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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:50 力見の水晶②

「『力見の水晶』だけど、これってかなりシンプルな構造をしているのよね」


「そうなんですか?」


 ネルファのその言葉に、私は答えた。


「ええそうよ。そもそもこの水晶玉って、一体何から作られているのか知ってる?」


「普通の水晶じゃないんですか?」


「違うわ。この水晶玉はね、あの魔石から出来ているのよ」


「えっ! そうだったんですか!?」


 どうやらネルファは知らなかったようである。

 そう。『力見の水晶』は、元々魔物から取れるあの魔石から出来ているのだ。


「まあそうは言っても、どんな魔物の魔石からでも作れるってわけじゃないんだけどね。確かこの水晶に加工する為には、最低Aランク以上の魔物から採れた魔石じゃないと駄目だそうよ」


「Aランクの魔物ですか……。一流の冒険者でも倒すのには苦労する魔物達ですね」


 魔物は冒険者ギルドなどで、危険度のランク分けがされている。

 Sランクが伝説の魔物として、その次のランクに指定されているのがAランクの魔物となるのだ。

 Aランクの魔物は、レッドワイバーンやグリフォンなどが有名である。

 そんな魔物達は倒すにしても中々骨が折れるが、そもそも遭遇率が非常に少ない。

 かなり稀少な存在と言えるだろう。


「『力見の水晶』はね、そんな魔物の魔石から出来ているの。だから、とても値が張るらしいのよ」


「なるほど。でも、そんな高価な『力見の水晶』をノルン様は……」


 ネルファは少し呆れた様子で、私に視線を送ってきた。

 そんな高価な物をガラクタの山に放置していたのは、確かに私の責任ではある。


「まあ別に、この水晶は特別な手入れを必要としないし、何も問題ない筈よ」


 私は悪びれることなくそう言った。

 使えればいい。

 ぶっちゃけ『力見の水晶』の価値は、私にとってはそんなに高くない。


「始めにも言ったけど、この『力見の水晶』って、本当にシンプルな構造なのよね。だから定期的な手入れが必要無いんだけど」


「それは具体的にどんな構造なのですか?」


 ネルファの質問に、私は答えた。


「魔物の魔石ってのは、魔力の結晶なのよ。だからこそ、より他の魔力を通しやすくなるわけね。私が魔法陣を描くのに使ってるのも、それが一番の理由よ」


 魔石は魔力の結晶だ。

 魔物の体内にある魔力が結晶化したものが、いわゆる魔石となるのである。


「魔石は魔力を通しやすい性質から、魔術を扱う為の触媒として様々な物に利用されてるわ。ネルファが一番イメージしやすそうな物と言えば、魔術師が持ってる杖ね」


 ネルファは冒険者をやっていたことがあるから、魔術師の持っている杖は想像しやすいだろう。

 まあ未だに杖なんて使ってる魔術師は、私にとっては三流も良いところだけどね。


 ネルファは思い出したかのように言った。


「言われてみれば、杖の先端には宝石のような物が付いていた気がします。あれは魔石だったんですね」


「そうよ。それでね、この『力見の水晶』みたいな魔道具は、魔石の内部に特定の魔法陣をあらかじめ描き込んでいるの。それで触媒としての役割も果たしつつ、触れた者の魔力に反応して魔術を発動しているわけね」


 魔道具というものは沢山の種類があるが、大抵が魔法陣と同じような仕組みである。

 魔法陣とは設計図のようなもの。


 即興で魔術を使うのとは違い、あらかじめ魔法陣を描いておくことで、難しい魔術だろうと扱えるようにしてしまうのだ。

 それと同じように、魔道具には魔法陣のようにあらかじめ特定の魔術が発動させられるような、そんな仕組みが備えられているのである。


 以上のようなことを、私はネルファに説明した。

 どうせ彼女のことだから、半分くらいしか理解して無さそうだけど。


「ノルン様、質問があります!」


「何かしら?」


「水晶の内部に魔法陣なんて描けるんですか?」


「ええ、描けるわよ。見せてあげましょうか?」


「ぜひ」


 ネルファがそう言ったので、私は研究に使っている魔石を一つ手に取った。

 それはとっくに精製してあったので、その純度は最高である。


 私はそんな魔石を片手に握り、瞼を閉じて集中した。

 はい、終わり。


「ほら出来たわよ。この魔石に魔力を通してみなさい」


 私が無造作に放った魔石を、ネルファはキャッチして怪訝な表情をした。


「本当に完成してるんですか? 一分も経ってませんよ?」


「そんなことはどうでもいいでしょ? とにかく魔力を通してみなさい」


「……分かりました」


 私の言葉にネルファは頷く。

 半信半疑な様子を見せながらも、彼女は手にした魔石に魔力を通した。

 すると、


「わっ、赤く光りました!」


 ネルファの持つ魔石は、鮮やかな赤色の光を放っていた。

 それは『力見の水晶』に触れた時と同じ反応だ。


「適当にやってみたんだけど、案外出来るものね。まあ魔石自体が小さいから、触れただけで反応させるのは難しかったみたいだけど」


 ぶっちゃけアドリブでやってみたけど、かなり上手くいった。

 描き込めたのは、魔力適正を判定する機能だけだけど。


「魔石の内部に魔法陣を描く方法って、単純に魔術だったんですね」


「そうよ。困ったら魔術が世界の基本でしょ?」


「まあそうですけど……。それにしてもこのスピードは凄すぎませんか?」


「ふふん。この程度の魔法陣なら朝飯前よ」


 ネルファの言葉に、私はそう鼻を高くした。

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