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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
二章 偽勇者あらわる!

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Retrace:18 タオルクラゲ戦争

「これから貴方にやって貰うのは、ズバリ! “タオルクラゲ”よ!」


 タオルクラゲ。

 その言葉を耳にしたことがあるだろうか?

 私はある。


「タオルクラゲってあれっすよね……?」


「タオルクラゲですか。やったことはありませんね」


「タオルクラゲ? それは一体何なのだ?」


 リッカ、セレン、ネルファは、それぞれ違った反応を見せた。

 そんな彼らに、私は言う。


「知らない人もいるみたいだし、簡単にタオルクラゲの説明をしておくわ」


 私が手にしたのは、一枚のタオル。

 なんの変哲もないただの白いタオルだが、私はこれを湯の上に広げて見せた。


 タオルを湯に入れるのはマナー違反だけど、別に誰も怒らないからいいだろう。

 この浴場を使うのは私達だけなんだし。


「タオルクラゲってのはね、まずこうしてタオルを水面に浮かべるの。そして――こうよ!」


 私は掛け声と共に、水面のタオルへ手を伸ばす。

 そして、水とタオルとの間に空気を入れ、風船のように膨らませる。


 そこから更に、両手で膨らみの根元を押さえ、空気の出口を遮断した。

 すると、瞬く間にタオルは平らな状態から、クラゲの姿に形を変えた。


 事前練習も無しにやってみたけど、結構な完成度だ。

 タオルにもしっかり空気が入っていて、どっからどうみてもクラゲそのものである。


「どう? これが貴方達にやってもらうタオルクラゲよ」


 私はちょっとだけ自慢気にそう口にした。

 すると、


「「「おお~!!」」」


 三人から歓声と拍手が届く。

 こんなことで皆から褒められるって、何だか照れ臭いわね。


「……コホン。今回の勝負、私が審判をやらせてもらうわ。勿論、公平に勝敗を判定するつもりだから」


 私の言葉に、皆は素直に頷いた。

 主人である私の言葉を疑うような部下は、この場には一人もいないだろう。


「それじゃあ、今からこのタオルクラゲ勝負のルールを説明するわ。ルールは簡単。タオルを使って、このクラゲの状態をより長く維持した人が勝者よ!」


 シンプルなルール。

 より上手くタオルでクラゲを作ればいいという、実に簡単な勝負内容だ。


「原則として、魔術の使用は全面禁止。勿論、他人を妨害するのもルール違反とするわ。私からのルール説明は以上よ。何か質問は無いかしら?」


「「「……」」」


 私の言葉に、黙ったまま顔を見合わせる三人。

「質問が無いか?」と数人同時に問われると、たとえあったとしても言い出し辛い。

 その気持ち、ちょっとだけ分かる。


「本当に質問は無いの? 今の内に聞いておかないと、困るのは貴方達自身よ?」


 私がそう言うと、セレンが手を上げた。


「魔術が禁止というのは分かりましたが、道具の使用は認められますか?」


「え? 道具?」


 私はセレンの質問にビックリした。

 魔術を禁止するのは絶対としても、道具を使うというのはどうなのだろう……。


「道具って、具体的に何を使うつもりなの?」


「そうですね。たとえば、姫様が今その髪を縛っている紐とか……ですか?」


「……!」


 私はハッとして、後頭部に手を当てる。

 そこには確かに、髪を縛る紐が存在していた。


 当たり前のことだけど、元々髪の長い私は風呂に入る前に髪を縛って留めていたのだ。

 今まで意識していなかったから、紐の存在は完全に盲点だった。


 もし道具の利用が可能なら、タオルクラゲの可能性はかなり広がるだろう。

 ただ、それには別の問題があった。


「道具の使用についてだけど、今回は禁止にするわ。何でもありになっちゃうと、ネルファに不利過ぎるからね」


 道具の使用を認めてしまうと、そこには一つ格差が生まれてしまう。

 そう。

 知能の差である。


 脳筋のネルファには、道具を使うなんてルールは厳しい。

 逆にセレンやリッカは上手く使いこなしてきそうだけど。

 そもそもが公平という目的でタオルクラゲをすることに決めたのだから、道具使用は認めないというのが私の考えだ。


「んん? 何故私に不利なのですか?」


 不思議そうな顔をして首を傾げるネルファ。

 大丈夫よ。

 貴方は何も知らないままの方がいいわ。


 それよりも早く始めてしまおう。

 いつまでも風呂に入ってるわけにもいかないしね。


「それじゃあ、さっさと始めるわよ。三人とも、タオルを持って位置に着きなさい」


 私の言葉に素直に従い、彼らは湯の中で間隔を空けて並んだ。

 三人とも全裸なのに真剣な表情をしている。

 客観的に見ると、何だかシュールで面白い。


 リッカ、ネルファ、セレン。

 手にしていたタオルを、彼らは同時に水面に広げた。

 それを見て、私は宣言する。


「スタートよ!」


 タオルクラゲ勝負が始まった。

 私の宣言に合わせ、三人は素早く動く。

 そして、タオルをクラゲの姿に変えた。


「……」


 私は腕を組み、ジッと彼らのタオルクラゲを観察する。

 白いクラゲが三匹。


 ぶっつけ本番にしては中々の出来だ。

 一人くらい早々に失敗すると思ってたけど、結構やるじゃない。


「……」


 私は無言を貫いている。

 皆も、己のクラゲに集中していた。


 誰も言葉を発しない。

 沈黙が浴場を支配していた。


 これ、地味ね……。

 ネルファの提案した、“浴場の床石の隙間であみだくじ”と同レベルで地味だったわ。

 もう始めてしまったのだから、仕方のないことだけど。


 そんなことを思いながらも、刻々と時間が過ぎていく。

 そしてようやく、勝負が動いた。


「くっ……!」


 苦悶を浮かべ、最初にネルファのクラゲが水面に呑み込まれた。

 空気が無くなってしまったのだ。

 そんな彼女に数秒遅れて、セレンのクラゲにも変化が生まれる。


「……っ!」


 息を呑むセレンだが、彼女のクラゲも空気を失い、呆気なく水中に消えていった。


「ネルファ、セレンは脱落ね。つまり優勝は――」


 私が視線を向けたと同時に、最後に残ったリッカのクラゲも萎れていった。

 だが、彼女の勝利であることは間違いない。

 私は改めて口にした。


「今回の勝負、優勝はリッカよ!」


 第一回タオルクラゲ選手権は、リッカの華々しい勝利で幕を閉じた。

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