Retrace:22 部屋のガラクタ
突然だが、私の部屋を掃除することになった。
その為に、この場には私とセレン、ネルファにラムが集まっている。
この場にいないのは、国外に出てるリッカだけだ。
あの子、元気にしてるかしら?
「それじゃあ、部屋の掃除を始めるわ。セレン、貴方がこの場を仕切りなさい」
「分かりました」
私の言葉に、セレンは頷く。
メイドである彼女は、この場の誰よりも掃除が得意な筈である。
ここはセレンの指示に従って、私達が動く方が効率的だろう。
「部屋を掃除する上で、まずはあのガラクタの山を何とかするべきでしょう」
「確かにそうね」
首肯した私に、セレンは提案した。
「ならまずは、あのガラクタを『絶対に必要な物』と『不必要な物』、そして『今後必要になりそうな物』に別けましょう」
「取り敢えず三種に分別して、分かりやすくするということだな。うむ、了解した」
セレンの言葉に、ネルファは納得したように頷いた。
護衛であり騎士でもある彼女にとって、ガラクタを運ぶなどの力仕事は持ってこいだろう。
「それでは各自、分別に取り掛かって下さい」
セレンの号令で、皆はそれぞれガラクタの山に向かっていった。
「普段意識して無かったけど、流石に物が多いわね……」
積み重なったガラクタの数々。
乱雑に捨て置かれたそれらを前に、私は呆れた声を上げた。
多い。
流石にこれは物が多すぎる。
我ながらよく今まで普通に生活出来ていたわね……。
でも、どこから手をつけようか?
私が頭を悩ませていると、ラムがせっせとガラクタを運んできてくれた。
ラムは分裂するのをやめてから、私がクッションに出来るくらいに大きくなっている。
私が魔力をあげ過ぎるせいで太ったなんて言い方は良くない。
成長したと考えるべきだろう。
大きくなって逞しさが増したラムは、楽々とガラクタを運んできてくれた。
とっても偉い子だ。
「えーと、何々?」
彼が運んできてくれたガラクタを、私は適当に物色する。
すると、一冊の古い本が出てきた。
題名は『スライム進化論』。
「スライムの進化についての論文ねぇ……。この手の分野は流石に私も専門外だわ」
「どうします? 廃棄しますか?」
横からセレンがそう尋ねてくる。
私は答えた。
「いや、これは取って置きましょう。うちにはラムもいることだし、研究合間に読んでみることにするわ」
スライムであるラムについて、何かためになる情報が得られるかもしれないからね。
「それではこの『スライム進化論』は『今後必要になりそうな物』ということで」
この本の処遇はあっさり決まった。
捨てるのは勿体無いからね。
「えーと、次は何かしら?」
私がガラクタを物色していると、何かを手にしたネルファがやってきた。
「ノルン様、この石は一体何ですか?」
「これは……何かしら?」
その石はちょうど拳くらいの大きさである。
色は黒ずんでいて、ただの石にしか見えない。
研究に使ってる魔石……ではなさそうだけど。
「どれどれー?」
私はネルファからその石を受け取り、ジッと観察してみた。
一見何の変哲もない石のように見える。
その辺の道端に落ちていても違和感のないレベルの物だ。
けどこれ……。
しっかり見てみると、僅かにピンク色の小さな粒が混ざっている。
もしかしてこれ――
「……多分これは、ヒヒイロカネを含有した石ね」
「うろ覚えなのですが、ヒヒイロカネといえば伝説の金属だった気がしますが……?」
ヘンテコな表情で、ネルファがそう口にした。
私はそんな彼女に向かって言う。
「そうね。ダンジョンの深層で稀に発見されることはあるけど、基本的には世に出回らない希少金属だわ」
オリハルコン、アダマントの次くらいに希少な金属がヒヒイロカネだ。
魔力を帯びやすく、軟らかい。
そんな特徴を持つ緋色の金属である。
「何でこんなところにヒヒイロカネが?」
「うーん……どうしてかしら?」
ネルファの質問に、私は首を捻った。
そして、頭の中で何故なのかを考える。
「あっ、思い出したわ! 確か随分昔に錬金術の真似事をしていたら、偶然どうでもいい石の中に出来ちゃったヤツだわ」
そう口にした私に、セレンが呆れたように言ってきた。
「また遊び半分でそんな希少な金属を作ってしまったんですか……」
「確かに遊び半分だったけど、作ったのは結構昔のことよ! それにその時は、ヒヒイロカネが希少な物だって全然知らなかったんだから!」
昔のことだから全然覚えてないけど!
多分特に理由もなく作ってしまった気がする。
私の主張に、セレンはキッパリ答えた。
「言い訳は結構です。それで姫様、どうしますか? ヒヒイロカネ、捨てますか?」
「うーん、その気になればまたその辺の石で作れちゃいそうだけど……」
悩ましいわね。
特に作り方は覚えてないし、もう一度作れと言われてもすぐに出来るとは思えない。
「もしかしたら何かの実験に使うかもしれないわ。捨てるのは流石に勿体ないし……」
「稀少金属……あのヒヒイロカネですからね……」
ウンウンと私の横でネルファが首を縦に振っている。
「確かにそうですね。では、これは『今後必要になりそうな物』ということで」
セレンはヒヒイロカネを含有した石を『今後必要になりそうな物』に分類した。
さあ、次に行こう。




