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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
二章 偽勇者あらわる!

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幕間:4 勇者アイク

※アイク視点。

 俺の名はアイク。

 つい先日、同盟連合に勇者として認定された俺は、馬車でトキリス公国へと向かっていた。

 それなりに広い馬車だが、今の乗客は俺とティアナの二人だけだ。


「トキリス公国か……わりと遠いよな」


「そうですね。私もあまり知らない国ですし」


 俺の言葉に、正面に座っていたティアナがそう答えた。

 トキリス公国に向かえと言われたのはいいが、俺はあまりその国を知らなかった。

 どんな国と問われても、思い浮かぶのはあのことだけだ。


「トキリス公国と言えば、あの迷宮で有名だよな」


「迷宮ですか? ああ、トワリアル地下迷宮のことですね?」


「そう、それ。あの迷宮には色々な魔物が生息してるらしいし、暇があれば腕試しに行ってみるのもいいかもな」


「そうですね」


 俺の提案に、ティアナはそう頷いた。


「ところで、アミィはあっちで合流するんだよな?」


 俺はここにはいない彼女のことを思い出す。

 アミィ・オルブライトン。

 帝国軍情報部所属の少尉であり、俺達の旅のサポート役だった。

 しかし、そんな彼女は今不在である。


「アミィさんはトキリス公国で私達に合流すると言ってましたね。何も急用が出来たとか。軍の情報部は色々大変な部署と聞きますし、少し同情しちゃいますね」


「だな……」


 聞いた話だと、アミィの歳は俺達とはそんなに変わらないらしい。

 見た目的には子供なんだけどな。

 そんな彼女が軍人として働いているなんて、想像出来ないけれど。


 そんなことを思いながら、俺は車窓に目を向けた。

 そして、流れる外の景色をぼんやりと見つめる。

 外では穏やかな日差しが降り注ぎ、緑の草木がそよ風に揺れていた。


(平和だな……)


 ふと俺はそんな事を心の中で呟いていた。

 馬車の外は心安らぐ光景が広がっている。

 まさに平和そのものだった。


「なあティアナ、魔女って一体何なんだろうな?」


「急にどうしたんですか?」


 不思議そうに首を傾げた彼女に、俺は言葉を続けた。


「今更なんだけどさ、俺ってあまり魔女の事を知らないと思ってさ。勿論昔話とかで出てくることは知ってるんだけど」


「魔女についてですか?」


「ああ。ティアナならもっと詳しく知ってるかと思ってさ」


 ティアナは姫だ。

 俺のような田舎者と違って、もっと魔女について詳しく知っていることだろう。

 俺の質問に、ティアナは快く答えてくれた。


「魔女は予言によると、全部で五人存在するとされています。それは知っていますよね?」


 俺は頷いた。

 【始まりの魔女】から【終わりの魔女】まで、全員合わせて五人。

 それが予言にある魔女の人数だ。


「予言にある通り、魔女はいままで歴史上で五人確認されました」


 ティアナは淡々と説明していく。


  【始まりの魔女】に関しては資料が殆どない為、いつ頃に現れたのかは分かっていない。


  【二番目の魔女】はおよそ千年前に現れ、異世界から召喚された勇者によって封印された。


  【三番目の魔女】はおよそ五百年前に現れ、同じく異世界の勇者によって封印された。


  【四番目の魔女】は百五十年前に現れ、これも同じく異世界の勇者によって封印された。


 そして――


「予言書に書かれた最後の魔女――【終わりの魔女】が現れたのがつい五年前です」


 五年前、【終わりの魔女】がこの世界に出現した。

 その時の世界の混乱具合を、俺もよく覚えている。


「魔女は人の子として産まれます。その子供が魔女だと気付く為には、それなりに魔術の知識がなければいけません」


「最初は普通の子供なのか?」


 俺の質問に、ティアナは答える。


「はい。魔女は『覚醒』しなければ、魔女としての力は振るえません。ただ、一度『覚醒』してしまえば、その力は絶大です」


 絶大というが、魔女の持つ圧倒的な力はこれまでの歴史が証明している。

 魔女の力はたった一人で国どころか、世界を相手に出来るのだ。


「『覚醒』……か。つまり五年前、【終わりの魔女】が『覚醒』したんだな」


「……はい。私達のデール帝国から北東にあるエルタシア王国と呼ばれる小国で、五年前【終わりの魔女】が『覚醒』したんです」


 エルタシア王国か……。

 聞いたことはある。

  【終わりの魔女】が最初に滅ぼした国こそが、そのエルタシア王国だ。

 昔から帝国との関係は悪かったらしいが、それなりに歴史のある国だった。


「疑問なんだが、魔女が『覚醒』したって、どうやって分かるんだ?」


「単純に感じるんです。具体的な表現は難しいですけど、あの時はまるで世界の明るさが一気に落ちたような感じでした」


 ティアナはそう言うが、いまいちピンとこない。

 俺はその時はただの子供だったし、魔女や勇者なんてものも意識したことは無かった。


「一般人は感じない人も多いらしいのですが、魔術的な感覚を磨いている人は五年前に感じたそうです。私も直にそれを感じましたし……」


「そうだったのか」


 五年前はまだ魔術の腕はからっきしだったから、俺が魔女の『覚醒』を感じられなかったのは仕方ない。

 そう納得したところで、俺はティアナに次の質問をぶつけてみた。


「なあティアナ、魔女が世界を滅ぼせる力を持っているのは知ってるけど、具体的にどんな力を持っているんだ?」


 人の子として産まれるなら、魔女も最初は人間なのだろう。

 けれど、個人として世界を相手に出来るイメージは浮かび難い。

 世間一般で教えられる昔話でも、魔女がどんな力を持っているのかは言及していなかった。

 しかし田舎者の俺とは違い、高い教養を受けてきたティアナはその力について知っていた。


「魔女を魔女たらしめる力とは、二つあります。一つはその膨大な魔力量です」


「魔力量?」


「はい。アイクは魔女が私達と比べて、どれくらいの魔力量を持っていると思いますか?」


 ティアナはそんな質問を投げ掛けた。

 突然そんなことを問われても……。

 俺やティアナの魔力量は常人よりも遥かに多い。

 しかし彼女の物言いでは、魔女はそれ以上の魔力量だと考えられる。


「うーん……俺の三倍くらいか?」


 悩みながら、適当に答えた。

 三倍。

 それが俺の回答だ。

 しかし、


「全然違います。アイクは自分の魔力を三倍にしたところで、世界を相手に出来ると思いますか?」


「いや、全く思わないけど……え? と言うことは……」


 俺の頭の中で閃く、突拍子のない答え。

 それはあまりに現実的ではないものである。

 だがその答えをそっくり、ティアナは口にした。


「魔女の持つ魔力量は、世界中にある魔力を集めた内のおよそ半分程と言われています」

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