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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:45 使用武器・役職

 冒険者登録へギルドに来たものの、私は登録用紙にある使用武器・役職の欄で躓いていた。

 悩んでいても仕方がないので、私は受付の女性職員に質問することにした。


「すいません」


「はい、何でしょう?」


「冒険者登録の書類で、少しお聞きしたい箇所がありまして……」


 そう言って、私は女性職員の前に書きかけの登録用紙を差し出した。

 そして私は、まだ記入していないその空欄を指差す。


「この使用武器・役職という欄はどのようなことを書けばいいんでしょうか? 実は冒険者という職業に馴染みが無く、いまいち想像が出来なかったもので……」


 私がそう口にすると、女性職員は親切に教えてくれた。


「使用武器って言うのは、単純に戦闘時に使うメイン武器の事ですね。役職というのは、パーティーにおける自分の役割のことを言います」


 使用武器に関しては大体想像通りだった。

 だが私にとって分からなかったのは、もう一方の役職の方だ。

 説明を聞いた限り、これはパーティーにおける自分の役目を言い表したもののようである。


 私が納得していると、女性職員が口を開いた。


「このメイン武器欄の記入に関しては、剣だったり、槍だったり、得意な武器は人それぞれですので、自由に書いて構いませんよ」


 彼女がそう教えてくれたので、私は軽く周囲を見回した。

 そして、ギルド内にいる冒険者達の装備品を確認する。


 その女性職員の言う通り、持っている武器は人それぞれだ。

 全体的に剣を腰に下げた人が多いが、槍や棍棒、杖などを持つ人もちらほらいる。


 しかしそんな彼らと違って、今の私が身に付けている装備はというと、この愛用のメイド服だけだった。

 流石にメイド服はメイン武器には入りませんよね……?


「戦闘時に武器を使わない場合、どのように記入すればいいのですか?」


 私がそう質問すると、女性職員は不思議そうに首を傾げた。


「武器を持たない……? もしかして、何らかの武術を習得なさってるんですか?」


「いえそういうわけではなく、私は魔術が扱えるので魔物と戦闘となった際はそれで戦おうかと」


 私がそう言うと、彼女は答えた。


「魔術で戦うなら、メイン武器は杖ということになりますね」


「……?」


 私があからさまに分からないといった表情を作ると、女性職員は再び同じ事を言ってきた。


「魔術師なら杖は必須ですよね? ですから、メイン武器の欄は杖と記入すれば結構ですよ」


 魔術師なら杖が必須?

 私は一度も杖を使ったことはないのですが……。

 私のよく知る姫様もネルファも、杖で魔術を使っているところなど一度も見たことがない。


「すみません。つかぬことを伺いますが、魔術の使用には杖が必要なんですか?」


 私がそう質問すると、彼女は怪訝そうな顔を作りつつも教えてくれた。


「何を言っているんですか。どんな一流の魔術師だって、触媒無しでは効率が悪すぎて連続して魔術は使えませんよ」


「そうなのですか……?」


「そうですよ。ほら、他の冒険者の方達も魔術師なら必ず杖を手にしてますし」


 女性職員の向けた視線の先には、確かに杖を持った魔術師らしき女性冒険者がいた。

 その人以外にも、ギルド内で杖を手にしている者はそこそこいる。


 女性職員は触発が無いと、まともに魔術を使えないと言っていた。

 魔術の触発。

 それが一体何なのかは、当然私も理解している。


 触発とは魔術を効率よく発動させる為に、魔術師が使用する物や道具のことである。

 一般的な触発で言うと、魔物から採れる魔石だろう。


 私がギルド内にいる魔術師の杖をチラリと見る。

 やはり杖の先端には、宝石のように磨かれた魔石が取り付けられていた。


 魔術が触媒無しではまともに撃てない。

 そんなことを女性職員が口にしていたが、それは本当のことなのだろうか?


 実際あの姫様もそれなりに規模の大きな魔術を使用する際は、その魔石を砕いた粉末で魔法陣を描いていた。

 しかし、それはあくまで規模の大きな魔術を扱う時の話である。


 ギルド内を見回しても、杖を持っている人は多い。

 魔物の戦闘をするだけなら、杖を使う方がよっぽど効率が悪そうだが……。


 もしかしたら今まで私は、魔術に関してかなり大きな誤解をしていたのではないだろか?

 そう考え込んでいると、不安げに女性職員は言った。


「もしかして、本当に杖を使わないんですか?」


「ええ、まあ……」


 気まずくも私がそう答えると、女性職員は少し前のめりで尋ねてきた。


「もしかして何か魔道具を持っているのではありませんか? それが触媒となって、それで――」


「いえ、魔道具なるものも一切身に付けていませんが……」


「じゃ、じゃあ『固有魔術』……そうです! 『固有魔術』で魔物と戦うって意味だったんですね!」


「いえ、それも……」


 何だか必死に彼女が言ってくるが、残念ながらそれも違う。

 しかし、これは困った状況になってきた気がする。


 私が姫様に付きっきりで城の外に出なかったばかりに、まさか魔術を使う為には触媒が必要だという常識を知らなかった。

 しかし、これは仕方ない気もする。


 何故ならあの姫様は、魔術を行使する際に杖なんて使って無いからだ。

 しかもそれを当たり前のように行っている為、私は今まで何も疑問に思わなかった。


 私はそんな姫様から直々に魔術を教わったので、触媒を使用しないのも当然だ。

 ずっと勇者召喚の研究を手伝っていたので、その感覚が麻痺していたのだろう。


 そうでしたね。

 姫様は天才でした。


 遠い目で私は天井を仰いだ。


 ショックだった。

 まさか自分がここまで世間知らずだったとは……。


 いつの間にか私は、姫様の非常識ぶりに毒されてしまっていたのですね。

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