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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:56 アイクの事情

 トワリアル地下迷宮の五層目を探索していた私の前に、突然勇者パーティーの面々が現れた。


「これはどういうことですか?」


 状況が飲み込めず、私は彼らに尋ねる。

 するとパーティーを代表して、勇者であるアイクが前に出てきた。

 そして彼は私に向かって、丁寧に頭を下げる。


「魔物と間違えて攻撃してしまって、本当に申し訳ありませんでした。完全に俺達の落ち度です」


 アイクの謝罪に、私はキッパリと言葉を返した。


「頭を上げて下さい。別に怪我を負ったというわけでもないので、そこまで謝罪されなくても大丈夫です」


「……ありがとうございます」


 ばつが悪そうにしながらも、私の言葉にアイクはその頭を上げた。

 やはりこの青年の性格は、私の予想通りだ。


 誠実で真面目。

 その性格は、彼の持つ雰囲気からも感じられる。


 勇者という力を持った立場でありながらも、アイクからは驕った様子は一切見られない。

 丁寧に謝罪するのは人として当たり前ではあるが、英雄らしいかと問われれば少し疑問である。


 突然大きな力を持ってしまった一般人。

 そんな印象を、私は目の前の青年に抱いた。


「それで勇者パーティーである皆様が、何故私に攻撃を仕掛けたのか、その事情を詳しく伺ってもよろしいですか?」


 私がそう口を開くと、アイクはボソッと言った。


「流石に俺達のことは知っていますよね……」


「当然です。皆様は有名人ですから、以前ギルドでもお見掛けしたことがありますし」


 私の言葉に、アイクは眉を寄せた。


「以前ギルドで? そう言えば、そのメイド服はあの時の……」


 何やらブツブツと口にするアイク。

 そんな彼に私は尋ねる。


「このメイド服がどうかしました?」


「……いえ、何でもありません。それで事情についてですけど、俺達が迷惑を掛けたのは間違い無いですし、この場で全てお話させて下さい」


 そう言って、アイクはその事情とやらを話し始めた。

 勇者パーティーがこの五層にいた理由。


 それは冒険者ギルドからのとある依頼であった。

 最近地下迷宮内で、冒険者達が謎の魔物を目撃者している。


 その魔物の特徴は、ヒラヒラした人の女性のような姿で、迷宮の通路を物凄いスピードで移動していると言うものだった。

 これは私がギルドの女性職員から聞いていた噂と同じである。


 そんな謎の魔物の調査を、アイク達は冒険者ギルドから直接依頼された。

 そして比較的目撃証言の多かったこの五層目で、彼らはこうして魔物が現れるのを待ち構えていたということだそうだ。


「まさか魔物の正体が、メイド服を着た女性だとは思いませんでしたが……」


 そう口にしたアイクに、私は言った。


「私としては、何故魔物だと思われているのかが不思議でした」


 女性に似た魔物という時点で、何故人間ではないという発想が先に出てくるのか。

 私からしてみれば、そっちの方が不思議だった。


「いやいや、迷宮内をあんな速度で走ってるメイドなんて、誰だって同じ人間だとは思わねぇよ……」


 呆れた様子で、アイクの仲間である茶髪の男が肩を竦めた。

 あんな速度と言われても、私としてはそこまで速く走っていたつもりは無いのですが……。


「とにかく事情は分かりました。それでこれから私はどうすれば?」


 謎の魔物の正体が実は私でした。

 それですんなりとこの話が終わるような感じではない。


「取り敢えず、お名前を伺っても?」


 アイクの問いに、私は頷いた。


「私はセレンと言います」


「セレンさんですね。メイド服を着てるみたいですけど、冒険者登録はしているんですか?」


「はい。まだ駆け出しですが」


 服のポケットから胴色のプレートを取り出し、私はそれを彼らに見せた。


「駆け出しでもう五層かよ……」


「凄いですね……」


 茶髪の男と杖を手にした帝国の姫が、そう呟いた。

 私のプレートを確認し、アイクは言う。


「今回の件は直接ギルドから受けた依頼なので、謎の魔物の正体がセレンさんだったことは包み隠さず報告することになります」


「そうですか。私としては悪気があったわけではありませんが、そう言う話であれば仕方ないですね」


 アイク達は、冒険者ギルドから直接依頼を受けるという形で行動していた。

 謎の魔物の正体が分かったとなれば、それを依頼主に報告するのは当然だろう。


「セレンさんの処遇がどうなるのかは、ギルド側の判断に委ねられます。冒険者ギルドとしても、セレンさんをそこまで悪いようには扱わないとは思いますが……」


 アイクはそう説明した。

 彼の言う通りならば、私の処遇はそこまで悪いようにはならないとのことだ。


 実際私を勝手に魔物だと勘違いしたのは、あちら側の落ち度である。

 私が冒険者などに危害を加えた事実はない。


「大体分かりました。私は後でギルドに寄ればいいのですね?」


「はい。俺達が報告を上げておくので、そうしてくれると助かります」


「分かりました。では、私はこれで失礼します」


 アイクにペコリとお辞儀をして、私は踵を返した。

 そして、更に迷宮の奥へと進もうと足を進める。


「待って下さい!」


 すると、そんな私をアイクが声を上げて呼び止めた。

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