友田友美の秘密
入店してから二時間位経っただろうか。
時刻は18時になっていた。
コーヒーは既に空だが物語は佳境を迎えていたので今帰るわけにはいかない。
僕がトイレで席を立とうとした時、圧倒的に美人な女性が店に入ってきた。
友田友美生徒会長だ。
僕は机に顔を伏せて隠れてしまった。
友田先輩が男性と二人で店に入ってきたからだ。
僕の席は窓側で左には大きな柱が立て掛けており運良く友田先輩からは死角になっていた。
それを知らずか友田先輩達は柱の右側に座ったらしい。
友田先輩の声が聞こえる。
これは盗み聞きになってしまうのだろうか?
僕は友田先輩に挨拶してとっとと店を出たほうがいいような気もしたがなぜか足が動かなかった。
普段先輩がどんな話をしているのか知りたかった。あの先輩の事だ、おっとりした柔らかい口調で受験の話とか生徒会の話でもするんだろう、それにしても隣の男はなんなんだ!まさか彼氏なんてことはないだろうな!彼氏だったらこいつは校内引き回しにして謝っても許さないからな!
こんな気持ちで耳を立てて聞いていたが先輩の会話内容に僕は我を疑った。
「1年C組のひみこちゃんだっけ?あの子容姿スタイル共にAなんだけどちょっとまだ私に興味が薄いみたいね」
「そうですかねぇ、僕にはもう十分友田さんの魅力は伝わっているとおもうのですが」
「伝わっていてアレってことは私もすっかり落ちぶれてしまったわけね」
「そんなことございません。ひみこが友田さんになびくのは時間の問題ですよ、北条万美子だって今は友田さん一筋になられたじゃないですか」
「万美子ちゃんも苦労したわ、あの子は入学式初日から私の目に止まったんだもの、絶対に私の懐にいれたかったんだから」
「杞憂だとは思うのですが、、」
男は会話に間をあけた。
「政所ね、この前万美子ちゃんと手を繋いでいた下品そうな男」
「そうです、あいつはひょっとしたら友田さんと北条の関係を危ういものにしでかすかもしれません」
男は申し訳なさそうに言った。
「大丈夫よ、あいつは"私の力"で退学処分にするから、理由はなんでもいいのよ、そうね、授業中に極度に居眠りしてたとかがいいかしら」
そう言うと友田先輩は笑った。
先輩は僕が授業中によく居眠りをしていることは既に承知だった。これだと他の事も友田先輩の情報に入っているのかもしれない。
そんなことよりも居眠りをしてただけで退学なんかにされたらたまったもんじゃない。
前代未聞だ、しかし僕の高校の生徒会の権力があればそれくらいの事もできるかもしれない。
そして驚くべき事は友田先輩が完璧な女好きってことだ。僕の高校の男子がそれを知ったらみんなどんな反応をするだろうか?
恐ろしくて想像もできない。
「ちょっと」と言って友田先輩はトイレに向かった。
僕は友田先輩がトイレに向かってドアを閉めるのを確認すると急いで立ち上がりレジに向かった。
最悪な事に財布の中には一万円札しか入っておらず女性店員は接客が大変素敵で1枚1枚ゆっくり僕に見せながらお釣りを渡すと僕は急いでそれを受け取り店を出た。
ふうとため息をつきゆっくり後ろを見ると僕は窓越しに友田先輩と目が合った。
終わった、僕はスパイにも探偵にも向いてないようだ。