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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:51 魔石の精製

 私とネルファ、そしてラムだけでの生活が始まって早くも二週間が経っていた。


「ノルン様、この容器は何処に片付ければいいのですか?」


「ん? それ? 適当に置いとけばいいわよ。それより、あっちの棚から魔石を幾つか取ってきて」


「分かりました」


「ラム、使い終わったこの魔法陣を掃除しておいて。もう使わないから」


 私の声に、ラムは「了解」と体を震わせる。

 二人が雑務を手伝ってくれてる間に、私は研究資料と睨めっこをしていた。


「ノルン様、魔石を持ってきました」


「ありがと」


 私はネルファから魔石を受け取る。


「その魔石をどうするのですか?」


 興味津々といった様子で尋ねてくる彼女に、私は答えた。


「勿論、魔法陣を描くのに使うのよ。粉末状にしてね」


 別に他の触媒でも魔法陣を機能させられるけど、多くの魔力を蓄積している魔石が一番効率がいい。

 色々な物で試したから分かる。


「でもこの魔石はまだ精製してないから、いきなり砕いて粉末になんてしないわ」


 私がそう言うと、ネルファは首を捻った。


「すみません。魔石の精製とは一体何なんですか?」


 あーそこから分からないのね。

 ネルファが私の実験とかを見る機会は少ないから、まだ何も知らないのだ。


「魔石って、物によって純度に違いがあるのは分かるわよね?」


「はい。私も冒険者の端くれをしていましたから。魔石の中でも、大きい物と取り分け色が澄んでいる物は高く売れました」


 魔物から取れる魔石は大小様々だ。

 価値としては、やはり大きい物が高い。

 そして、色が澄んでいる物も高い。


 ネルファの言うように、この二つによってその魔石の価値は変わるのだ。


「純度っていうのはね、魔石の中に蓄積されてる魔力の話なの。純度が高いと魔石は綺麗な色に光って、逆に低いと濁っていたり、くすんだ色をしているの」


「なるほど。そうだったのですか」


「貴方、冒険者をやっていたのに知らなかったの?」


「はい。今まで一度も気にしたことはありませんでしたから」


 相変わらずネルファの性格は大雑把ね。

 これまで魔石の色について、不思議に思ったりしなかったのかしら?


「それでノルン様、結局精製とは何なんですか?」


「精製ってのはね、その魔石の純度を上げることよ」


「そ、そんなことが可能なんですか?」


「ええ、可能だわ。そもそも純度が低いって言うのは、一つの魔石にバラバラの属性の魔力が混ざって含まれてる状態なのよ」


「ほう……。つまり純度が高い魔力は、魔石内に溜まった魔力の属性が均一というわけですね」


「その通りよ。そこまで分かれば話は簡単だわ。つまり属性がバラバラだって言うのなら、不必要な属性を取り除いてしまえばいい。それが出来れば、どんな魔石でも高い純度に変えられるわ」


「それが精製なる工程なのですね」


「そうよ。私が使う魔石の粉末は、高純度の魔石ばかりを使用しているわ。だから普通の魔石を精製して、高純度に変えてから粉末状にしているのよ」


「凄いですね……」


 ネルファが感嘆している。

 それはどういう意味での凄いなのか?

 まあ何でも良いけど。


「しかしノルン様、純度を上げるなんて簡単に出来るものなんですか?」


「え? 滅茶苦茶簡単だけど?」


「そ、そうなんですか……?」


 信じられないって顔だ。

 ならば実演してあげよう。

 私は先ほどネルファから受け取った魔石を見せる。


「この魔石だけど、御覧の通りよ。色は濁ってて、あんまり純度は高くないわね」


 拳くらいの大きさのこの魔石は、結構濁っていて全く綺麗ではない。

 純度が高い魔石は、加工した宝石みたいなのだ。


「それじゃあネルファ、見てなさいよ」

 そう言って私は、その魔石を両手で包み込んだ。

 一、二、三秒――。


「じゃーん! 出来たわ!」


「もう出来たんですか? 何だかこの前も似たことがあった気がしますが……」


 ネルファの言う前とは、魔石の内部に魔法陣を描いたあれね。

 確かに、あの時とやり方は似てるわね。


「ほら、確認してみなさい。さっきまでの魔石とは見違える程に綺麗でしょ?」


 私はポイっとネルファに魔石を放った。

 彼女はそれを手にし、茫然としている。


「……」


 ネルファは無言だった。

 ただ手元の精製した魔石を注視し続けている。


 魔石の色は澄んだ赤色。

 ルビーのように煌めいている。

 しかも、ガラスのように向こうが透けて見える程、一切の濁りが排除されていた。


「……これは夢ですか?」


「夢じゃないわよ。この程度のことで何を驚いているのよ」


 私が呆れたようにそう言うと、ネルファはようやく顔を上げた。


「ノルン様、これはどうやって身に付けた方法なんですか?」


 ネルファは私の肩にそっと両手を置き、目を大きく見開いた。

 え? 何? めっちゃ怖いんだけど?


「どうやって身に付けたなんて……。随分昔に魔石の純度を変えたいなって思って、それ専用の魔術を作っちゃったのよ」


「……」


「さっきから一体どうしたのよ」


 ネルファの様子が明らかにおかしい。

 本当に大丈夫かしら?

 すると、ネルファが言った。


「ノルン様、これは凄い発見です! それも魔術の歴史を変えるレベルの!」


 歴史を変えるなんて大袈裟な。

 確かに私の魔術がかなり進んでいるのは自覚してたけど、この程度でその評価はどうなのよ。


「流石に大袈裟だわ。だってこんなの三秒よ、三秒」


 私は傍にあった未精製の魔石の一つを手にとって、再び高純度のものに変化させた。

 ここまで三秒。

 ほんの一瞬だ。


 そんな私を見て、ネルファは少し間を空けて口にした。


「……ノルン様、高純度の魔石は魔術を研究する者にとって、喉から手が出る程欲しいと聞いたことがありますが、それは本当なんですか?」


「まあ、本当なんじゃない? 私は他の研究者を知らないから、正直どうなのかは分からないけど……。実際私は必要だったから、こうして高純度の魔石を作ってるわけだし」


 私の魔術研究において、高純度の魔石はごく当たり前のアイテムなのだ。

 これが無いとまともな実験も出来なくなる。


「ねえネルファ、貴方の知るような魔術師達って、勿論実験には高純度の魔石を使ってるのよね?」


 私がそう尋ねると、ネルファは首を横に振った。


「ノルン様、落ち着いて聞いて下さい。私はこれまで騎士や冒険者をやってきましたが、魔石を精製するなんて方法は一度足りとも聞いたことがありません」


「……え? それってどういうことよ?」


 魔石の精製が他の人には出来ない?

 いやいや、そんな筈はないだろう。


「高純度の魔石を自由に使える魔術師など、おそらくノルン様の他には誰もいないでしょう。先程も言いましたが、魔石の精製なんて方法はどんな魔術師にも真似は出来ません」


「え? マジ?」


「マジです」


 嘘でしょ……?

 まさかこの基本のような事さえも、世の中の魔術師が出来ていないなんて。


「何だか急に自分の才能が怖くなってきたわ……」


「全くです。何せたったの三秒で魔石を高純度に変えられるのなら、どんな魔石でも大きく価値を上げられる。簡単に大金持ちになれますよ!」


「その発想は無かったわね。けどお金なんて稼いでも、今の私に使い道なんて無いわよ」


「確かにそうですが……」


「まあ、お金で勇者召喚が出来るようになるのなら考えてもいいけどね」


 お金稼ぎなんて、引きこもりの私には多分無縁な事だろうけど。

 でも、ネルファの話はにわかに信じられないわね。


 魔石の精製が普通じゃないなんて、かなりショックだったわ。

 そんなことを考え、私は感慨深く呟いてしまう。


「やっぱり私の才能って罪深いわね……」


 ネルファも染々と頷いている。

 本当、困った才能よね。

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