表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
三章 部屋を掃除しよう!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/122

Retrace:28 伝説の魔物

「これがアダマントガーゴイル……想像以上にデカイわね」


 目の前に現れた巨体に、私は感嘆の声を上げた。

 とにかく大きい。

 牙の生えたあの口とか、私を頭から丸飲み出来そうなくらいだ。


 実際に見て思ったのは、図鑑の絵よりも断然強そうだという感想だ。

 やはりリアルだと迫力が違う。


 これがアダマントガーゴイル。

 Sランク指定の伝説的魔物。

 深い緑色の光沢を持つ金属、アダマントで出来た身体を持ち、その姿は凶悪な悪魔そのものだ。


 頭からは闘牛のような二本の角が生え、(くちばし)のような口には鋭い牙が幾つも生えている。

 背中には蝙蝠のような翼を持ち、獅子のような手足には剣のような鉤爪があった。


 私が無防備な姿で召喚したガーゴイルを見上げていると、そこに鋭い鉤爪が降ってきた。

 しかし、その爪が私を引き裂くなんてことは無い。


「大丈夫ですか、ノルン様?」


 そう口にしたのは、私を抱き抱えたネルファだった。

 彼女はあの一瞬で私を抱え、ガーゴイルから距離を取ったのだ。


 ちなみに今の私は、いわゆるお姫様抱っこの状態である。

 そして、そんな私を抱えるネルファは、まさしく物語の中の王子様のようだった。


 ネルファ、超格好いいわ!

 凛々しい表情で「大丈夫か?」なんて囁かれたら、女の私でもクラっときちゃう。


 しかし、そんな私のときめきを邪魔するように、目の前のガーゴイルはその口を開いた。


『まさか我を人間ごときが召喚するとは……。だがこの我の眠りを妨げたことが、一体どういうことなのか貴様らは分かっているのだろうな?』


 しゃ、喋った……。

 石像の悪魔が古めかしい口調で喋ってる。


『数百年ぶりに目覚めたが、結局人間どもはどの時代も変わらぬということか……。実に愚かで矮小な生き物だ。我の手にかかれば、貴様らの命など塵に等しいと何故理解出来ぬのか……』


 随分と上から目線で、ガーゴイルはそんなことを言ってくる。

 伝説の魔物というだけあって、どうやら結構なお歳のようだ。


『おい、そこの人間どもよ。我を召喚出来たことは褒めてやろう。だが我は魔術の契約などで縛られることはない。たとえ召喚出来ようと、我を従魔に出来るとは思わぬことだ』


 いや別に、最初から従魔にするつもりはないんだけど。

 そんな私の内心とは裏腹に、ガーゴイルは叫びを上げた。


『我を召喚したことを不幸に思うがいい! 思い上がった人間どもよ! 我の眠りを邪魔したことを、その命をもって償え!』


 アダマントガーゴイルから放たれる殺気は、一般人なら即座に意識を失ってもおかしくはないレベルである。


「それではノルン様、後ろで下がっていて下さい」


 私を腕から地面に降ろし、ネルファはそう告げた。

 そして、彼女はガーゴイルに対峙するように歩いていく。

 赤髪のポニーテールを揺らしながら、彼女の背中が遠ざかる。


「頑張って、ネルファ……」


 両手を胸の前で組み、私は祈るように呟いた。

 まるで私が憧れの人の勇姿を見届けるヒロインになったみたい。


「姫様、危険ですからもう少し離れて下さい」


「分かったわ」


 庇うように前に立ったセレンに、私はそう言葉を返す。

 そして、私達はガーゴイルと対峙したネルファにその視線を向けた。


『ほう、一人か……。随分と舐められたものだな。たとえ三人がかりだろうと、我の力の前では無力だというのに……』


 落胆した様子のガーゴイルに、ネルファは言った。


「分かっていないようだな。お前程度の魔物にノルン様が直接手を下すわけがないだろう? 私一人で十分だと、ノルン様はそう判断されたのだ」


『口だけは回るな、人間! その度胸は認めてやるが、我に八つ裂きにされる運命は変わらぬ!』


 怒ったガーゴイルとは対照的に、ネルファは冷静に口にした。


「戦う前に情けをやろう。ノルン様が欲しているのは、お前の鉤爪だけだ。その部位を置いていくなら、命だけは助けてやろう」


『情けだと!? どこまでも思い上がったな、人間風情がぁ!』


 怒りのボルテージをマックスにし、ガーゴイルは雄叫びを上げる。

 空気が震え、地面が揺れた。


 パチンと私は指を鳴らした。

 そしてネルファに告げる。


「庭の周囲に障壁を展開したわ。ネルファ、存分に暴れなさい」


「御意」


 ネルファはそう短く答える。

 私とセレンを除いて、この庭に魔術的な結界を張っておいた。

 物理的な攻撃を遮断する障壁なので、城の建物などへの被害は免れるだろう。

 そして何より、ネルファが存分に暴れられる。


「錬成」


 戦闘体制に入ったネルファは、短く呪文を呟いた。

 発動した魔術によって、彼女の手には一振りの剣が作り出される。

 それによって生成されたのは、何の装飾もない無骨な剣だった。


 錬金術。

 それは他の物を別の物に変換する魔術である。

 その応用によって、彼女は鋼を剣の形で生成したのだ。


「冥土の土産だ、ガーゴイル。特別に私の『固有魔術』を教えてやろう」


 ネルファの言葉と共に、手にしていた無骨な剣が黄金の光を帯びた。

 瞬く間にその剣は、見惚れるような美しい刀身へと変化する。


 それは聖剣だった。

 世界に七つしか存在しない伝説の剣。

 しかし、彼女の手には紛れもないその一振りが握られていた。


「――『聖剣化(ソード・リメイク)』」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ