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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
三章 部屋を掃除しよう!

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幕間:8 勇者アイク

 俺は英雄剣・カリバーンの柄を強く握った。

 瞬間、全身に雷が落ちたかのような衝撃が走る。

 頭の中に巡るのは、かつてこの剣を振るってきた人達の断片的な記憶だった。


 これは聖剣から流れ込んでいるのか……!?

 その情報量に目が回りそうだ。


『何故、汝は力を求める?』


 聖剣が頭の中に直接語りかけてきた。

 気を抜けば呑み込まれそうなその声音に、俺は耐えるように思考する。


 何故、俺が力を求めるのか?


 つい数年前まで、俺は何一つ義務なんて負ってなかった。

 ただ自分の思うままに、普通に生きてきただけだった。


 でも、あっという間に勇者の称号を得て、世界を救う覚悟も曖昧なままにここまで来てしまった。

 けれど、勇者となった俺には大切な人が出来た。


 ティアナ。

 ふと彼女の顔が脳裏に浮かんだ。


 俺はティアナを大切だと思っている。

 それは彼女のことを好きだという感情だ。


 何故、力を求めるのか?

 昔の俺にはその答えは無かった。

 けれど、今はある。


(俺は大切な人を――ティアナを守りたい。だから、彼女を守る為に力が欲しい!)


 そして、彼女が笑って暮らせる世界にするためにも――。


(俺は! 俺は世界を救いたいんだ!!)


 世界を救う。

 俺が救う!


(だから、俺に力を貸してくれ! 英雄剣・カリバーン!!)


『良かろう。汝の願い、このカリバーンが聞き入れた。その命果てるまで、我が力を振るい続けるがいい』


 その言葉が頭の中に響くと同時に、俺は聖剣を引き抜いていた。


「抜け……た?」


 信じられない気持ちで、俺は手に輝く剣を見る。

 確かに聖剣は俺の手の中に収まっていた。


「やりました! やりましたよ、アイク!」


 濡れることなんて眼中にないのか、ティアナが一目散に俺のもとまで駆けてくる。

 そして、彼女は嬉しそうに俺に抱き着いてきた。


「……」


 ティアナに抱き着かれながら、俺は呆然とカリバーンに目をやった。

 まさか本当に俺が選ばれるなんてな……。


 手にした聖剣はずっしりと重い。

 実感が遅れてやってきた。


「これでアイクは聖剣にも勇者として認められたってことですよね!」


 ティアナは嬉しそうにそう言った。

 そんな彼女の笑顔を前に、ようやく達成感が湧いてくる。


「ははっ……マジか。まさか本当に英雄剣に認められるなんてな……」


 ラッシュが呆然としている。

 そんな彼の横で、ロメウ公王が口にする。


「英雄剣・カリバーンが認める程の人物ということなら、アイク殿は異世界から召喚された伝説の勇者達にも匹敵する実力を持っているということ。本当に、この世界を終わりから救えるかもしれませんな」



 ◆



 カリバーンを手に入れ、俺達は再び元の部屋に戻っていた。


「アイク殿、我が国の宝を貴方に託します。是非、世界を救う為に役立てて下され」


「ロメウ公には感謝しかありません。勇者として駆け出しの俺に、聖剣を手にするチャンスを与えて下さるなんて」


「ホッホッホッ、アイク殿は謙虚ですな。カリバーンに認められたのは、貴方自身の力でしかない。私が感謝される覚えはありませぬ」


 そう口にして、ロメウ公王は笑ってみせる。

 そして、そんな彼は改めて俺達に言った。


「それとアイク殿、これもぜひ魔女との戦いに持っていって下され」


「これはポーションですか?」


 ロメウ公王がテーブルの上に置いたのは、三つの高級そうな小瓶だった。

 見たところポーションに見えるけど……。


「これはただのポーションではありませぬ。この小瓶に入っているのは、あのエリクサーですので」


「エ、エリクサーですか!? あのどんな傷や病も治すという伝説の秘薬……!!」


 愕然と声を上げたのは、隣に座るティアナだった。

 彼女が驚くのも無理はない。

 エリクサーなどという薬は、今の時代では作ることの出来ない代物だったからだ。


 エリクサーなんて本当に存在していたのか……。

 もしこの小瓶の中身が本物なら、どれだけの価値があるのだろうか。


 ロメウ公王は語った。


「昔、我が国にはエリクサーの入った大きな瓶が二本だけ存在しました。しかし、一本は友好のために他国に渡り、残りの一本は我が国で宝として大切に保存することにしたのです。ですが何せ万能の回復薬ですから、歴代の王達が自らの傷や病を治す為に何度か使い、最早残りは小瓶三つ程になってしまったのです」


「つまりこれが最後のエリクサーなんですね。ですが、そんな貴重な物を頂いてしまって大丈夫なんですか?」


 俺がそう尋ねると、ロメウ公王は頷いた。


「カリバーンを抜いた時点で、トキリス公国は貴方を完全な勇者と認めたのです。アイク殿は我々の希望なのですから、残りのエリクサーを託すのは当然でしょう」


「本当にご助力感謝いたします。このエリクサーは必ずや魔女との戦いに役立ててみせます」


 俺は深く頭を下げ、差し出されたポーションを頂いた。

 大変に貴重なものだ。

 どんな傷を治すと言っても、これは三本しか存在しない薬である。


 使いどころは考えるようにしよう。

 俺はそう心に誓った。


「アイク殿、トキリス公国はこれからも勇者である貴方を全力でサポートすることを誓いますぞ。助けが必要なことがあれば、気軽に仰られるといい」


 そう言って、ロメウ公王はシワだらけの顔でニコリと笑った。


 話し合いは終わり、ロメウ公王は部屋を退出した。

 そして、この場には残ったのは俺を含めて四人だった。

 最初に口を開いたのは、これまで傍で控えていたアミィである。


「これから暫くの期間、アイク様は自由行動が認められていますが、どこか行きたい場所などは御座いますか?」


「その自由な期間はどれくらいなんだ?」


 俺がそう質問すると、アミィは答えた。


「次の指令が下るまでですので、ハッキリとは申し上げにくいのですが、最低一ヶ月は自由な期間が持てるかと」


「一ヶ月か……。それならこのトキリス公国にあるっていう迷宮に行ってみたいな」


 俺がそう呟くと、隣でティアナが言った。


「馬車の中で言っていたトワリアル地下迷宮ですね。アイクが手に入れた聖剣を早く使いこなす為にも、迷宮の魔物を相手にするのは持ってこいかもしれませんね」


 確かに英雄剣・カリバーンを早く手に馴染ませるには、迷宮で魔物相手に振るうのが一番な気がする。


 俺達がそんな事を話していると、それを横で聞いていたラッシュが口にした。


「トワリアル地下迷宮か。あそこなら俺が案内出来るぜ。けど、トワリアル地下迷宮があるのは、この国の端にあるフラミアって都市だ。ここからはまあまあ距離がある。もし本当に行くんなら早めに動かねえとな」


「ラッシュさんもついてきてくれるんですか?」


「お前がいいって言うのならな。つかアイク、俺をお前の仲間に入れてくれねぇか?」


「ラッシュさんを仲間に……?」


「ああ、俺は現役のSランク冒険者だ。実力的には申し分ないだろ?」


 確かに彼が仲間になってくれれば、かなりの戦力アップである。


「本当にいいんですか?」


 俺がそう尋ねると、ラッシュは答える。


「勿論だ。お前と一緒にいれば、これから面白いことが沢山見られそうだからな! そんでもって、【終わりの魔女】をぶっ殺す手伝いをしてやるよ!」


「分かりました。ラッシュさんが仲間になってくれれば、俺としても心強いです」


 俺がそう答えると、彼はドンと胸を叩いた。


「おうよ。存分に頼ってくれや。……それともう俺に敬語は使わなくていい。俺達は仲間になったんだからな」


「わかり……分かった。ラッシュ、これからよろしくな」


「よろしくだぜ、アイク」


 俺とラッシュはそう言葉を交わし、突き出した拳をぶつけあった。

 こうしてSランク冒険者、『雷迅』のラッシュが俺達の仲間になった。

◆ラッシュ 20歳くらい?

・茶髪。前髪を上げている。

・ピアスやリングを付けていて、見た目的にはチャラい。

・『雷迅』の異名を持つSランク冒険者。

・七聖剣の一つ雷光剣・ティルファングを所持している。

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