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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:46 能力測定

 私の目から見ても、姫様は非常識な存在だ。

 けれどそんな自分も他人からすれば、同じようなものだったのだと、ここに来て私は初めて思い知らされてしまった。

 あまりのショックに現実逃避をしていると、心配そうに対面の女性職員が尋ねてきた。


「あの……大丈夫ですか?」


「すみません。ちょっと立ち眩みをしたみたいです」


 そう誤魔化して、私は改めて書きかけの登録用紙に向き合う。

 そんな私に女性職員はこう言ってきた。


「メイン武器の箇所は、もうこの際適当に書いてしまっても大丈夫ですよ。そこまで扱う武器は重要ではありませんから」


「そうなのですか?」


「はい。途中で武器を変えたりしても、冒険者ギルドには特に申告する必要もないんです。魔術で戦うとしても、何か扱える武器があるのなら、武器の欄にはそれを書いておけばいいと思いますよ」


 武器……?

 そう言えば、この旅には聖剣を持ってきていた。

 あまりに道中使い道が無さすぎて、今はトランクと共に宿屋に置き去りにしてある。

 それを思い出した私は、女性職員に言った。


「一応剣を扱えますので、教えていただいた通りにこの欄には剣と書くことにします」


 私はスラスラとペンを走らせ、しっかり『剣』と記入した。

 メイン武器の欄はこれで埋まった。

 しかし、この次の箇所も問題なのだ。


「質問ですが、冒険者としての役職にはどんなものがあるんですか?」


 私の言葉に、女性職員は答えた。


「戦闘を行う役職なら、『前衛』や『後衛』と書くだけで結構ですよ。でも冒険者の役職には種類が沢山あって、『斥候』や『運び屋』といった積極的に戦わない役割もあるんです。つまりこの役職の欄は、パーティーを組むときの参考にする為にあるんですよ」


「なるほど。色んな役職もあるんですね」


 私は納得した。

 ようは冒険者のパーティーでの役割ということだ。


「となると、私の役職は『メイド』となるわけですね?」


「……」


 女性職員からの冷たい視線が痛い。

 私は何か変なことでも言っただろうか?

 少し間を空けて、彼女は冷静に言った。


「役職に『メイド』なんてものはありませんよ……。魔術や剣が扱えるなら、普通に『前衛』か『後衛』のどちらかを記入すればいいと思います」


「それもそうですね」


 私はそう頷いて、役職の欄に『後衛』と記入した。

 メイドと書けなかったのは名残惜しいが、しょうがないと割り切ろう。


 そもそもこれは、他人とパーティーを組むときの参考にするのが目的の欄だ。

 一人で地下迷宮の調査をする私には、あまり重要ではない箇所である。


「どうやら必須の記入欄は全て埋まったようですね。それでは、ええと……セレンさん、こちらへどうぞ」


 女性職員は私から用紙を受け取り、別の窓口へ案内した。

 ちなみに彼女が私の名前を呼べたのは、単純に用紙の名前の欄を見たからだ。


「これは……『力見(ちからみ)の水晶』ですね」


 別の窓口に案内された私を出迎えたのは、台座に乗った透き通る水晶玉だった。

『力見の水晶』と呼ばれるそれは、有名な魔道具である。


 女性職員は言った。


「それでは今から能力測定をさせて貰います。その結果を登録用紙に記入すれば、冒険者ギルドへの登録申請が完了となります」


「分かりました」


 彼女の説明に、私は頷いた。


「それでは水晶玉に軽く触れて下さい」


「はい」


 私は言われた通りに、『力見の水晶』へ軽く片手を触れさせた。

 すると、水晶玉が眩い光を放ち始める。


『力見の水晶』という魔道具は、触れた者の持つ能力を測定する機能を持っている。

 測れる能力は三つ。


 一つ目は、触れた者の現時点での戦闘力。

 これは水晶が放つ光の大きさで判断する。

 勿論光が大きい方がより戦闘力があるということになるが、具体的な数値が詳細に出るわけではないので、あくまで参考程度の情報だ。


 二つ目は、触れた者の持つ魔術適正。

 これは水晶の放つ光の色で判断する。

 その色は六つある魔術の属性のいずれかに該当し、同時に幾つもの光を放つケースもある。


 三つ目は、触れた者の『固有魔術』。

 その者が持つ『固有魔術』が、水晶に文字として浮かび上がるのだ。

 しかし、これは『固有魔術』を発現している者だけで、発現していない者はそもそも文字が浮かび上がらない。


 リッカの言っていた通り、冒険者登録ではこの

『力見の水晶』を用いて能力を測定していた。

 それをあらかじめ知っていれば、何とでも誤魔化せる。


「どうやらセレンさんの戦闘力は、駆け出し冒険者としてはかなり高い方ですね」


 駆け出し冒険者としては高い方。

 そんな評価をして、女性職員は用紙にそれを記入していく。

 次に話は私の魔術適正に移った。


「セレンさんの持つ魔術適正は、『水』と『風』の二つですね。実は二つも魔術適正持っている人は、結構珍しいんですよ」


「そうなんですか?」


「はい。長い間ここに勤めてますけど、殆どの冒険者の持つ魔術適正は一つですからね」


 水晶の光は青と緑に輝いている。

 それから見て取れるのは、私が『水』と『風』の魔術適正を持っているということだ。


 女性職員が言うには、二つも適正を持っている人はそこそこ珍しいらしい。

 大抵の人が持つ適正は、基本的に一つだけのようだ。


 女性職員は測定出来た私の魔術適正を、慣れた手付きで用紙に書き加えていく。

 そして思い出したかのように、女性職員は口を開いた。


「あっ、でも、この前勇者様の魔術適正を見ちゃったんですけど、何と六属性全部の適正を持っていたんですよ! 本当、勇者様って凄いですよね!」


「は、はぁ……」


 突然興奮した様子で口にした彼女に、私は曖昧な返事をしてしまった。

 顧客の情報をこんなにペラペラと喋っていいのでしょうか?

 そんなことを思った私だったが、彼女の興奮はそれだけ全ての属性を持つ人間がいないということの表れだろう。


 そう言えば、うちの姫様はどれだけ魔術適正を持っていましたっけ?

 確か全属性持ってた気がしますけど……。


「すみません、セレンさん……」


「どうしました?」


 姫様のことを考えていた私は、女性職員の言葉で我に返った。

 何かあったのだろうか?


「水晶が表示したセレンさんの『固有魔術』なんですが、文字がグチャグチャで全く読めなくて……。こんなことは初めてなんですが、本当に申し訳ありません……」


 心底申し訳なさそうに、そう口にした女性職員。

 彼女の認識は正しい。

 水晶に表示された私の『固有魔術』。

 それは『ヅaヹ:L/※』――と意味をなさないグチャグチャの文字で表示されていた。

セレンの固有魔術ですが、文字化けしているという設定です。

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