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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:63 第十層

 遂に私は、念願の十層へ足を踏み入れた。

 目的の魔法陣まではあと少しだ。


 私はここまでの道程を振り返る。

 この十層までスムーズに辿り着けたのは、やはり勇者パーティーに加わったことが大きい。

 最初こそは大人数で行動することに抵抗があったが、結果的には彼らが多くの利益をもたらしてくれた。


 どれだけ自分の実力に自信があろうと、結局人間が一人で出来ることなんて限られているのだ。

 私は冒険者の経験値と役割分担の重要性を、ひしひしと感じた迷宮探索だった。


 十層のエリアはどうやらかなり狭いようだ。

 通路はほぼ一本道であり、道中で現れた魔物の種類も九層と一切変わらなかった。


「呆気なく着きましたね」


 通路が途切れる手前で止まり、私はそう口にする。

 十層はエリアが一番狭いだけあって、終着点までアッサリと辿り着けた。


「この先が十層のボスか」


「一体どんな魔物がいるんでしょうか?」


 アイクとティアナの二人もそう呟く。


 この十層目は、この地下迷宮における最後の階層。

 百五十年前にかつての勇者が踏破して以降、誰一人として足を踏み入れたことのない未知の領域だ。


 勇者パーティーの面々から、緊張している様子が伝わってくる。

 迷宮の終点とも言える場所である以上、この最後に相応しい魔物が待っているに違いない。


「皆、万全の準備をして挑もう」


 アイクは皆に向けてそう言った。

 私達は各自で武器を手入れし、装備に不備が無いかも念入りに確認する。

 そして十分な休息をとって、私と勇者パーティーはボスの待つその場所に足を踏み入れた。



 ◆



 私達がやってきたのは、十層目の主がいるであろうスペースだ。

 この場所の天井はこれまで以上に高く、全ての内壁は強い青色に発光していた。


 これまでの迷宮内と違って、地上と同じくらいに明るく、とても開放的な空間が広がっている。

 そんな場所を訪れた私達だったが、真っ先にその視線は前方の魔物に釘付けされていた。


 すぐ隣でアイクが絶句している。

 いや、彼だけではない。

 その魔物を目にしたこの場の全員が、まるで金縛りにあったかのように固まってしまっていたのだ。


 ああ、何という偶然でしょうか……。

 ぞわりと、私は自分の肌が粟立つのを感じた。


 思わず口角が吊り上がりそうになる。

 この少し作為的な巡り合わせに、私は笑ってしまいそうな程に驚いていた。


「十層目の主は、どうやらこのドラゴンのようですね。それも全身がミスリルの鱗で覆われた――」


 傍でアミィが冷静にそう告げる。

 その言葉に、私は頷いた。


「ええ、ミスリルドラゴン――この銀竜は、Sランク指定されているあの伝説の魔物で間違い無いようです」


 Sランク魔物・ミスリルドラゴン。

 それがこの十層を支配する魔物だった。


 図鑑にも絵すら乗っていなかった為、あの姫様が召喚出来なかった伝説のドラゴン。

 アダマントガーゴイルやオリハルコンコカトリスと同じ、伝説級とされる魔物の一体だ。


 それにこのドラゴンは、最強のスライムへの進化素材の一つでもある。

 姫様の望み通りにラムを進化させる為には、何としてもこのミスリルドラゴンの逆鱗が必要なのだ。


 最後の最後で、姫様に思いがけないお土産が出来ましたね。

 私はそう内心呟いて、目の前の魔物に視線を向けた。


 鏡のように磨き上げられたメタリックな鱗。

 迷宮内を照らす青い光が反射して、ミスリルドラゴンはよりその姿をより荘厳に見せた。


 美しい。

 ただその一言に尽きる。


 この十層に住む竜と言うだけあって、その迫力は満点だ。

 スリムな体を四足で支え、その背中には小さな翼のような突起がある。


 全身にミスリルの鎧を着込み、防御面での隙は無さそうだ。

 そして、同じくミスリル製の長い尾と鋭い鉤爪が、このドラゴンにおける攻撃の武器なのだろう。


『この十層まで辿り着く者がいるとは、百五十年ぶりか?』


 地響きにも似た低い声音が、ドラゴンの喉元から発せられた。

 その言葉に、全員が緊張感を持って武器を構える。


 微睡みから目覚めた銀竜は、その翡翠の眼に私達を捉えた。

 そして、ゆっくりと寝そべっていた体を起こしていく。


 ミスリルドラゴンは私達の中でも、アイクの姿を捉えていた。

 その彼の手にした英雄剣を見て、銀竜は目を細めた。


『その剣……知っているぞ。百五十年前、俺を倒したあの勇者が手にしていた聖剣だな』


 そう口にして、ドラゴンの瞳に憎しみのような感情が灯った。

 そして、ピリピリとした殺気が全身から沸き立っていく。


『その剣を持つということは、貴様は勇者ということか。良いだろう。この迷宮の守護者として、俺が直々に相手をしてやる』


 その宣言と共に、ミスリルドラゴンは私達の前で戦闘態勢に入った。


「ヤベェ相手なのは間違いないが、やるしかねぇみたいだな!」


「そう……ですね」


 ラッシュとティアナがそう言うと、アイクは全員に発破を掛けるように口を開いた。


「伝説の魔物相手だろうと、怯む必要はない! 俺達の力を見せてやろう!」


 アミィだけを後方に残し、勇者パーティーが前に出る。

 私も彼らと共にミスリルドラゴンに対峙した。


 この迷宮を完全に攻略する為に、このミスリルドラゴンとの戦闘は避けては通れない道だ。

 それに姫様が欲しがっていたあの逆鱗を手に入れる為にも、私は決して負けるわけにはいかない。


『来い、勇者ども! 力の差を思い知らせてやる!』


「望むところだ!」


 ドラゴンの挑発に、アイクは大きな声で答える。

 今ここに伝説の魔物対勇者パーティーという、壮絶な戦いの火蓋が切って落とされた。

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