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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
四章 地下迷宮を調査しよう!

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Retrace:38 ネルファ、メイドになる

 リッカとセレンが旅立った次の日。

 私が部屋でゴロゴロしてると、突然ネルファがやってきた。


「どうですか、ノルン様! この私のメイド姿は!」


 私の前に現れたネルファは、着ているメイド服をこれ見よがしに見せつけてきた。

 それはフリフリでミニスカートなメイド服である。


 普段は女騎士って感じで武装してるから、ネルファのメイド姿って違和感しかない。

 それに今の彼女の髪型は、いつものポニーテールじゃなくてサイドテールだ。


 うーん、無理してる感が凄いわね……。

 彼女のメイド姿は余りにも見慣れ無さすぎて、何だか体がムズムズする。

 でも鍛えているだけあって彼女のスタイルは抜群だし、素材としては悪くないのよね。


「うーん……」


「どうしたのですか、ノルン様? もしや私のあまりのメイドっぷりに言葉を失って――」


「それはないわ」


 それはない。断じてない。

 私が黙って考えていたのは、そういうことではない。

 私はネルファに向けて口を開いた。


「私が言いたいのはね、ネルファ。今の貴方はメイドを致命的に間違えてるってことなのよ!」


「な、なっ……!」


 愕然とするネルファ。

 なんと言うか、彼女に今の姿は似合ってないわ。

 だって二十代の大人がフリフリのミニスカメイドって、何だか凄く可哀想な気分になるじゃない。


「ノルン様、私のどこが間違っているというのですか!?」


 涙目のネルファの前で、私は腕組みをした。


「間違っているのは、貴方の残念な脳味噌よ――と、そう言いたいとこだけど、可哀想だから教えてあげるわ。私のことは『ご主人様』と呼びなさい!!」


「は、はいっ! ご主人様!!」


「よろしい」


 私は傲然とそう告げて、再びネルファの姿を見直してみた。

 あのさぁ……。


「ネルファ、貴方ねぇ……。頭の上についてる筈のホワイトブリムが見当たらないけど、一体どうしたのよ?」


「あの、すいません……ホワイトブリムって何ですか?」


「はぁ……ネルファ、それ本気で言ってるの?」


 私は思わず溜め息を吐いた。

 正直私が今抱いている感情は、呆れを通り越して怒りに近い。

 私はネルファに言った。


「貴方ね、そんな安っぽい気持ちでメイドをやろうだなんて、私に対する侮辱と同じよ。いい? ホワイトブリムって言うのはね、メイドが頭に着けてるヘッドドレスの事よ! セレンだっていつも着けてたでしょ!?」


「そう言えば、すっかり忘れていました……。しかし、あれはホワイトブリムという名前だったんですね」


「そうよ。白いからホワイトブリムって言うらしいわ」


 仮にもメイドの姿になろうとするのなら、あらかじめ知っているべき知識である。

 百歩譲って名称を知らないのはいい。

 ただ、忘れていたというのは解せない。


「ネルファ、私はね、メイド姿とは服だけじゃなくホワイトブリムも揃ってこそだと考えているわ」


「は、はい……」


「だからこそ、今の貴方はメイド失格よ。でもね、感謝しなさい。私が直々にメイドのなんたるかを教えてあげるわ」


 髪を払い上げ、私はそう不敵に笑ったのだった。



 ◆



「どう? 見違えたでしょ?」


「……はい」


 ラムが頑張って運んできた姿鏡の前に立ち、ネルファは己の過ちを反省していた。


 今の彼女が着ているのは先程までのフリフリミニスカメイドではなく、セレンがいつも着衣している物と同じスタンダードなメイド服だ。


 黒を基調にした色合いに、エプロンとホワイトブリムの純白さがいい味を出している。

 ちなみにスカートは、足首までしっかりと隠れたロングである。


 やっぱりロングスカートでしょ?

 必要なのは奥ゆかしさと、奉仕の心を感じさせる(おもむき)よ。

 ミニスカの方が好きな人とか、絶対太腿とかガーターベルトしか興味ないでしょ。


「それにしても、私の見立てに間違いなかったわね。サイドテールなんてあざとい髪型、ネルファには必要無かったのよ」


「あ、あざとい……。実は私もそう思っていました……」


 何やらダメージを受けた様子で、ネルファが俯く。

 そんな彼女の髪型は、元のポニーテールに戻しておいた。


 ネルファはまあまあ背も高いし、スタイルが良いから普段通りの方が絶対にいい。

 やはり赤髪ポニーテールこそが、彼女のアイデンティティーだろう。


「しかし、私も中々の腕ね……」


 私のプロデュースは結構イケテると思う。

 実際今のネルファは、素晴らしい程にメイドさんだ。


「ネルファ、お願いがあるの。私の前で一回くるって回って頂戴」


「ま、回ればいいのですか?」


 私の突然の要求に戸惑いながらも、ネルファはくるりとその場で一回転した。

 回転する体の動きから少し遅れて、ひらりと靡くロングスカート。

 彼女の優雅な動きに、思わず私の胸に甘酸っぱさが拡がっていく。


「こ、これでよろしいですか、ご主人様……?」


 気恥ずかしそうに、ネルファはそう口にした。

 グッジョブだ。この上なく有意義な一瞬だった。


 初々しいメイドが回転するって、いいわよね?

 分からないかしら?


 けど、ネルファも滅茶苦茶可愛いじゃない!

 特に恥ずかしそうに頬を染めて、『ご主人様』ってのがグッドだ。


 セレンがやったら絶対に無表情だし。

 気が強そうなネルファだけど、こんな乙女な雰囲気も出せちゃうなんて知らなかったわ。


「ありがとう、ネルファ。貴方の頑張りのお陰で、とても有意義な時間を過ごせたわ」


「こ、こちらこそ、ありがとうございます……!」


 ネルファは頭をペコペコ下げる。


「それでまたお願いなんだけど、聞いて貰えるかしら?」


「はい、何でしょうか?」


「セレンがいない間、ネルファが私の世話をしてくれるんでしょ? だったら、ずっとそのメイド姿でいなさい」


 元々彼女から進んでメイドになりきり始めたのだ。

 このくらいは余裕だろう。


 私はネルファのメイド姿を改めて見て、思わず顔がにやけてしまうのだった。

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