にこやかな恐怖
放課後になり僕は北条と生徒会室に向かった。
生徒会室は別棟にあり僕らは三階から渡り廊下を通り文化会系の部室がある別棟の最上階である四階まで辿り着いた。その間僕らは一言も発せず僕はただただ北条の一歩後ろをついてきただけだ。
生徒会室の前に着くと北条は軽くひと呼吸をした。
北条はなにげに緊張しているのだろうか?
僕も北条につられてひと呼吸してるのを北条が見ると
「準備はいい?」
北条が言った。
「大丈夫だと思う」
「分かった」
北条は二回ノックをした。
「はあーい。どうぞ」
友田先輩の声だ。甘い声色に全くといっていいほど恐怖は感じられず今からTeaパーティーでもしましょう?とでも言ってきそうな雰囲気だった。
しかし僕はそんなおめでたいことがある事なんて始めから無いことは分かっているし今回呼ばれた件は医者が患者に余命宣告をすることみたいなものだと思っていた。
北条がドアを開くと中には友田先輩が1人いただけだった。
「わざわざ生徒会室に呼び出しちゃってごめんね!」
「いえいえ、友美先輩に呼ばれて嬉しいです」
北条は呑気なもんだ。これからクラスメイトに余命宣告が宣告されるというのに…
「お二人とも座って座って、今お茶入れるからリラックスしててね」
友田先輩はそう言うとシンクに向かいお盆に3人分のコップを乗せて戻ってきた。
「ミルクティとレモンティどちらがいいかな?」
「私はミルクティでお願いします」
「政所君は?」
「じゃあ僕もミルクで」
友田先輩ははあーいと明るい声で返事をすると3人分のミルクティを作りそれぞれの席にそれを置いた。
「おいしい!」
「……」
「ありがとう」
友田先輩は笑顔で僕をみた。
「そういえば…」
いきなり本題か、猫舌の僕はまだ一滴もミルクティを飲んでいなかった。
「政所君って昨日私と会ったわよね」
「えぇ、まぁ、昨日近所の喫茶店の外を歩いていたら友田先輩が中にいてその時に目が合いましたね」
「嘘は良くないなぁ、私知ってるんだよ、昨日私の隣の席で政所君がコーヒー飲んでたこと。丁度柱が邪魔で気づかなかったけど店員さんに教えて貰っちゃった。私あの店員さんが好きだからあの喫茶店良く行くんだけど結構仲良いんだ」
「そんなにカッコいい店員なんですか?友美先輩なら簡単に付き合えるじゃないですか?」
北条は店員が男だと思っている。
まぁ仕方がないか、友田先輩が女好きなんて一部の人間しかしらないしそれはきっとトップシークレットだろう。
「ははは、きっと私じゃ無理だと思うなぁ」
「なんでですか?友美先輩は可愛いし頭もいいし明るくて誰からも愛される女性だと思いますよ」
「そんなことないけどありがとね万美子ちゃん、万美子ちゃんこそすごい可愛いからクラスの男子から常に視線を感じているんじゃないの?」
「そんなことないですよ、私はまだ付き合ったことも告白されたこともないですし…」
「えぇ、意外だなぁ、まぁ最近の男子はシャイで草食系が多いからね、ねぇ政所くん?」
「まぁ、確かに男同士で女子の話をしているときは強気な発言をしてる割りにいざその女子の前に立つとおどおどしてる奴なんかは多いですね」
「あんたは私の前でも随分偉そうな態度をとるけどね」
北条は僕にそう言うと友田先輩を見て笑った。