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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
六章 転移魔術を研究しよう!

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Retrace:68 夕食前

「セレンから旅の話を聞こうと思ったけど、もうこんな時間ね。ちょうど良いわ。皆で夕食にしましょ? 話はその時にでも聞くことにするわ」


 時刻はとっくに夕方だ。

 日は殆ど暮れている。


「ところで姫様、今晩の夕食は何にしますか?」


「え? 帰って来たばかりなのに、セレンが作ってくれるの?」


「勿論です。私は姫様のメイドですから」


「まあそうだけど……。別に今日くらい休んでも構わないわよ?」


 帰って来たその日に、夕食まで作らせるのは申し訳ない。

 セレンだって疲れている筈なのだ。


「そうだぞ、セレン。ノルン様が休んでも良いと言っているのだ。夕食はこの私に任せてくれても構わないぞ?」


 腕を組み、ネルファはそう口にした。

 そんな彼女の言葉を耳にした私は、全ての考えを改め直した。


「……いや、待って。セレン、本当に夕食を作ってくれるのね?」


「はい。一ヶ月ぶりなので、多少腕が(なま)っているかもしれませんが」


 セレンのことだから、腕が鈍るなんてことは無さそうだ。

 それにネルファに料理を作らせると、この一ヶ月間食べ続けた野菜炒めがまた出てくる。

 それだけは避けないと!


「ならセレン、帰って来たばかりで悪いけど、全員分の夕食を頼めるかしら?」


「かしこまりました。……それで姫様、覚えてますか?」


「ん? 何をかしら?」


 セレンの問い掛けに、私は頭の上でハテナを浮かべる。

 すると、彼女は言った。


「私が地下迷宮へ出発する際にした約束です。私が無事に戻ってきたら、姫様に美味しい料理を作ってあげると」


「ああ、そんなことも言ってたわね」


 出発の際にセレンがそう言っていたことは、私もしっかりと覚えている。


「今日は姫様の好きな物を作らせて頂きます。何なりと仰って下さい」


「それじゃあ、ハンバーグとオムライスとビーフシチューが食べたいわ」


「欲張りですね。どれか一つにして下さい」


「うーん……それならビーフシチューにするわ」


「かしこまりました。では作ってきますので、しばらくお待ち下さい」


 そう告げて、セレンはさっさとこの部屋から出ていった。

 残されたのは、私とネルファ、リッカの三人だけだ。


 取り敢えず、私達はセレンが戻ってくるのを待つことにしよう。

 テーブルの席に付くと、リッカがネルファに尋ねた。


「ところで、ネルファ姉は何でメイド姿なんすか?」


「愚問だな。ノルン様をお世話する以上、メイド服の着用は当然の義務なのだぞ?」


 ネルファのその返答に、リッカは驚いた様子で私を見た。


「えっ、そうだったんすか? 姫さんがそんなにメイド好きだったなんて初耳っすよ」


 メイド服を着ているネルファ。

 その姿をチラリと見て、リッカは頬を掻きながら尋ねてきた。


「もしかして、私もメイド服になった方がいい感じっすかね?」


 現在、セレンもネルファもメイド姿だ。

 部下の中で自分だけ別の格好をしていることが、リッカには少し気に掛かっている様子だった。


「いや、確かにメイド服は好きだけども……。好きなんだけども、そこまでしなくてもいいと言うか……」


 リッカの提案に、私は目を泳がせて言い淀む。

 確かにメイド服は好きだ。


 多分だけど、嫌いな人は少ないと思う。

 それに正直、リッカのメイド姿は見てみたい。


 だって、リッカって出現率が低いレアキャラよ?

 そんな彼女のメイド姿なんて、一生拝む機会なんて無いかもしれないじゃない!


「私が貴方のメイド姿が見たいって頼んだら、リッカは着替えてくれるの?」


「まあ姫さんの頼みなら、メイド姿になるのもやぶさかではないっすね」


「本当!?」


 ヤバい。

 ちょっとテンションが上がってしまった。


「ならお願いリッカ、私の為にメイド服を着て?」


 そんな頼みを口にするのは恥ずかしかったが、私は己の欲望に負けた。


「じゃあ着替えてくるっす」


 そう言って、リッカは部屋を後にした。

 私がワクワクしていると、すぐに部屋の扉が開かれた。


「着替え終わったっす」


「早っ!」


 着替えるの早すぎでしょ。

 しかし、潜入等を仕事にしているリッカからしてみれば、衣装の早着替えくらいは出来て当前のようだ。


「……予想はしてたけど、背が低いリッカが着ると、セレンやネルファとはまた違った雰囲気になるのね」


 黒を基調にした生地に、純白のエプロン。

 慎みを感じられるロングスカートに、頭にはホワイトブリムが乗っている。


「似合ってるっすか?」


「ええ、とっても可愛いわ」


 メイド服に着替えたリッカを前にし、私は思わず唸った。

 小柄な彼女のメイド姿は、まさに可愛いの一言に尽きる。


 普段から小動物のようなリッカだが、そんな彼女にメイド属性をプラスすると、より愛らしさが倍増して見えた。

 それにシンプルの白黒の衣装に、彼女の金髪は特に映える。


 うーん最高。

 ネルファのメイド姿がギャップによる可愛さだとしたら、リッカのそれは可愛さに可愛さを足した感じだ。


 やっぱりメイドっていいわね。

 まさに眼福ってやつだわ。


「姫さんはヒラヒラのメイド服より、こっちの地味な方が好きなんすか?」


「そうね。ただ可愛いだけの格好より、奉仕の心が感じられる方が私的には好みだわ」


 だからメイドは、ミニスカよりもロングスカートの方がいい。

 これは完全に私の好みの話なんだけど。


「本当かどうか知らないっすけど、メイド服って仕えてる主人が欲情しないように、あえて地味な衣装にしていたって話っすよ」


「へーそうなの」


 全然知らなかった。

 でも、寧ろ地味な衣装だからこそ、元の素材がより生かされるってものよね。


 リッカのメイド姿を十分堪能したところで、彼女は私に言った。


「それじゃあ、そろそろセレン姉を手伝ってくるっす。流石に一人に任せっきりは悪いっすからね」


「よし。私も行くぞ」


 リッカの言葉に、ネルファも同調する。


「三人で夕食を作って来ますんで、姫さんは楽しみに待ってて下さっす」


 そう言い残して、二人は部屋の外に出ていってしまった。

 メイド達が作る夕食かぁ……。

 私は彼らの姿を思い浮かべ、一人にやけたのだった。

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