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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
二章 偽勇者あらわる!

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幕間:5 勇者アイク

「魔女の持つ魔力量は、世界中にある魔力を集めた内のおよそ半分程と言われています」


「……!」


 愕然とした。

 魔女が強いのは知っていた。

 だがここまで具体的に言われると、絶望的な気分になる。


 魔女の持つ魔力量は、世界中にある全ての魔力の半分。

 つまり、【終わりの魔女】と魔力量で上回るには、世界全体の半分以上の魔力が必要なのだ。


「……このまま二つ目も聞きますか?」


「頼む」


 ティアナの言葉に、俺は反射的に頷いた。

 魔女の持つ力。

 その二つ目を、彼女は告げた。


「二つ目は、魔女の持つ『固有魔術』です。魔力量よりも、寧ろこちらの方が驚異だと古文書には記されていました」


 二つ目は、魔女の持つ『固有魔術』についてだった。

 これは想像していた通りだったので、あまり驚きは無かった。


「魔女の『固有魔術』は我々とは規模の違う能力らしいです。例えば【三番目の魔女】についてですけど、この魔女の『固有魔術』は『どんなことをされても死なない』ものだったとか」


「死なないって、不死ってことか?」


「はい」


「マジか……」


 俺はこの話が空想のことのように思えてきた。

 寧ろ、そうであって欲しい。

 世界の半分の魔力量を持つ怪物が、どんなことをされても死なないなんて……。

 あまりにも絶望的過ぎる。


 そう思うと、歴代の勇者って凄い。

 そんな彼らに見事勝利し、封印してしまうなんて、素直に尊敬してしまう。


「ちなみに【三番目の魔女】を封印するために、総勢十人の勇者を異世界から召喚したそうです」


「十人がかりでやっと封印出来たってことか……」


 どんだけヤバかったのだろうか、【三番目の魔女】は……。


「でも、死なない能力だったのは【三番目の魔女】だけだったんだろ?」


 俺の言葉に、ティアナは首肯した。


「はい。ですが、歴史上魔女を殺せた人間は勇者を含めて誰一人として存在しません」


「でも、全員封印したって……」


 俺はそこまで言って、気が付いた。

 ティアナは言った。


「全員封印されたということは、裏を返せば()()()()()()()()()ということです」


「……」


 俺は黙った。

 異世界から召喚した勇者達でも、魔女は殺せなかった。

 誰一人としてだ。


 この事から分かる。

 魔女は伝承通りの怪物で、封印することがやっとの相手なのだと。


 本当に俺はこんな化け物に太刀打ち出来るのだろうか。

 そんな不安が、今更ながら頭をよぎる。

 俺はティアナに尋ねた。


「俺達が倒すべき【終わりの魔女】は、どんな能力なのかはまだ分かってないんだよな?」


「そうですね。【終わりの魔女】について、私達が掴んでいる情報は殆どありません。アミィさんの所属する情報部などが、今必死に情報を集めているところですが……」


 何も判明していない。

 その事実に、俺は溜め息を吐く。


「五年も経っているのに、何も分かってないなんてな……」


 俺の言葉に、ティアナは言った。


「【終わりの魔女】は五年前、一つの国を滅ぼしてからそれ以降全く動きがありません。一体何が目的なのかは分かりませんが」


「滅びた国って言うのは……エルタシア王国のことだよな?」


「はい。【終わりの魔女】が『覚醒』した地であり、一番最初に滅ぼされたのがエルタシア王国です」


「じゃあ【終わりの魔女】はまだその国にいるってことだよな?」


「その可能性は高いと思います。ですが、現在のエルタシア王国が一体どうなっているのか、それを知る者は誰もいません」


「それはつまり……」


「はい。生存者がいないんです。当時の王国から逃げられた人は、一人も発見出来てはいないんです」


「……っ」


 俺は思わず奥歯を噛み締めた。

 情報不足とは、つまり【終わりの魔女】から逃げられた人物が一人もいないことを示していた。


「エルタシア王国へは、各国の軍や冒険者ギルドなどが何度か調査団を送っています。ですが、あの国へ向かって帰って来た者は、現状一人もいません」


「それは深刻だな」


 事態は思った以上に深刻だ。

 現在のエルタシア王国に足を踏み入れ、戻ってきた者はいない。

 つまり現地での情報収集は、全く期待出来ないということか。


  【終わりの魔女】の拠点。

 それがかの王国であるのは間違いないが、情報不足はかなりの痛手だ。


「ティアナ、エルタシア王国を魔術とかで遠視することは出来ないのか? もしくは鳥の使い魔とかを飛ばして、上空から地上を確認してみるとかは?」


 そんな俺の思い付きの提案だったが、ティアナは残念そうに首を横に振った。


「アイクが今言ったことや、それ以外にも思い付く方法は全て試しました。ですが、全て無駄だったようです」


「無駄だった?」


「はい。おそらく国全体に高度な結界が張り巡らされているようで、外部からの魔術的な干渉は不可能なようなんです」


「……厳しいな」


 俺はそう呟いた。

 厳しいことは前から十分分かっていたことだ。

 相手は世界を滅ぼすと、そう予言された最後の魔女。

 一筋縄ではいかないことなど、元より承知の上である。


「やはりかの国から逃げられた人がいるなら、また話は変わってくるんでしょうけど……」


「そうだな。その人に協力して貰えれば、【終わりの魔女】に関する重要な情報が掴めるかもしれないしな」


 ティアナの言葉に、俺もそう口にした。

 それはあくまで生き残りがいることを前提とした考えだ。


 その希望は薄いのかもしれない。

 けれど、どこかに魔女の手から逃れ、エルタシア王国の惨劇から逃げ延びた人がいるのなら――。


 俺はそんな事を考えながら、車窓から流れる景色を眺め続けた。

 穏やかな景色。

 平和なこの光景はいつまで守られるのだろうか。


 トキリス公国まではまだまだ遠い。

 この馬車での生活はしばらく続きそうだ。

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