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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
五章 地下迷宮を攻略しよう!

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Retrace:42 宿屋

「シンプルっすけど、中々いい部屋っすね」


「そうですね。これなら不自由なく過ごせそうです」


 私とリッカは早速部屋に入り、内装を確認していた。

 彼女はここには泊まらないが、部屋の様子は気になったようだ。


「浴室もトイレもちゃんとしたのがあるみたいっすから、リサーチ通りって感じっすね。防犯面でも大丈夫そうなんで、何かあっても安心っすね」


「確かに道中泊まったどの宿よりも、ここの設備は良さそうです」


 ベッドもふかふかであり、部屋は隅々まで綺麗である。

 まさに完璧な宿選びだった。


「普段城で生活しているセレン姉ですから、宿は絶対に浴室とトイレは必要だと思ったんすよ。軽く調べたところ、この街の宿は大体どこも個室に浴室とトイレは付いてないみたいなんで」


「そうなんですか? それなら何故この部屋が空いてたんでしょう? 浴室とトイレ付きでこの値段なら、かなり人気になりそうですけど……」


 私の疑問に、リッカは答えた。


「それは簡単な理由っすよ。この宿が街の端にあるからっす。ここから地下迷宮までは、まあまあ距離があるっすからね」


 そう言えば、ここは街の入り口からはかなり近い宿だった。

 しかし、それだけが理由だとは思えない。

 すると、リッカは言葉を続けた。


「まあ他の理由を上げるとすれば、冒険者はセレン姉の想像よりもずっとズボラな性格なんすよ。大体の冒険者は、浴室もトイレも金を余分に払ってまで自分達の部屋には要らないって考えみたいなんで」


「なるほど。だからこの街は浴室やトイレ付きの宿が少ないのですね?」


 この街は冒険者が多い。

 そのニーズに応える為に、宿屋もそれに合わせたものが多くなるということだろう。


「それに冒険者達は、トワリアル地下迷宮で魔物達と戦ってますからね。迷宮から帰る時はクタクタなんで、すぐに休める近場の宿が人気みたいっすよ」


「確かにそれは納得です。しかし冒険者というのは、私とはかなり価値観が違う人達のようですね」


 今まで姫様に付きっきりで城の外に出たことのない私には、まるで別世界のことのように思えてしまう。

 しかし、これから私はその冒険者の真似事をしなければいけないのだ。


「まあメイドと冒険者は、全然違う職種っすからね」


 そう言って、リッカは笑っていた。


「それでリッカ、貴方はこれからどうするんですか? ここからは私と共に行動出来ないんですよね?」


「そうっすね。一応セレン姉をこの宿に案内し終えたら、私は別行動を取るつもりだったんで」


 ちょっとだけ、リッカは寂しそうな顔をした。

 それは私も同じである。

 ここまでの彼女との二人旅は、中々に楽しかったのだ。


「ところで、リッカ。道中あえて聞きませんでしたが、貴方がわざわざこの街を訪れなければならなかった用事とは、一体何なのですか?」


「……やっぱり気になるっすよね。まあ言い辛かっただけで、別に隠してたつもりはないんすけど」


 そう前置きをして、リッカは続きを口にした。


「私がこの街に来た理由は、勇者アイクとその仲間の動向を直接監視するためっす」


 リッカのその発言に、私は思わず聞き返した。


「勇者アイクの監視? まさかあの帝国の選んだという勇者が、このフラミアに来ているんですか?」


「そうっすよ」


 頷いたリッカ。

 彼女は続けて口を開く。


「彼らがこの街を訪れた理由は、単純にトワリアル地下迷宮に潜るためっす。どうやら腕試しのつもりみたいっすけど」


 驚いた。

 まさかこの街に、あの帝国の勇者とその仲間がいるだなんて。


「結局貴方の口にしていた用事とは、その勇者アイクの監視だったのですね」


「そうっす。『勇者の動向を出来るだけ監視しろ』――って姫さんの命令っすからね」


 確かに前、姫様はリッカに勇者の動向に目を光らせておくように言っていた。

 そして姫様にそう進言したのは、何を隠そう私自身だ。


 姫様はそもそも帝国の勇者には興味が薄いようだったが、仮にも勇者の称号を持つ者だ。

 我々の立場を考えれば、彼の存在は軽視することは出来ないだろう。


「ですが、まさか貴方自身がわざわざ勇者を監視しているとは思いませんでした」


 リッカの仕事量は膨大だ。

 各国の情報をたった一人で集めているのだから。

 そんな彼女が、まさか勇者アイクの動向を自ら追っているとは思ってもみなかった。


「まあ成り行きっすよ。姫さんの命令以外にも、あの勇者の周りにはちょっと気になることがあるっすからね」


 そう答えたリッカには、彼女なりの考えがあるようだ。

 しかし一つだけ、私には聞かなければならないことがある。


「そもそもリッカ、何故私にこの街に勇者が来ていることを告げなかったのですか?」


「……怒ってるんすか?」


「怒ってはいません。ただ、何故だと尋ねているのです」


 私の質問に、リッカは観念したように答えた。

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