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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
三章 部屋を掃除しよう!

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幕間:6 勇者アイク

※アイク視点

 トキリス公国。

 デール帝国からかなり離れたこの国の王宮で、俺とティアナは盛大な歓迎を受けていた。


「遠路はるばるよくぞ参られた、アイク殿、そしてティアナ殿。トキリス公国としても、国を上げて歓迎しますぞ!」


 柔和な笑みを浮かべて俺達を出迎えたのは、齢六十を越えるであろう老人だった。

 この老いた男性の名はロメウ。

 このトキリス公国において、公王の地位に就く人物だった。


 俺はこのロメウ公王とは初めて会ったのだが、想像していたようなイメージとは全く違っていた。

 そもそも帝国の人間しか知らない俺にとって、真っ先に思い浮かべる王と言えばあのゼウルス皇帝陛下だ。


 帝国の皇帝である陛下と比べるのは間違いかもしれないが、このロメウ公王はとても一国の主とは思えない。

 派手な衣装も身に付けてはおらず、印象としては優しげな何処にでもいる老人といった感じである。


「アイク殿とティアナ殿、公国としてはより熱烈な歓迎したいところですが、それは晩餐会での席でさせて頂くことにしましょう。何よりも今は、先に重要な話を済ませておくべきでしょうからな」


 ホッホッホッと笑い、ロメウ公王は俺達を宮殿内のとある部屋に案内した。


「それではお二方、この部屋で少し待っていて貰えますかな? お二人に会わせたい人物がおりまして、今その者を呼んで参りますので」


 ロメウ公王はそう告げて、立ち去っていった。

 彼に言われた通りに、俺達は部屋の中に入る。


 その部屋には大きなテーブルが一つ置かれており、いかにも会議室といった装いだ。

 そして部屋に通された俺達は、中で待っていた人物に驚かされた。


「アミィ、先に着いていたのか」


 俺は彼女の名を呼んだ。

 アミィ・オルブライトン少尉。

 帝国軍情報部に所属する彼女は、俺とティアナの旅のサポート役をしてくれている人物である。


「お久しぶりです、アイク様、ティアナ様。道中ご一緒出来ず、申し訳ありませんでした」


 アミィはそう言って、俺達に頭を下げた。

 見た目的には完全に子供なのに、これでも軍人なのだから驚きだ。


「アミィも忙しいんだし、それは仕方ないと思うけど……。でも、俺達の方が先に帝国を出た筈なのに、アミィの方が先に着いているなんてな」


「実はお二人を待たせてはいけないと思い、任務が終わり次第早馬を走らせました。かなり近道をしたので、思ったよりも早く着いてしまいましたが」


 アミィは淡々とそう説明した。

 早馬を走らせたって、どれだけ無茶をしたのだろうか。


「でもアミィさん、先に公国で待っているよりも、道中で私達と合流すれば良かったのでは?」


 ティアナがそう口にすると、アミィは俺達に向かって言った。


「私も最初はそう考えたのですが、お二人の邪魔をするのはいけないと思いまして」


「なっ……!」


 アミィのその一言に、俺は面を食らった。

 隣に立つティアナも顔が真っ赤だ。


 なんて事を言うんだ、アミィは……。

 まさか彼女が、そんな風に俺達をからかってくるとは思わなかった。


「……」


 チラリとティアナの様子を横目で伺うと、彼女も同じタイミングで俺を見ていた。

 目が合ってしまい、俺は反射的に顔を反らす。


 ああもう!

 アミィが変なことを言うから、ティアナの事を余計に意識してしまう。


 俺達の間に何とも言えない空気が流れる中、間が良いのか悪いのか部屋のドアが軽快にノックされる。

 そして、現れたのはロメウ公王と見知らぬ長身の男だった。


 一体誰だろうか?

 ロメウ公王の後ろから現れた男に、俺は思わず目を細めた。


 身なりは比較的カジュアルであり、腰に帯剣しているもののとても騎士には見えぬ風貌だ。

 歳は大体二十歳くらいだろうか?

 (たてがみ)のように茶色の前髪を立ち上げ、その下にある精悍な顔立ちは如何にも女性にモテそうな感じに整っている。

 そしてその男の持つ瞳は、猫科の動物を想起させるような鋭い眼光を持っていた。


 他に装備は身に付けていないようだが、一振りだけ剣を帯びていることからも、彼が武人であることは予想出来る。

 しかし、男は両耳に派手なピアスを付けており、多く指に指輪を嵌めていることからも、チャラいといった印象が俺の中で先行していた。


「へぇ~コイツが噂の勇者ってヤツか! パッと見ただのガキにしか見えねぇな!」


 ケラケラと挑発的な笑みを浮かべた男に対し、ティアナが毅然と口にした。


「失礼ですが、お名前を伺っても?」


「あぁ?」


 男が不機嫌そうに唸った瞬間、俺は強烈な悪寒に襲われる。

 これは殺気……!

 男は腰の剣に手を当て、俺達に敵意を向けていた。


 この男……強い!

 俺は思わずティアナを庇うように動いていた。


「へっ、今の殺気に反応するとは、中々やるじゃねーの。ガキと言っても伊達に勇者じゃないってことか」


 ヘラヘラとした態度を見せ、男の殺気が急激に薄れていく。

 どうやら彼は俺を試しただけだったようだ。

 そんな男に向かって、公王は咎めるように口を開いた。


「ラッシュ、戯れはその辺りにしておいてくれぬか? 後が(つか)えているのでな」


「へいへい。分かりましたよ、公王さん」


 ラッシュと呼ばれたその男は、物分かり良く公王の命令に従った。

 そして、俺達はロメウ公王に促され、椅子に座って彼の話を聞くことになった。


「まず勇者殿に紹介したい人物というのは、このラッシュという男なのです」


「ラッシュだ。さっきは試すような真似をして悪かったな」


 そう謝罪した彼の態度には、先程までの高慢さは見られない。

 別に演技をしていたわけでは無さそうだが、思っていることを素直に口に出来るタイプの人なのだろう。


「いえ、気にしてません」


 俺はそう口にして、ラッシュが差し出してきた手を取った。

 そして、がっちりと握手を交わす。


 手のひらの感触で分かったのだが、やはり彼は相当な剣の使い手みたいだ。

 抜いてはいなかったが、その腰の剣こそがラッシュの得物なのだろう。

 俺は彼の目を見て、率直に尋ねた。


「ラッシュさん、貴方は一体何者なんですか?」


 すると、ラッシュはニッと口角を上げて答えた。


「見ての通り、俺は冒険者さ。このトキリス公国を中心にソロで活動しているんだぜ」


 冒険者とはギルドの依頼を受け、主に魔物などを相手に戦うことを生業とする者である。

 ラッシュはそんな冒険者だったのか。


 すると、冷静な声音でアミィが口にした。


「『雷迅』のラッシュ。数少ないSランク冒険者の称号を最年少で獲得した者として、冒険者界隈では有名な方ですね」


「驚いたな。遠い帝国まで俺の名が知れているとは思って無かったぜ」


 そう言って、ラッシュはその顔に笑みを浮かべた。

 Sランク冒険者――世界でも両手の数しかいない、最高ランクの冒険者じゃないか。

 どおりで凄まじい殺気を出せるわけだ。


『雷迅』――とアミィはラッシュのことをそう呼んでいたが、それが彼に付けられた二つ名なのだろう。

 ラッシュの自己紹介が終わると、ロメウ公王が口を開いた。


「自己紹介が済んだようなので、そろそろ本題に入ってもよろしいですかな?」


「はい。よろしくお願いします」


 俺は頷きを返す。

 すると、ロメウ公王は口にした。


「それでは私から、アイク殿をこの国にお呼びした理由を話させて頂きましょう。アイク殿は何も聞かせれてはいないのですよね? 何故勇者である貴方が、わざわざこの遠い国まで足を運ばなくてはならなかったのかを――」


 突然トキリス公国に向かえと言われたのはいいが、俺はまだこの国で自分が何をするのかは聞いていない。

 どうやらティアナも何も知らないようなので、この国に連れてこられたのは相当重要な案件が関わっている。

 そう俺は推測していた。


 身を引き締めた俺に向かって、ロメウ公王は口を開いた。


「アイク殿を我が国にお呼びした理由は、この宮殿の地下にある七聖剣の一つ――英雄剣・カリバーンとの選定の儀をして頂くためです」

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