありがたく使わせて貰おう。


 この場にリッカがいないので、直接お礼を言えないのが残念だ。

 ただ今回彼女がかなり奮発したのは間違いない。

 リッカの財布事情はしらないが、一体幾ら使ったのか……。


 まあそこのところはまた今度聞くことにしよう。

 次に帰ってくるのがいつになるのかは知らないが、リッカには面と向かってお礼を言いたい。


 こうしてプレゼントタイムは終了した。

 それと同時に、この誕生会で予定されていた全ての行事を終えたことになる。


「ありがとう皆、本当に生まれてきてよかったわ! こんなに大きなケーキも食べられて、沢山プレゼントも貰えたし! 最高の誕生日だったわ!」


 そう口にした私は、テーブルから部下達を見た。

 私を信頼してくれて、ついてきてくれる彼らの姿に、思わず目頭が熱くなってきた。


「……姫様、泣いてるんですか?」


「ちょっとね、うるっときたのよ。こんな幸せな一日なんて、昔の私には絶対来ないだろうと思ってたから」


 セレンの言葉に、私はそう答えた。

 過去の私を考えれば、この光景はまさに奇跡だった。


 今こんなに大切な人達に囲まれていられる。

 これも全て、勇者様が私を過酷な運命から救ってくれたからである。


 そして私は、この幸せの中にあの人もいて欲しいと思う。

 それは願いであり、約束だ。


 勇者召喚を成し遂げる為に、これからも頑張ろう。

 十六歳になった私は、改めて自分の心にそう刻んだ。

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