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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
八章 運命を変えよう!

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Awake:89 魔女の狙い

 結界内に入ってから、数日が経った。

 平和なことに、ここまで何も問題は起きていない。


 王都・アロンヘイムまでは、後少しというところまで来ている。

 それに先立ち、連合軍を幾つかの別動隊に分けた。

 流石にこの兵の数で進むのは、時間も手間も掛かる。

 寧ろ思い切って幾つかの部隊に分け、別のルートから目的地の王都に進ませた方が楽なのだそうだ。

 確かにこのまま多くの兵が蟻の行進のように列になって道を進み続けるのは、あまりにも非効率そうだ。


 俺達勇者パーティーは相変わらず本隊と共に王都に向けて真っ直ぐ道を進んでいる。

 ちなみに、俺とティアナ、アミィは自ら歩かず、荷馬車の縁に腰掛けていた。


 初日のように俺も徒歩でいいと思ったのだが、どうにも旗頭である勇者が歩いていると、他の兵達が恐縮してしまうらしい。

 ベックフォードからそのように指摘され、俺は大人しく体力を温存することにした。


 ちなみにラッシュと師匠は、すぐ後方の荷馬車に乗っている。

 流石に荷物も乗っている馬車にパーティー全員乗るのは無理があったからだ。


「のどかですね」


「そうだな」


 ティアナの言葉に、俺は間髪入れずに同意する。

 するとアミィがポツリと口にした。


「林では小鳥や鹿などの野生動物も見かけましたし、ここまではこの場所が魔女の結界内だとは思えませんね」


 今はなだらかな草原をずっと進んでいるが、林では色々な野生動物を見掛けた。

 結界内であっても問題なく、ここの自然は守られているようだ。


「しかし、魔女がわざわざ結界を張ったくらいだから、その中はどんな状況になっているのかと色々と想像していたんだけどな……」


 ここまでの平和っぷりを見ると、結界前での覚悟が薄れそうになる。

 まあ安全に王都まで向かえていることは、俺達にとっては歓迎すべきことなのだろうけど。


「そう言えば、過去にこのような結界を張った魔女なんて他にいたのか? 魔女と言えば、もっと滅茶苦茶なイメージがあったんだけど……」


 これまで現れた魔女については、俺は一通りの知識を付けてきたつもりだったが、古文書などに残された彼らの情報は、決まって理不尽な破壊行為ばかりだったのだ。

 そんな俺の疑問に答えてくれたのは、博識のティアナだった。


「確か記録に残っている限りでは、『覚醒』後に結界を張って、一ヶ所に留まったのはこの【終わりの魔女】だけですね」


「そうなのか?」


「はい。三番目の魔女が『覚醒』した場所は、その都市はおろか国すら三日で滅び去ったとされていますよ。四番目の魔女の場合ですら『覚醒』した都市は、その日の内に焼け野原になったとか言われてますし……」


 ティアナがそう語る。

 やっぱり魔女という連中は滅茶苦茶な印象である。

 都市や国を簡単に滅ぼせる理不尽な存在。

 そんな化け物をこれから俺が殺さなければいけないのだと思うと、ただの田舎から随分と遠いところまで来てしまったと呆れてしまう。


「ですから、今回【終わりの魔女】が現れたエルタシア王国も、おそらくそれらの国と同じような状況なのでしょうね……」


 ティアナは暗澹とそう言った。

 そんな彼女の話を聞いて、俺は不意に頭の中に浮かんだ疑問を口に出す。


「ところでずっと疑問だったんだけど、何で【終わりの魔女】は結界の中から動かないんだ?」


「それは……」


 分からないといった様子で、ティアナが言葉を詰まらせた。

 すると、その横でアミィが口を開く。


「これはあくまで私の推測なのですが、今の段階ではまだ魔女は世界を滅ぼす気がない――いや、滅ぼすことが()()()()からでは無いでしょうか?」


「それは世界を滅ぼす条件ってことか?」


 今のままでは世界を滅ぼせない。

 だから、魔女は何かを待っているのか?

 アミィが口にした推測は、案外的外れではないのかもしれない。


「はい。ですがアイク様、そのことについては今考える必要はないかと。魔女と対峙すれば、自ずと分かることでしょうから」


「それもそうだな」


 王都・アロンヘイムへ行き、魔女と対峙すればその辺の謎も解けるだろう。

 アミィの言葉に、俺はそう納得した。

 そして、俺は思い出したかのように話題を変えた。


「そうだ。もう一つ気掛かりといえば、ここまでの道中俺達は全く人の姿を見てないだろ? 幾つか通った村の跡地にも、人の姿はまるで無かったしな」


「そうですね。どの村も綺麗に空っぽでしたし……」


 俺の言葉に、ティアナはそう口にする。

 この数日間で幾つか村を通ったが、全て初日に通った廃村と同じ状態だった。

 誰もいない消えた村だけが、ただ取り残されていたのだ。


「ということは、やっぱりエルタシア王国の生存者はこの結界の中にもいないということなのか?」


 そんな俺の疑問に、アミィが答えた。


「それを決め付けるのはまだ早いと思います。ですがこれまでの現状を鑑みるに、その可能性も十分にあり得ますね」


 世界を滅ぼすとされる魔女のことだ。

 人間を一人残らず結界内から排除していたとしても、全く不思議では無いだろう。


 しかし、アミィはその判断は時期尚早だと言った。

 確かにまだ王都に到着していない以上、それを決め付けるのは早いだろう。


「エルタシア王国の生存者である可能性が高いと言うなら、地下迷宮で出会ったセレンさんはどうなのでしょう? 結局あれ以降、何の手掛かりも掴めてませんけど……」


 まだあの迷宮でのことを気に病んでいるのか、ティアナが俯きながらそう言った。

 確かにトワリアル地下迷宮で出会ったセレンさんは、まるで五年前のエルタシア王国での出来事を知っているかのような口振りだった。


 しかし、あれからセレンさんの消息は掴めていない。

 どうやらセレンさんは巧妙に姿を隠しているようなので、情報部の力を持ってしてもその居所を掴むことは出来なかった。


「確かにセレンさんがエルタシア王国の生存者という可能性は高いだろうな。聖剣に認められる程の実力があって、何しろ彼女は魔女の結界の外に出ていたんだから」


「やっぱりあの地下迷宮で、私が怒らせるような事を言ったからですよね。もしセレンさんがこの場にいてくれたら、どれほど心強いか……」


 確かに魔女の情報を知りつつ、七聖剣の一つを持っていた彼女の存在が今この場にいないというのは、この世界にとって大きな痛手と言える。

 しかし、それはティアナのせいではない。

 俺がそう口にしようとしたところで、アミィが先に口を開いた。


「大丈夫です、ティアナ様。セレンさんは優しい方でしたから、きっと今回も私達を助けてくれます。今はそう信じましょう」


 アミィの口にしたその言葉には、何故だか有無を言わせぬ説得力があった。


「そうだといいな」


 あくまで希望的なものではあるが、俺はアミィの言葉に期待を込めてそう口にした。



 ◆



 遂に俺達勇者パーティーは、目的の王都を視界に捉えられる距離にまで近寄ることが出来た。

 今俺達が身を潜めているのは、王都の手前に立つ山の中腹だ。


 ちなみに連合軍の本隊は、まだ山の向こう側で待機している。

 手筈通りなら、王都を囲むように幾つかに分けた別動隊もそろそろ到着し、攻城戦の準備に取り掛かっている筈である。


 山から臨む王都・アロンヘイム。

 その巨大な城塞都市の手前には、黄金の麦畑が広がっていた。


「……どういうことだ?」


 俺の視線の先には、確かに麦が栽培されて。

 それはつまり……。


「皆様、ただ今戻りました」


 麦畑を前に困惑する俺達の前に、しばらくいなくなっていたアミィが物陰から現れた。

 そんな彼女に、俺達は一斉に詰め寄る。


「アミィ、これは一体どういうことなんだ? もしかしてこの国は……」


 ここまでの規模で麦畑がある。

 俺の頭の中にあるその事実を肯定するように、アミィはコクリと頷いた。


「はい。先程この目で確認しました。アイク様の言う通り、この王都・アロンヘイムの都市機能は全く失われていません」


「そんな……」


「マジかよ……」


 ティアナとラッシュが愕然と口を開く。

 そんな彼らを他所に、アミィは告げた。


「情報部の者が遠見の魔術によって確認したところ、都市へ通じる門には人間の兵士が立っており、どうやら中では普通に市民が生活しているようです」


「……!」


 アミィの報告に、俺は自分の耳を疑った。

 可能性としては勿論考えていたが、まさか普通に市民が生活しているなんてな。


「エルタシア王国が滅びてねえとか、全然話が違うじゃねぇか!」


 ラッシュが苛立ちの声を上げる。

 その側で、ティアナがゆっくりと口を開いた。


「多分、誰もがずっと勘違いしていたんです。これまで魔女が出現した都市は、例外なく全て滅ぼされてきました。だから、世界を滅ぼす【終わりの魔女】なら、エルタシア王国も当たり前のように滅ぼしているだろうって……」


「誰が最初に言い出したのかは分からないが、『エルタシア王国は滅びた』と耳にして、それに疑問を持つような人間はこれまで一人もいなかったってことだな」


「今思えば、滅びていない可能性も十分考えられました。エルタシア王国領は結界が張られて中が見えず、これまでその内情を知る者もいませんでしたし……」


 ティアナはそう口にした。

 内から外に出られない結界がある以上、エルタシア王国の民は自ら外には出られないということだ。

 生存者がいないと思ってしまうのも無理は無かった。


「つまりこういうことなんだろ? この都市は大人しく魔女に隷属した。魔女の支配下にある国だってな」


 そう言ったのは、師匠のエルザールだ。

 そんな師匠の冷静な言葉で、混乱していた俺達は我に返ることが出来た。


「魔女が支配しているなら、国王とかはどうなってるんでしょう?」


「当然王族だからな、場合によっては一族全員皆殺しもあり得るんじゃないか?」


 そんな師匠の言葉に、ティアナはショックを受けたように固まった。


「そんな……」


「まあ滅びていようが滅び無かろうが、そんなことはこの際どうだっていい。この国を支配しているのは魔女で間違いないんだろ? それなら俺達のやることは変わらねえよ」


 師匠はハッキリとそう言い切った。

 そうだ。

 俺達のやることはこの都市に侵入し、魔女を討つことだ。

 こんなことで動揺している場合じゃない。


「師匠の言う通りだ。たとえエルタシア王国が滅びてなかろうと、俺達が魔女を倒しに来た事実は変わらない」


 俺は自分を含めた全員に向かって、そう決然と口にした。

 すると、ラッシュがアミィに尋ねた。


「それでチビッ子、どうやって中に入る? 門には兵の見張りがいるんだよな?」


「それについては問題ありません。ここから少しのところにある洞窟に、古い隠し通路を発見しました。どうやら門の内側に繋がっているようです」


「よくそんな通路を見付けたな」


「こういった潜入任務にはなれていますので」


 感心した俺の言葉に、アミィはアッサリと言った。

 そして、彼女は先頭に立って俺達に告げる。


「その隠し通路がある洞窟までは、私が案内します。皆様、どうかこちらへ」

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