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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:49 力見の水晶

四話ほどノルン側のお話です。

※ノルン視点

 いつも通りの研究室で、ネルファは私に言った。


「ノルン様、セレンを地下迷宮に行かせたのはいいですが、冒険者登録をするためには『力見の水晶』に触れなければなりません。もしセレンの実力が(おおやけ)にされれば、大変なことになりますよ?」


 聞いた話によると、あのトワリアル地下迷宮へ入るには、必ず冒険者登録をしなければならないらしい。

 その際に、『力見の水晶』による能力の測定があるのだ。


「『力見の水晶』ね……。確か私の部屋にもあるわよ? ラム、ちょっと探してくれないかしら?」


 私がそうお願いすると、ラムはスライムらしく体を震わせた。

 多分、彼は「分かった」と言いたいのだろう。


「それでネルファ、貴方が心配する『力見の水晶』のことだけど、何も問題は無いわ」


「問題無いのですか?」


「ええ、とっくにその対策は済んでいるもの」


 私はネルファの疑問にそう答えた。

  『力見の水晶』が冒険者登録の時に使われることを、既に私は知っていたのだ。


「昔、リッカが冒険者登録したいって言ってきたことがあったのよ。その時にね、諜報を任せてるリッカの能力がバレるのは不味いってことで、私が急遽『力見の水晶』限定の偽装魔術を開発したってわけ」


「そうでしたか……。流石、ノルン様です」


 ネルファに褒められ、私はちょっと調子に乗った。


「でしょ? まあ今回もその魔術で乗り切れば、セレンも無事に冒険者登録出来る筈よ。きっと道中でリッカがその魔術を教えてるだろうから、私は何も心配してないわ」


 セレンのことだし、もし失敗してしまっても何とかするでしょ。

 私はそう楽観視していた。


「そう言えば、ネルファは私と会う前に冒険者をやってたのよね?」


「はい。少しの間だけですが、冒険者をやっていました」


 そう答えたネルファに、私は尋ねる。


「じゃあ、その時はどうしたの? 素直に『力見の水晶』に触れたりなんかしたら、貴方の『固有魔術』が知れ渡っちゃうじゃない」


 ネルファの持つ『聖剣化(ソード・リメイク)』は、正直チートなレベルの能力なのだ。

 そんな能力が世間に知れ渡ったりなんかしたら、各国が放っては置かないだろう。


「幸いにも私が冒険者の登録したのは、まだ師匠に修行を付けられてる時でしたので……。その時はまだ『固有魔術』を発現していなかったので、戦闘力と魔術適正のみしか分かりませんでした」


「そっか。それは幸運だったわね」


「まあそれが無くても、後で私は十分有名になってしまいましたので……」


「確かにそうだったわね。最近の貴方を見てると、そんなことも忘れそうになるわ」


 ネルファの持つ異名はとても有名だ。

 どれくらい有名かと言われると、その辺の子供でも知っているレベルで有名である。

 そんな彼女が私の部下になっているなんて、きっと世間の人達は知らないだろうけど。


「あら、ちゃんと水晶を見付けられたのね。よしよし、ラムは偉いわね」


 私がネルファと会話をしていると、ラムが『力見の水晶』を見付けてきてくれた。

 おそらく部屋にあるガラクタの山から探してきたのだろう。


 とても良い子だ。

 私はラムのスベスベな体を撫で、沢山褒めてあげた。


「ノルン様、『力見の水晶』で何をするつもりですか?」


「別に何かをするって程の考えはないわ。ちょうどこの水晶の話をしていたから、なんとなく探して貰っただけよ」


 ネルファとの話で、偶々『力見の水晶』を持っていたことを思い出しただけだ。

 別に深い意味は何もないし、これはただの気分的な行動である。


「この『力見の水晶』、しばらく使って無かったけど全く問題なさそうね」


 ざっと見た限りだが、水晶の機能は失われていない。

 問題なく力の測定が出来そうだ。


「折角だしネルファ、水晶に触ってみなさいよ」


「分かりました。ですが久し振りですね、こうして力を測られるのは」


 そう呟いて、ネルファは水晶に手を触れた。

 すると、たちまち水晶が強い光を放ち始めた。

 その光の色は、燃えるような真紅である。


「ネルファの魔術適正は『火』ね。まあ貴方のイメージ通りだわ」


 ネルファが持つ魔術適正は『火』のみである。

 彼女の髪色が赤なので、予想外な結果とはならなかった。


「それにしても、ネルファはやっぱり強いわね。光がかなり大きくて、とっても眩しいわ」


「昔測った時よりはかなり成長した自信はありましたが、ここまで光が強くなっているとは……」


 ネルファはそう驚いていた。

 『力見の水晶』の光には、二つの意味がある。


 一つは色合い。

 光る色やその種類によって、魔術適正が判別出来るのだ。

 ネルファの場合は赤色の光だったので、火属性だけが彼女の適正である。


 そして二つ目は、その光の大きさだ。

 それによって分かるのは、触れた者の現時点での実力だ。


 ネルファはそれがかなり大きかったので、相当な実力を持っていることが分かるだろう。

 普段はポンコツな彼女でも、伊達に私の護衛を務めてはいないのである。


 その力量を測り終えたところで、ネルファは私に言った。


「ところでノルン様は測定しないのですか?」


「私はしないのかって? 私の実力なんて、今更測る必要なんてないでしょ?」


「確かにそうですね」


 私の冗談めかした言葉に、ネルファは納得した様子でそう微笑んだのだった。

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