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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:58 魔術の腕前

 勇者パーティーと行動を共にするにあたって、私は彼らから自己紹介を受けた。


 帝国の勇者・アイク。

 くすんだ赤髪を持つ、普通そうな青年だ。

 しかし全身に身に付けた装備の数々は、如何にも勇者らしく洗練されていた。


 帝国の姫・ティアナ。

 ウェーブの掛かった濃い茶色の長髪に、ローブや杖などを身に付けた彼女は、まさに魔術師といった風貌だった。


 Sランク冒険者・ラッシュ。

 獅子の鬣のような薄い茶髪を持ち、一見チャラそうな風貌の男性だ。

 それに彼は、『迅雷』という異名を持つ剣士だという。


 帝国軍所属・アミィ。

 薄い紫の髪をした、軍服を着た小柄な少女だ。

 他のメンバーよりも数段戦闘力が劣る分、多岐に渡る技能で彼らをサポートしているらしい。


「アイク様、ティアナ様、ラッシュ様……それとアミィ様ですね」


 私は彼らの名前をしっかりと頭に刻み込む。

 アイクに関しては、勇者様と呼ばれることが苦手だと告げられたので、これからは名前の方で呼ぶことにした。

 私は五層の通路を歩きながら、アイクに向かって尋ねる。


「私の迷宮探索に付いてくるのは構いませんが、先に報告を済ませなくてよかったのですか? 謎の魔物を調査する依頼は、冒険者ギルドから直接受けたものなんですよね?」


「確かに冒険者ギルドから直接受けた依頼ですけど、迷宮探索後に魔物から取れた魔石や素材を売るついでに、セレンさんと一緒にギルドへ寄って報告した方がいいと思いまして」


「そうですか……」


 最後の足掻きは、やっぱり無駄だった。

 彼らからすれば善意のつもりなのだろうが、こうして探索に同行されるのは余計なお世話でしかない。


 常に監視されているような居心地の悪さは、一体いつまで続くのだろうか。

 こうなってしまった以上、仕方ない。

 どこかで私の実力を見せ付けて、同行は不要だと強く言いくるめるしかなさそうだ。


 しかし、この五層をテクテクと歩いている今の状態は、私にとってはただの無駄な時間でしかない。

 この街に来てから一週間で、私は七層の半ばまでの道順を攻略している。

 アイク達がこうしてついてこなければ、謎の魔物と間違えられたように、私は全力で七層まで走っていた筈だ。


「……」


 気付けば溜め息を吐いてしまいそうになる自分を律し、私は見事な変身をしているリッカに視線を向ける。

 すると、『これでいいんすよ』といった感じの視線が返ってきた。


 変身をしているリッカに、直接言葉で尋ねられないのが歯痒い。

 私が勇者パーティーと行動を共にすることに、一体どんなメリットがあるのだろうか?


 ……まあいいでしょう。

 リッカ、しばらくは貴方の思惑に乗ってあげます。



 ◆



 アイク達と共に迷宮を進んでいると、大きなクモの魔物が数匹の群れで現れた。

 これが彼らとこなす、初の戦闘になる。


「そんじゃあお手並み拝見するぜ、メイドさんよぉ!」


「はい。足を引っ張らぬように頑張ります」


 ラッシュの言葉に、私はそう答えた。

 このクモの魔物が相手なら、私の実力を見せるのには丁度良いだろう。


 けれども、私も一応女子だ。

 多くの足を持つクモのような魔物の群れは、正直見ているだけでも気持ち悪かった。


 それから私は勇者パーティーの面々と共に、その魔物との戦闘を繰り広げた。

 襲い掛かってくるクモの数は多かったが、私は積極的に魔術を使って倒していく。


 主に私が使ったのは、氷の刃を風に乗せて射出する魔術だ。

 かなり使い勝手が良い魔術なので、私はこれを戦闘時には頻繁に使用する。


 今回もその氷と風を組み合わせた魔術で、次々とクモの魔物を打ち抜いていった。

 そして、難なくこの群れを倒すことが出来た。


「アンタ、予想以上の腕前だな」


 ラッシュが感心したように、ヒュウと口笛を鳴らす。

 すると、アイクも横から驚いた様子で口にした。


「どんな仕組みかは分からないけど、杖無しでここまで連続して魔術を行使出来るだなんてな……」


 そんな彼の言葉に続いて、ティアナが興奮した様子で称賛してきた。


「セレンさん、凄いです! ここまでの魔術を全て無詠唱で使いこなすだなんて、まるで夢でも見てるみたいです!」


 その持ち上げ方は、流石に大袈裟過ぎます。

 私は彼女に向かって言った。


「ティアナ様も無詠唱ですし、そこまで褒められるようなことではないと思いますが?」


 実際ティアナも戦闘中は、ほぼ無詠唱で炎の攻撃魔術を放っていた。

 そう考えると、彼女も流石勇者パーティーの一員というだけはある実力の持ち主だ。

 しかし私のその言葉に、ティアナは首を横に振った。


「私が無詠唱なのは、多くの魔道具の力を借りてるだけです。でも、セレンはそれを道具に頼らず普通にやってのけている。こんなに凄い魔術を使える人、私生まれて初めて見ました!」


「そ、そうですか……」


 目を子供のように輝かせたティアナが、やけにグイグイくる。

 そんな彼女の押しに、私は思わずたじろいだ。


「今の戦いで、アンタが相当な魔術師だってのは分かったぜ。でもよ、その腰の剣は抜かないのか?」


 そう言って、ラッシュは私の腰を指差した。


「俺は結構剣に詳しいつもりだ。柄の部分から見るに、それはただの剣じゃなさそうだが?」


 太陽剣の存在を見抜くとは、中々の洞察力だ。

 そんな彼に向かって、私は言った。


「これは万が一魔力が尽きた時の為、主人が持たせてくれた剣です。余程のことがない限り、皆様にはお見せする機会は無いかと。それにラッシュ様が期待される程、私に剣の腕はありませんよ?」


 地下迷宮内では、この聖剣の力は出来る限り使わないと決めている。

 それに太陽剣を持っていることが彼らに露見するのは、これまで以上に面倒なことになる予感しかなかった。


 そんな私の発言に、ティアナが納得した様子で口を開く。


「そうですよね。魔術も剣術も一流なんて、アイクの他にいるとは思えませんし」


「確かに俺はどちらもそれなりに使えるけど、魔術に関してはセレンさん程じゃないよ……」


 ティアナの台詞に、アイクはそう訂正した。

 なるほど。

 勇者というだけあって、彼は剣も魔術も一流のようだ。


 そんな話をしながらも、私達は迷宮を進む。

 そして、五層から六層へ続く階段を降りていった。

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