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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
六章 転移魔術を研究しよう!

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Retrace:69 ビーフシチュー

 私がテーブルについて待っていると、セレン達が料理を運んできた。

 そして、ネルファが全員分の料理を配膳していく。


 今日のメインは、彼女達が作ってくれたビーフシチューだ。

 それに合わせたパンも用意されている。


 コトンと私の前に置かれた皿。

 その上には、湯気が沸き立つビーフシチューが乗せられている。


 お、美味しそう……!

 というか食べなくても、匂いだけで美味しいって判断出来る。


「どうぞ、お召し上がりください」


 全員が席についたところで、セレンが私にそう言った。

 さあ、夕食だ。


「わーい! いただきます!」


 スプーンを手にし、私はビーフシチューを掬った。

 フウフウと息で冷まし、私はそれを口元に運んだ。


「美味しい! 滅茶苦茶美味しいわ!」


 思わず私は叫んだ。

 行儀の悪いけど、美味しいから仕方ない。


 濃厚でとろみのあるルーの口触り。

 ワインの風味に彩られ、牛肉と野菜の味わいがハーモニーを奏でている。


 同じ食卓を囲む部下達にも、このビーフシチューは好印象だったようだ。

 ちなみに今回は、セレンもメイドだからと意地を張らずに、シチューを私達と共に食べている。


「とっても美味しいけど、これはリッカとネルファも手伝ったのよね?」


「はい」


「はいっす」


 私の言葉に、二人は頷く。

 そんな彼女らに、私は更に深く質問した。


「それで、ネルファは何を手伝ったの?」


「私は配膳を手伝いました」


「じゃあリッカは?」


「私は盛り付けっすね」


「――って! 結局ビーフシチューはセレン一人で作ってるじゃない!」


 ネルファとリッカは、殆ど夕食作りに関わっていなかった。

 まあ何も手伝ってない私が言えたことではないけれど……。


 でもセレンの作ってくれたビーフシチューは、本当に美味しい。

 料理の腕は全然鈍ってなんて無さそうだ。


 そんなシチューを口にし、私はふと感想を漏らす。


「私、シチューに入っている具の中で、一番ニンジンが好きだわ」


「あー分かるっす。あの食感と甘味が良いっすよね」


 私の呟きに、リッカはそう同意してくれた。

 すると、ネルファが口を開く。


「私はニンジンよりも牛肉派ですね。ビーフシチューと言うからには、やはり主役の牛肉こそが一番でしょう」


 ちょっと待って。

 何だか前も似たような会話をした気がする。


 確かその時も、ネルファは牛肉派を公言していた。

 それって結局、彼女が牛肉を好きってだけの話よね。


「牛肉ねぇ……。確かに美味しいけど、流石に今回はニンジン派から寝返らないわ。私はとっくに、身も心もニンジン一色に染まっているもの」


 ネルファの言うことも分かるくらいには、シチューに入った牛肉は美味しい。

 軟らかく煮込まれた肉は、濃厚なルーと凄くマッチしている。


 だが、それでも気は変わらない。

 私は断固としてニンジン派を貫く!


「身も心もニンジン一色って、想像すると怖いっすね……」


 リッカが隣で苦笑している。

 すると、ネルファが言った。


「なら、私は牛肉一色ですね。ノルン様がニンジン派に属していようとも、私は断固として牛肉こそが一番だと主張します!」


 そんなネルファの言葉に、私は反論する。


「そうは言うけれど、今のところニンジン派は私とリッカの二人もいるのよ? 一方の牛肉派はネルファ一人だけ。二対一の状況なのは変わらないわよ?」


「くっ……! ですが、ビーフシチューの具で一番美味しいのは牛肉で間違いないのです!」


「ふーん、負けを認める気は無いのね?」


「はい! たとえノルン様が相手でも、こればかりは退けません!」


 悔しそうな表情を見せながらも、ネルファは断固として負けを認めないようだ。

 すると、リッカがボソッと呟く。


「そもそも一体何の勝負なんすかこれ……。ていうか、私も自動的にニンジン派に入れられてるんすね」


 そんなリッカの台詞を聞き流し、私は言った。


「こうなったら仕方ないわね。もう一人にも意見を聞いて、ニンジン派と牛肉派の争いに決着を着けましょ?」


 ニンジンと牛肉。

 どちらが一番ビーフシチューの具材で美味しいのか。


 それを決めるには、この場にいるもう一人の意見も反映すべきだろう。

 私の視線は、黙々と食事を続けていたセレンに向いた。


「ねえセレン、貴方はどっち派なの? ビーフシチューの中で一番美味しい具材と言えば、勿論ニンジンよね!?」


 私がそう話を振ると、セレンが食事の手を止めた。

 そしてスプーンを置き、私に向かって口を開く。


「……残念ですが、私はニンジン派でも牛肉でもありません」


「え!? まさかセレン、ジャガイモ派だったの!?」


 ここでまさかの第三勢力の出現か!

 そう身構えた私に、セレンは首を横に振って否定した。


「違います。私が言いたいのは、そもそもビーフシチューとは具材全てが調和することで、一つの料理として完成しているということです。つまり、具材に優劣なんてものは存在しません」


「……!」


 彼女の言葉に、私は絶句した。

 セレンの言う通り、これはビーフシチューという一つの料理なのだ。


 それなのに私は具材に優劣をつけようとした。

 何と浅はかな考えだったのだろうか。


「そうね、セレンの言う通りよ。私の考えが甘かったわ。ニンジンも牛肉もビーフシチューの中で調和してるのよね……」


 私は自らの考えを反省した。

 そしてニンジンと牛肉を同時に食べる。


「ニンジンと牛肉……確かに調和しているわね。とっても美味しいわ」


 そもそもニンジン派と牛肉派の争いなんて、あまりに不毛なものだった。

 何で私はこんな些細なことで争っていたんだろう?

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