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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:60 第八層

 私はアイクらと共に地上に戻った。

 迷宮内で得た魔石や素材を売却する目的と、勇者パーティーの依頼の報告も兼ねて、私達は冒険者ギルドへ向かう。


 ギルドに着き、さっそくアイクは謎の魔物の件を報告した。

 受付で対応したのは、あの私と親しい女性職員だ。


「え、えぇ!! 謎の魔物の正体って、セレンさんだったんですか!?」


 報告を受けた女性職員は、そんな大声を上げていた。

 彼女が浮かべた驚愕の表情を、私は一生忘れないだろう。


 アイクの報告に対して、ギルド側は私達を別室まで案内した。

 わざわざギルドマスターが出てきたことからも、あまり他人に聞かせられないようなやり取りが行われるのだろう。


 私と勇者パーティーの面々は、個室の中で様々な聞き取りを受けた。

 私は謎の魔物の正体が自分であることを打ち明け、ギルド側がどういった判断を下すのかを待つ。


 結局私に対するギルド側が出した結論は、お咎めなしとの判断だった。

 冒険者ギルドとしては、魔物の正体が私だと判って寧ろ安心したというだけらしい。


 まあ実際私が誰かに危害を加えたわけではなく、他の冒険者達が魔物だと勘違いしていただけである。

 元々私に落ち度なんてものはない。


 それにアイク達の存在も大きかった。

 私に下されるだろう処遇に関して、彼らはかなりの便宜を図ってくれたのだ。


 私をフォローする側に回った勇者パーティーは、冒険者ギルドに対してこの上ない程に有効だった。

 よっぽどの理由が無い限り、アイクの主張と真逆の処分はギルド側としても下せないだろう。


 冒険者ギルドという組織において、それほどまでに勇者という存在は大きかったのだ。

 こういったやり取りもあって、私は晴れて無罪となった。


 これからも大手を振って地下迷宮を探索出来る。

 そう考えると、少しホッとしている自分がいた。



 ◆



 翌日、私は地下迷宮の八層目まで辿り着いた。

 勿論だが、勇者パーティーの面々も一緒である。


 勇者パーティーは既に七層を攻略し、八層を半分程まで攻略していた。

 まだ七層の道のりを調査していた私だが、彼らのおかげで一気に八層までショートカットが出来た。


 迷宮内を歩きながら、私は隣のアミィに話し掛けた。


「貴方が地図係りなんですね」


「はい。私は皆様より戦闘力がないので、こういったお手伝いしか出来ません」


 私の質問に、そう答えが返ってきた。

 アミィはこれまで歩いてきた経路を、しっかりと紙に記録している。


「近年この八層を訪れた冒険者はいません。かつての勇者が十層まで攻略したのは、百五十年も昔のことでした。その時の記録などは残っていないんです」


 アミィはそう私に教えてくれた。

 しかし、彼女のサポート能力は目を見張るものがある。


 斥候と道具持ち。その両方をこなしつつ、地図まで書く。

 この小柄な軍服の少女は、レンジャー技能にかなり優れている。


 私がアミィと会話をしていると、ティアナが話し掛けてきた。


「何だかセレンさんとアミィ、出会ったばかりなのに仲いいですよね?」


「……そうでしょうか?」


 私が困ったように口にすると、ティアナは微笑む。


「はい。会話をする二人の雰囲気は、まるで昔から知り合いだったかのようですよ」


「……」


 黙った私に、ティアナは続けて口にした。


「やっぱり波長が合うんじゃないですか? アミィもセレンさんも、感情が顔に出にくいですし」


 そんなことを言われて、私は隣の少女に視線を向ける。

 すると、彼女もこちらに視線を向けてきた。


「……」


「……」


 お互いの視線がぶつかり、何だか変な空気になる。

 正直アミィに、私は何を言って良いのか分からなかった。


 そんなやり取りを交わしながら、特に危険も無いまま私達は通路を奥へと進んだ。

 このままいけば、今日中に九層まで進めるだろう。


 少し気持ちが逸ってしまい、私は自ら率先して現れる魔物を倒していった。

 そして、遂に私達は八層の終着点に到着する。


 このトワリアル地下迷宮の階層は、大体下層へ続く階段前に大きな空間が存在していた。

 五層以上の階層であれば、そこは多くの冒険者が利用する休憩スペースになっている。


 しかし、それはこの八層では通じない。

 階段前の空間に近付いた時、アミィが注意を促した。


「アイク様、気を付けて下さい」


「ああ、分かってる。かなりいるな……」


 アイクが息を潜め、そう答える。

 その彼の声に、全員は身を引き締めた。


 近年八層目まで到達した冒険者は、私達以外に誰もいない。

 そんな一切冒険者が訪れないエリアでは、階段前のスペースは強力な魔物の住み処になっているらしい。


 ようはその階層の主、ボスである。

 六、七層目に関しては、アイク達が既にその魔物を倒していた。

 だからこそ、私も楽に七層までは攻略出来たのだろう。


「皆、準備はいいか?」


 アイクの問い掛けに、一同は頷きを返す。

 そして私達は臆することなく、魔物の住み処へと突撃していった。


「これが八層目の主ですか……」


 目に映る魔物の姿に、私は思わずそう声を漏らした。


 八層の主。

 それはタコの触手に似た根で地面を歩き、トラバサミのような形状の葉を持つ食虫植物型の魔物だった。


 一体の大きさは大体成人と同じくらいで、見た目からしてもかなり狂暴そうである。

 しかもその魔物は一体だけではなく、複数体で一ヶ所に固まっている。


「バイトプラント。単体でBランクの魔物だ。思っているより素早く、生命力が強い」


 ラッシュがそう説明した。

 食虫植物のような姿の魔物だが、おそらくは光の少ない迷宮内で、他の生物を補食することで養分を得ているのだろう。


「アミィ、セレンさんと一緒に下がっててくれ」


「私も手伝いましょうか?」


 アイクの言葉に、私はそう尋ねた。

 すると、彼は優しく答える。


「ここまで道中で、杖を使わずかなり魔術を連発したんですから、セレンさんの魔力はそこまで残ってないはず。今は無理をしないで下さい」


 この数のバイトプラントなら、彼は私の手を借りなくても十分勝機があると踏んだのだろう。

 ちなみに私の魔力の残量は、まだまだ余裕である。


「セレンさん、ひとまずここはアイク様達に任せましょう」


 私の隣でアミィが口を開いた。

 彼女がそう言うなら……。


「分かりました」


 私も勿論手伝うつもりだったが、これはいい機会である。

 この魔物の群れ相手に、勇者パーティーの実力を見せて貰おう。

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