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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
四章 地下迷宮を調査しよう!

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Retrace:35 晩餐

 私の部屋に長テーブルを置き、皆で食卓を囲んでいた。

 並べられた豪華な料理の数々。

 それらは全てセレンが一人で作ったものである。


 どれも美味しそうな料理ばかりで、何から手をつけようか迷っちゃう。

 まあどの料理でも美味しいのは間違いないんだけど。


 そんな事を思いながらも、なんだかんだで私は食事を開始した。

 リッカもネルファも各々食べ始めている。


 まず私は手近な位置にあったチキングリルに手を伸ばす。

 うん、美味しい!


「私、肉の中では鶏肉が一番好きだわ。豚も牛もいいけれど、やっぱり鶏肉の美味しさには敵わないわね」


 私がそう言うと、リッカも同意してくれた。


「分かるっす。このくどくないのがいいっすよね」


 彼女の言う通り、鶏肉はあっさりしていて脂身が少ない気がする。

 だから私は鶏肉派だ。


 パリッと香ばしく焼かれた鶏のモモ肉。

 それを口一杯に頬張り、私はそう確信していた。


 皮と肉を一緒に食べれば更に美味しい。

 塩加減も絶妙で、スパイスが良いアクセントを効かせている。


 鶏肉美味い!

 安定して美味い!


 すると、隣に座るネルファが言った。


「私は断然牛肉派ですね。やはりステーキの食べごたえはこちらが上でしょう!」


「へぇ~ネルファは牛肉派なのね」


 彼女がそんな感想を述べているので、私も試しに牛肉を食べてみよう。


 食べやすく一口サイズにカットされたサーロインステーキ。

 焼き加減はミディアム!


 私はそれをひょいっと口に入れ、味わうように咀嚼した。


 うまっ!

 なにこれ! なにこれ! なにこれ!


「――思い出した。やっぱり私、牛肉派だったわ」


「寝返るの早くないっすか!?」


「だって! だって! これ滅茶苦茶美味しいんだもん!」


 私がそう声を上げると、後ろで給仕に専念しているセレンが言った。


「今日は特別に、普段の牛肉より上のランクを使用しています」


「なるほど。だから美味しいのね。納得だわ」


 本当に美味しい牛肉には、ぶっちゃけ勝てない。

 だって食べた瞬間に舌の上から消えるのよ!?

 意味わからないわよね!?


 飲み込むまでもなく、口の中から風味と甘美な味わいだけを残して消えていく。

 どこか寂しさがあるけど、これがサーロインの美味しさなのよね。


 ちなみにネルファがガツガツ食べていたのは、赤身のステーキの方だった。

 確かに赤身なら食べごたえがあるわね。


「このステーキ、本当に美味しいわ。貴方も食べたらどう?」


「いえ、私は結構です。姫様方で美味しく頂いて貰えれば……」


 私の後ろに控えるセレンは、つれないことを言う。

 確かにメイドがご飯を一緒に食べるのは変な気もするけど、彼女だけ仲間外れな感じがするのはもっと嫌だ。


「セレン、これは貴方の為のパーティーでもあるのよ? そんな寂しいこと言ってないで、セレンも食べなさい」


 私は手近にある一口サイズのステーキをフォークで刺す。

 落とさぬように片手に受け皿を持ち、肉を丁寧にセレンの口まで運ぶ。


「はい、セレン。あーんして?」


「……失礼します」


 少し迷ったようだが、セレンは大人しく食べてくれた。


「どう? 美味しい?」


「美味しいです。とても」


「良かったわ! 作らせた甲斐があったわね!」


 私が笑顔でそう言うと、ネルファが必死になってしまった。


「ノルン様、私も! 私のお肉も食べて下さい!」


「はいはい。分かったわよ」


 必死なネルファをあしらいながらも、食事は続いた。

 やっぱり皆でご飯を食べるのは良いわね。


 昔の私のままであったのなら、これは絶対に味わえなかった幸せだ。

 私が幸福感を噛み締めていると、セレンがデザートを持ってきた。


「イチゴタルトね! 美味しそうだわ!」


 デザートは真っ赤なイチゴをふんだんに使ったタルトだった。


「これはリッカがお土産に持ち帰ってきたイチゴを使っています」


「そうなの?」


「流石に手ぶらで帰るのはどうかと思ったので、道中に寄った街で特産物だったイチゴを買ってきたんすよ」


 どうやらリッカは私と会う前に、セレンにそれを渡しておいたようだ。


「とりわけ高級なイチゴを買ってきてくれたようなので、いつも以上に腕によりをかけて作らせて頂きました」


 セレンの言葉に、私は思わず喉を鳴らす。


「ゴクリ……」


 セレンの手によって人数分に切り分けられ、私の前にタルトが運ばれてくる。

 配慮なのか、皆よりも多くイチゴが乗っていた。


 シロップによって甘くコーティングされ、ぎっしりとタルト生地に敷き詰められたイチゴは、まるで磨かれたルビーのような輝きを放っている。

 こんなの絶対美味しいに決まってるじゃない。


「……」


 私は恐る恐る手を伸ばした。

 そして、一口だけ食べる。


 サクリと優しい音がして、続けてイチゴの味が全身を突き抜けた。

 イチゴの持つ甘酸っぱさと、シロップの絶妙なハーモニー。


 くどくない。

 寧ろ、爽やかさだけがそこにはあった。


 こ、こんなの……耐えられないっ!


 私の着衣が弾け飛び、一糸纏わぬ姿で私は空を駆け巡る。

 そんな幻を見た気がした。


「滅茶苦茶美味しいわ。やっぱりセレンは料理が上手ね……」


「ありがとうございます」


 私の言葉に、セレンは満足そうに礼を言った。

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