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息抜き

ノットパペットロクギガバイト!

作者: 揚旗 二箱

「ただいまー」

「んっ、あ、ああんっ……ハッ!?」


 普通、帰宅して早々に同居人の自家発電行為を目撃するなんてありえないと思うけど、この家においてはしょっちゅうだ。


「ねぇ、やっぱりまだ怒ってますぅ……?」

 食卓にて。ギガは恐る恐るといった感じにわたしに話しかけてきた。態度からもわかるように、彼女は誰にその音を聞かれるかも分からない玄関で靴箱相手に喘いでいたことを非常識だと指摘されて謝意を見せようとする程度には反省しているらしい。

 ただし、彼女には少し問題がある。

「別に怒ってなんかないよ。ただ、ギガはどうして懲りないんだろうなって」

「うう、怒ってるじゃないですかぁ」

「ギガが『総量6GBのエロ画像が保存された【猫の画像】フォルダが入ったまま廃棄されたPCの、溜まりに溜まった性欲と怨念の化身』の年中発情しているデカ乳エロ女だってことは理解しているつもりだよ。でももうちょっと普通の女子中学生に気を遣おうとはならないの?」

「そういうノットちゃんだって『どこの研究所で生み出されたかも、誰の死体が継ぎ接ぎされたかも不明な縫い目だらけで低体温の大食い人造人間(ゾンビ)』じゃないですかぁ!ヒトのこといえないですよぉ」

「わたしはまだ“フツー”に暮らしているでしょ、ギガと違って」

「ふん、どこの世界に体育で右腕がもげかけて治せなくて泣きながら帰ってきて美人なお姉ちゃんに縫って以来ずぅっと裁縫セットを持ち歩いている女子中学生が痛い痛い痛い!握力がバカみたいに高い左手でつねるのは反則ですぅ!!」

「痛い痛いという割には口数が減らないじゃない……!」

 さらにぐぐっ、と力を入れるとギガは涙目で白状した。

「実はちょっと気持ちいかも……んっ」

「喘ぐなこの変態!」

 頬を上気させているギガの頭を叩くとスパーン、と良い音が鳴った。それが少し楽しくてことあるごとに叩いていると時々ビーッという電子音が鳴るので、わたしはそれを“当たり”だと認識している。

「ひええ頭を叩かないでください、私の頭にはノットと違って大切な記憶(メモリ)がたくさん入っているんですよぉ」

「何が大切よ。ド変態性癖の元となるエロ画像の情報ばっかりでしょうが」

「なんじゃなんじゃ、また喧嘩か?どうせどっちもどっちじゃよ、下らんことで争うでない」

 居間に入ってきたパペットがわたしたちをそうたしなめた。

 が、全く心に響かないので、ギガと一緒に言ってやる。

「「ド変態ジジィは黙ってて!!」」

 パペットは『300年以上生き延びてきた付喪神が巨大な力をもて余した末ためしにゴスロリの等身大少女人形(ラブドール)に憑依してみたら喋れるわ歩けるわで気に入ってしまった』という、幼女の皮を被った生粋のロリコンジジイ悪霊だ。


 そんなこんなで“性欲の化身”のロクギガバイト、“ロリコン悪霊”のパペット、そしてわたし“ゾンビであること以外は普通”のノットはこのおんぼろ廃アパート希恵入荘(きえいりそう)の一室で暮らしています。

 毎日毎日変態たちを相手取るのは大変ですが、とても楽しい毎日です。




【1-1:左右で大きさが違うのってヘンかな?】


『やあ、気がついたかい?』

『僕はえっと……そうだね、今回は君の設計者とでもしようか』

『君は女子中学生ゾンビとして作られた』

『理由はないよ。ただの“役割(ロール)”だ』

『君には他の人格と一緒に暮らしてもらうよ』

『彼らにも同じように“役割”を割り当ててある』

『細かいことは気にしないで。君らの世界は今から始まるんだから』

『そういう風に設定された世界、時間の進み方とかおかしいかもしれないけれど気にしないで楽しむと良い』

『ああそうだ、名前名前……ノットでいいか』

『それじゃあノット、行ってらっしゃい』


 これがわたしの覚えている一番古い記憶。

 顔も覚えていない、男かも女かも分からない誰かから語りかけられていた気がする。

 思い出したその瞬間は鮮明に覚えているはずが、少しでも思い出そうとするとするっと記憶から抜け落ちる。

 こうしている今も……。

 だからもう気にしないことにした。

 わたしは今日も普通に生きる。


「なんですかこれぇ?ポエムですか、前半ぐちゃぐちゃですよぉ?」

「わっ、勝手に見るな!くそっ、わたしの手が届かない位置に上げるのは卑怯だぞ!」

「夢のことを書いたんですかぁ?なんにもえっちなことが書いていないように見えますけどぉ……」

「えっちな夢ばっかり見ているのはギガだけだよ!もう、返せったら!」

「あぁ、まだ全部読んでいないのにぃ」

「まったく、わたしがギガを部屋に呼んだのは相談事があるからなのに……」

 日記帳を鍵付きの引き出しに放り込み、勝手にベッドの上に座っていたギガを床に正座させた。

「なんで私が相談を受ける側なのに床に座らされていて、ベッドの上から見下ろされているのか聞いてもいい?」

「そういうプレイよ」

「んー、確かにそうかも?分かりましたぁ」

「納得するんだ……」

 性欲が頭の中のほぼすべてを支配しているギガなので当然と言えば当然かもしれない。いつもならこのバカ、と思うところだけど今日はその知識を借りたくて呼んだのだ。

「ねえギガ」

「ん~?」

「ちょっとわたしのお、おっぱいを見てほしいんだけど……」

「わっかりました、そういうことですね!お姉さん同も異も獣も触もすべてのパターンを網羅していますからリードは任せてください!大丈夫、最初は優しくします!」

「違うわこのエロ星人!ビンタで目を覚まさせてあげようか?」

「もうビンタされてますけどぉ……」

 やはりギガを相手にするときは暴力と言葉選びが不可欠だと分かった。ちなみにいい音だった。

「あのね、わたし今日気づいたの」

「そのB-くらいの微妙な大きさにですかぁ?」

「今は黙って聞いて。わたしのおっぱい、片方づつ大きさが違うのよ。ちょっと見て、ホラ」

「え~?」

 たとえ同性であってもじろじろと裸を見られるのはやっぱり恥ずかしい……ギガに襲われる可能性を考えて緊張しているだけかもしれないけど、縫い目を見られたくなくてあまり肌を見せないように普段からしているからかもしれない。

「さきっちょはかわいい色ですよ?」

「わたしは大きさを見てって言ったの!」

「もう、いちいち叩かないでください……そうですねぇ、確かに大きさは違うんですけどぉ、そもそもこれ部品(パーツ)が左右で違いますよぉ」

「うっ、やっぱり……?」

 わたしの身体は右肩、左肩、右胸、左胸と腹、腰、右足、左足の部分に分割するようにぐるっと周る縫い目がついていて、なんとなく似せてはあるけれど肌の色とか質がそれぞれ微妙に違う。右胸と左胸が分かれるようになっているから覚悟していたけど、やっぱりショックだ……。

「学校で何か言われたんですかぁ?」

「わたしは直接言われてないけど、その、違うとあんまり良くないって聞いたから……」

「良くないって?ああ、男ウケのことですか」

「よくわかんないけど……右と左で大きさ違うのってやっぱりヘンかな」

 ちょっと怖いけれど聞いてみる。わたしの周りで一番詳しいのは、こんなんでもきっとギガなのだから良い答えが聞けるはず。

「確かに揃っているよりは奇麗じゃないかもしれませんが、そもそも男子はそんなの分かんないと思いますよぉ」

「本当に?」

「はい。私の記憶の女性は整えている人が半分、それ以外は微妙に違うようですけど彼氏さんと写っている画像もいっぱいありますしぃ……中学生なんて九割がた童貞なんですからなおさらです。気にしなくていいんじゃないですかぁ?」

「……分かった。ありがとうねギガ、たまには役に立つじゃない!」

 よし、自信が出てきた。そうよね、わたしは普通の女子中学生!左右の大きさがちょっと違っても普通ってことで!

「あ、いまお礼を言いましたね?じゃあ代わりに今から私とくんずほぐれつの汗まみれ百合園大運動会を待って、待ってごめんなさい!その定規は長さはともかく角張りすぎててどこに突っ込む気ですかぁ!」




【2-2:ひんやりとした恋心】


 僕は前野雄太。中学二年生だ。

 ベタな話だが、僕には好きな人がいる。

「しろー!ゆーた!一緒に弁当食べよう!」

「おお、今日も無事にお誘いを受けられたじゃないか。行こうぜ雄太」

「お、おう。もちろんだとも」

 それが、いま昼食にさそってくれた藤野(ふじの)ノットさんだ。

 彼女は非常に元気で、見ているとこっちまで元気になる。

 でも好きなポイントはそこだけじゃないんだ。

「よお藤野。ほら、じゃぎりこ一本やるよ」

「おお、いつもありがとう!しろーがいっつもお菓子くれるの嬉しいから、いつかお礼しないとね」

「いいよいいよ、俺はその反応が欲しくてやってるんだからな」

 しろーが目配せしてくる。よ、よし!

「藤野さん、僕もこれあげるよ」

「あ、ゆーたもありがとう。それなに、チョコレート?」

 差し出された藤野さんのてのひらにチョコレートを置く瞬間、一瞬だけ藤野さんの肌に指先が触れた。

 ああ、やはり今日もひんやりとしている。

 僕が彼女を好きな理由、それは彼女がものすごくひんやりとしているからだ。

 運動したあととか、ご飯を食べた後だとちょっと温かい。冷え性なのかなってくらい。こ、これは偶然触れたときに確かめたのであって、けっして故意に確認しにいったのではないぞ!念のため。

「しろー、この間はテストの対策プリントありがとう。超助かった。お礼にはい、卵焼き一個あげる」

「おおサンキュー藤野。あれくらいでよかったらいつでも助けてやるぜ」

 だが!彼女が一番お腹が空いている時間、つまり昼食前の彼女はそれはもうひんやりしている。具体的には室温と同じくらい。計ったわけじゃないけど、あれは絶対に30℃を下回っている。僕はそれに初めて気が付いたとき、今までにない高揚を感じたんだ。

「ねえゆーた。おーい」

 彼女の性格、そして体質。すこし変態チックかもしれないが、僕は本当に彼女が好きなんだと思う。だからよく士郎くんに相談して、こうして一緒に昼食を食べるようになってきた。彼は「お前それ軽く死体愛好(ネクロフィリア)入っていそうだけど大丈夫か」なんて言うがそんなことはないはずだ、この恋はものすごくきれいで純粋なものだと思う。でも確かに僕はどちらかというとマグロなほうが―――

「おい雄太。藤野が呼んでいるぞ」

「は、はいっ!?」

「あはは、何考えてたの?」

「い、いや別に何も……で、どうしたの藤野さん」

 僕と士郎くんが見守る中、藤野さんは当然のようにとんでもないことを言った。

「両方の胸の大きさが違う女の人ってどう思う?」

 当然、僕も士郎くんも、話が聞こえていた他の人までふき出した。

「ぶっ!?む、む、その、え?なんで急にそんな」

「このまえクラスのどこかで両方同じ方がいいって聞いたんだよね。それで家の人に確認したんだけど、べつに左右違っても男子は気づかないって言うから」

「ちょっとまった藤野、家の人って誰だ。かあちゃんか?」

「うーん、お姉ちゃんかな。一応。お姉ちゃんいっつもエロいことばかり考えてて無駄に胸でかいしよく知ってるかなって」

「おいその話を、そのお姉ちゃんの話を詳しく聞かせてくれ!」

「君まで何を言っているんだ士郎くん!?」

「えっとたしかあの時は、お姉ちゃんに見せたらまず押し倒されかけて」

「ご、ごちそうさまでした!」

「あ、雄太お前これからがいいところなのに!」

「ゆーたぁ……!」

 でも彼女は時々、こうして何かが暴走しているときがあるので非常に危険だ。僕はそういう話題が全然ダメってつもりじゃないんだけど、彼女の口から話されるとどうしてもだめになってしまう。その、いろいろ想像しちゃって……。


「はぁ……結局一人で食べることになってしまった」

 昼食の時間であまり人が来ない隅の方の階段に腰かけて一人でご飯を食べるなんだか寂しいけど今日も少し藤野さんと話せたから良かったとしよう。

 あまりにも前進がないからこのまま何事もなく卒業しちゃうんじゃないかって心配になるけど、このくらいの関係で丁度いいような気もする。逃げなんだろうけど……。

「ゆーたっ」

「うわっ!?」

 あまりにもびっくりしてお弁当を落としそうになった。

「さっきはごめん、何か気を悪くしちゃったかな」

「い、いや。そんなことはないけど……」

 突然現れた藤野さんはすごく自然に僕の隣に座った。少し走って来たのか、ちょっとだけ体温が上がっている。気がする。

「さっきの話ね」

「う、うん」

「わたし、ちゃんと普通に見えてるかなって思って聞いたんだけど、ごめんね。あんまり考えずに喋っちゃって。胸の話、嫌いだった?」

「いやその!嫌いとかじゃなくて、僕その嫌いじゃないんだけど心の準備が出来てなくて」

 一体何の話をしているんだ僕は。

「あのその、胸とかハダカとかの話はもうちょっと小さい声で、あんまり人がいないときにやるべきというか」

「……こんな感じ?」

「ひゃあ!?」

 突然藤野さんが耳元で囁いた。なんというか電流が走るような衝撃、ちょっと収まるまで立ち上がれそうにない。

「そ、そういうかんじだけど、今日はもういいかな……」

「そう?わかった。でもさっき教室から追い出すみたいになっちゃったののお詫びがしたいんだ、わたし」

「え、それはどういう……」

「だからね……」

 藤野さんがこっちをずいっと見つめている。目をそらしたくなったがここは逸らしちゃだめだ!と思う!

「今日ウチ、来る?」

「行きますっ!」

 僕は過去最高に力強く叫んだ。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

未登場キャラを含め、一応ここに設定メモを載せておきますね。

それでは。


・ノット

戦死者たちの死体をツギハギして作られた(本人談)ゾンビの女の子(中学生くらい)。目とか耳とか大きさとか色とかはわりとちぐはぐ。基本的に否定したがり。しかし自らは提案しない。最近の悩みは左右で胸の大きさが違うこと。生意気。低体温であり、その体温ですらも維持するのにエネルギーが要るために大食い。

・パペット

曰く三百歳。長年生きて意思を持った。本体とは別に外出用のドール(見た目小学四年生くらい。ゴスロリ女の子。等身大。要はロリ趣味用のラブドール)があり、こちらに入っていることが多い。しかし中身はジジイ。頑固。暇なときは適当に散歩をしている。

・ロクギガバイト

廃棄されたパソコンに入っていたエロ画像フォルダ『猫の画像』に溜まった負の精神エネルギー(独り遊びが故の空しさと発散された性欲)の怨霊。抜群のプロポーションを持ち、元が元だけに常に下ネタ的な思考が入る。変態。市民向けに解放されている体育館のフィットネスクラブに顔を出すのが趣味。


ノットの学友

・前野ゆーた

そこそこのイケメンで女子人気はある。ただしモテるというわけではない。低体温フェチであり女性の感度はマグロが理想の潜在的ネクロフィリアという真性の変態だが、ノットに対する恋心は極めて純粋である。具体的にはあっけらかんとして生意気な性格に惹かれ、見ているだけで軽度の性的興奮を覚えるくらい純粋である。

・笹山しろー

ゆーたと仲のいい親友ポジ。ゆーたから散々恋愛相談を受けるためその性癖を知る数少ない人物。よくスナック菓子やジュース、パン等を持っているため、ノットからすれば餌をくれる人という認識。姉がおりその影響で間接キスなんかには動じない主義。その反面、現実には絶対いないと信じられているギャルゲキャラ並みに女性らしさが強調された女性に弱い。

柿木(かきのき)りんの

ゆーたを好きな女の子。りんちゃん。りんりん。メタ的に言えばこの美とか野崎くん的な展開を担当する。しろーと違って甘いものを持っていることがあり、店なども知っているためノットからも重宝がられている。また胸があまり大きくないながらにも美乳であり、ノットから密かに嫉妬されることになる。実は甘いものよりは酸っぱいものの方が好きだが、友人から女の子らしくないとダメ出しを受けて以来持ち歩くのをやめた。


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