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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
八章 運命を変えよう!

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Awake:90 王都潜入

 アミィに先導され、俺達は王都内に続くという隠し通路に案内された。

 彼女の言う通り、山中にあった洞窟には小さな通路が隠されていた。

 それは随分と昔に作られたもののようだ。


 通路内に明かりは無く、かなり狭くて息苦しい。

 少し屈んで歩かなければ、天井に頭をぶつけてしまいそうだ。


「一体何に使われていた通路なんでしょうか?」


「おそらくですが、犯罪グループの密輸などに利用されていた通路でしょう」


 ティアナとアミィが交わす会話を聞きながら、俺達はしばらく狭苦しい通路を突き進んだ。

 そして、無事に外に出ることが出来た。


 古びた扉から外界に出て直ぐに、俺達は周囲を警戒する。

 どうやら隠し通路の行き先は、人気の少ない王都内の路地裏に繋がっていたようだ。


 こうして無事、王都の内側に潜入することが出来た。

 連合軍が攻城戦を仕掛けるのは、俺達がどうにかして都市内に侵入終え、しばらくしてからということになっている。

 俺達が侵入する前に騒ぎを起こせば、より警戒が強まってしまうからだ。


 しかし、問題はここから魔女を探すことだ。

 とりあえず路地の裏手に身を隠したまま、俺達は大通りの様子を伺った。


「なんですかこれ……」


「おいおい、嘘だろ……」


 ティアナとラッシュが共に戸惑いの声を上げた。

 そこに広がっていたものは、想像を絶する光景だった。


 買い物袋を両手に抱えた主婦。

 笑いながら追い駆けっこをする兄弟。


 露天で果実を売り捌く老商人。

 店の前で客引きをする、気立ての良さそうな娘。


「これは……」


 ただ息が詰まった。

 自分が見ているこの景色は、一体何の冗談なのか。

 これが王都・アロンヘイム……?


 まるで悪夢だった。

 世界を救いにきた筈の自分が、この都市では異物であるかのようだった。


 都市の内側は、まさに平和そのものだ。

 大通りには馬車も走り、物を売り買いする人の声で賑わっている。

 もしかしたらその活気は、あの帝国の帝都にも匹敵するかもしれなかった。


 住人が普通に生活していると、その報告はアミィから事前に受けていた。

 だが、ここまでとは思ってもみなかった。


 結界によって遮られ、誰も見ることが出来なかった旧エルタシア王国。

 魔女が最初に現れたその国は、誰もが滅びたと信じていた。


 エルタシア王国は魔女に支配されている。

 それは間違いないのだろう。

 けれど、なんでこんなにも――


「なんで皆、こんなにも笑っていられるんだ……?」


 恐怖があった。

 それは理解出来ないことへの恐怖だ。


 人々が奴隷として魔女に搾取されているのなら、まだ理解のしようがあった。

 でも魔女に支配されながらも、何でこんなにも幸せそうな表情を浮かべられるのか?


「ちょっとその辺の人にでも聞いてくるか? ここは本当に、あのエルタシア王国なのかってな」


「待て、ラッシュ」


 俺はそう口にしたラッシュの肩を掴み、無理矢理その場に押し留める。

 すると、アミィが彼に言った。


「ラッシュ様のお気持ちは分かりますが、魔女側に私達の位置が把握されるおそれがあります。ここは何もしないほうがよろしいかと」


「そうだラッシュ。今は先を急ごう」


「……分かったぜ」


 少し不満げな様子ながらも、ラッシュは諦めてくれたようだ。


「先行した情報部の部隊が、城までの最短かつ安全なルートを見つけております。アイク様、行きましょう」


 そう言って、アミィが俺達を先導してくれる。

 彼女の誘導は完璧だった。


 大通りを迂回し、複雑な脇道に俺達を案内してくれる。

 何度も若くして少尉を努めているのは大変だなと思っていたが、この少女は俺の思っている以上に優秀だったようだ。


「すげえな、チビッ子」


「ラッシュ様、私はチビッ子ではありません。アミィです」


 ラッシュの言葉にアミィは不満げに返答し、俺達を先導していった。



 ◆



 まるで湖の中心に浮かぶように、巨体な白亜の城が聳えている。

 俺達は広場の影から、その城を眺めていた。


「城の大きさだけなら、うちの国にも負けていませんね……」


「ああ、そうだな」


 ティアナの口にした感想に、俺も同意の言葉を返す。

 城の持つ迫力に、思わず圧倒された。

 小国と言えど、その城は王の権力が如何に絶大だったかを感じさせる。


「この国を支配しているのなら、やはりここが最も【終わりの魔女】のいる可能性が高い場所かと」


 アミィは俺達にそう言った。

 事前の会議でも同じ話が出たように、やはりこの城が魔女の拠点で間違いないだろう。


「けど、広場から伸びる大きな橋が一本か……。船で城まで向かうのは、流石に無謀そうだな」


「どうやらそのようですね」


 俺の言葉に、アミィはそう頷いた。

 大きな堀に掛けられた橋を渡らなければ、あの城まで辿り着く手段は無さそうだ。


「橋には見張りはいなさそうだ。それに遠くに見える城門にも人影は無いな」


 城門は来る者全てを拒むように、堂々と立ち塞がっている。

 しかし、そこに門番は見当たらない。


「門番はいないみたいですが、どうやら城全体を囲むように、強力な結界が張られているようです」


 ティアナがそう教えてくれる。

 その彼女の言葉に、俺は呟いた。


「結界が張られているということは、やっぱりここが【終わりの魔女】の居城か……」


 この城に魔女がいることは間違いないだろう。

 だが結界を破らなければ、城の中に入ることは出来ない。


「どうにかしてあの結界を破れないか?」


 『魔術解析(アナライズ)』を持つティアナに、俺はそう聞いてみる。

 しかし、彼女は首を横に振った。


「すいません。あの結界は高度な術式で構成されていて、私ですら短時間での解析は無理そうです……」


「そうか」


 ティアナで無理となると、一体どのような手段を取れるだろうか。

 俺がそう考えていると、ラッシュが冷静に言った。


「結界には術式の起点が必ずある筈だ。それをお前のカリバーンで壊せれば、中に入れるんじゃねーか?」


「そうだな。それが一番手っ取り早い」


 そう話していると、突然城を取り囲む結界が消滅した。

 俺達は困惑しながら、その城を見上げた。


「結界が消滅した……?」


「誰かが壊したってのかぁ?」


 突然のことにビックリしていると、隣でアミィの小さな呟きが聞こえてきた。


「……予定通りですね」


「え?」


 俺がその言葉に驚いていると、アミィは真剣な瞳で口にした。


「どうやら先行した情報部の隊員が、結界の起点を壊してくれたようです。今の内に行きましょう、アイク様!」


「あ、ああ。そうだな」


 誰かがこの強力な結界を解いてくれた。

 アミィ曰く情報部の隊員がやってくれたらしいが、何はともあれこの絶好の機会を逃す手はない。


「多分、ここからは本当の死地になる。正面突破しかない以上、城の中に入れば魔女との戦闘は絶対だ」


 俺はそう口にして、これまで旅をしてきた仲間達に視線を送った。

 ティアナ、アミィ、ラッシュ、師匠。

 全員の顔を今一度目に焼き付け、俺は大きく息を吸い込んだ。


「ここまで辿り着けたのは、皆が俺を支えてくれたお陰だ。今までありがとう。そして、共に【終わりの魔女】を倒そう」


 俺の言葉に、皆は一層その表情を引き締めた。

 この場にいる全員が分かっているのだ。

 もしかしたらこの戦いが、自分達の最期の戦いになるかもしれないと。


 けれど、もう引き返すことは出来ない。

 俺は高々に告げた。


「行こう! この世界を救いに!」

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