奴隷少女は抱きまくらである。
よく読む作品を読んでいていいよね、と改めて思ったので衝動的に。
この大陸には珍しい黒髪黒目に黄色人種の男。黒髪黒目自体は探せばまあ、いるがこの世界の人種は髪も瞳の色も個性的である。基本的に肌は白いか褐色かであり、遠方にある東方の島国でなければ彼のような人種はいない。
そんな彼は一流とは言えないが、そこそこ出来のいい冒険者であった。
そんな彼の横には柔らかな彩度の低い抹茶色の髪の毛に宝石のような鮮やかな緑の瞳の灰色でやや薄汚れた簡素なワンピース姿の少女がいた。
彼女の首には黒いチョーカーのような刺青にも似たものがある。
それは、少女が奴隷の身であるという証であった。
「いいかシフォン。君は今日からこの家で俺の生活の世話をしつつ契約通りに俺が家にいる時は毎日俺と寝てもらう。それが君が自身を買い戻す唯一の方法だ。君が俺の奴隷でいる間、君もし君が俺以外の相手と肉体的関係や恋愛関係になった場合、契約違反として君の借金は俺の購入時の十倍となり性奴隷として売却する。なお、細部はその都度主人である俺が判断する。そしてその判断の後にその前に行っていた違反は適応されない。その他奴隷基本原則は絶対である。何か質問はあるか?」
男は、そう少女シフォンに業務連絡とばかりに言う。
淡々と口にはしていたが、男の中では。
うぉおおおおど、どどどど奴隷少女来たぜぇええええ、と荒ぶっていた。
しかし、そんな感情を表に出さずに少女に対応する。
この世界に来た時と比べ、男は巨漢になったと言っても過言ではないほどに身体が鍛えられている。
伊達に職業が狂戦士ではない。
ストレングスとバイタリティが一定の高水準以上なければ成れない戦士の上位職の一つであり、この世界では数少ない上位職の人材である。
性欲に高ぶる心を表に出さずに平静を装うだけだがその内外の差を知れば狂ってやがるとだれもがいうだろうから彼は職に恥じない精神の持ち主である。
そんな彼にシフォン少女は挙手をし確認をさせてくださいと言った。
「私と寝る……と言うことですが抱くということでしょうか?」
「ああ、抱く。毎日抱いてやる。梅雨だろうと夏だろうと部屋を魔術で快適空間にして絶対に抱いてやる。これは契約内容にあるし今更変更はなしだ」
「……あぁぁ」
即答して言い切る彼にシフォンは崩れ落ちる。
しかし、逆らえないし抵抗は出来ない。寧ろ契約の都合上彼が一時的に契約を上書きしなければ首にある刺青が彼女を絞め殺すので自ら彼に抱かれに行かなければならない。
そう考えると自身に改めて自由はないのだと絶望した。
その日はもう自ら動く気がなくなったシフォンは彼の『命令』でようやく食事を取り、風呂に入った。
こんなに辛いのにご飯を美味しくて、お風呂は暖かであった。
少女の様子に男は、そんなに黄色人種が嫌かよ……と彼女が風呂に入ってる間にボヤいた。
そして、就寝時間となって彼女は心を殺して覚悟した。
そもそも自分の純血が無残に散らされるなど、親が自分を借金の返済の為に売った時点で理解していたではないかと彼女はハイライト消した目で考えた。
「ほら、こっちにおいで」
命令されるのは首がしめられて苦しいからそうなる前に彼女は動く、勝手に身体が動くのも気持ちが悪いから彼には逆らわない。
布団に入ると彼の横に寝かされる。
そして彼の鍛えられた太い腕が少女の体に回される。ゴツゴツとした足が少女の細く白い足に絡まる。少し冷たくて硬い男の体に僅かに身を震わせた。
「重いかも知れないけど、それは自分の為だと思って諦めてくれ」
そう言われて今日この瞬間に自分の処女が散るのを覚悟した。
覚悟したが、男の太い腕と足はそれからちょっと位置を変える様に動くが自分を犯し陵辱するようには動く気配を見せない。
やがて冒険の後に奴隷市場に直行して疲れが溜まっていた男は穏やかな寝息を立て始めた。
立派なベッドで男に絡みつかれ、犯されると思っていた少女は困惑する。
困惑して寝れずに彼に抱かれたまま奴隷市場の牢とは違う天井を眺めて朝まで起き続けてしまった。
窓から日の光が入り始めた頃に男は寝相で少女の身体を自信と密着させた。
寝巻きの上から少女の下腹部と胸を触るようにして抱きつき尻には男の股間が触れる。
遂に犯されるのか、と思ったシフォンであったがその時はいつまでも来ない。
ただ、本能なのかなんなのか男の手と腰は少女の身体を引き寄せ腰を押し付けて微動する。
「…………んー?気持ちいい……ん?」
寝ぼけてか、そう呟いた男が目を開けた。
そして少女の下腹部と胸を揉んでいることに気がついてサッと手を離す。
「あー……おはよう、シフォン」
「おはようございます、ご主人様」
意識がある限り主人からもらった挨拶には必ず答える原則に縛られ少女は即言葉を返す。
「俺も人を抱いて寝るのは始めてで……少しは寝れたか?」
そう言う男の心臓が急にバクバクとうるさくなったのが
密着しているせいで分かるしその鼓動に連動して彼の下半身のものが動いているのも分かる。
「……すみません。緊張して一睡も取れてません」
「なら、シフォンは寝ていろ。これは指示だ。朝ごはんは俺が適当に昨日の残り物で作るから呼びに来るまで少し寝てなさい」
少女は訳が分からなかった。
わけが分からずフカフカのベッドで男の匂いのする布団の上で女の子座りをして呆然とした。
ご飯を食べていると眠気がやって来て寝てしまった。
目が覚めたのは鮮やかな夕陽が世界を染め上げている時だった。昨日は意識してなかったから見過ごしたが、久しぶりに見る夕陽の輝きだった。
ベッドから出て家のリビングに行くと置き手紙で『少し狩りして食材を買って夜には戻る』と書いてあった。
夕陽が地平線の彼方に沈む頃に男は帰ってくる。
「ただいまー」
そう言って家の中に入って来た男がリビングに入って来た瞬間にシフォンは奴隷原則にしばられお決まりのセリフを無理矢理に口にさせられる。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
挨拶は、奴隷に言う意思がない場合刺青の魔術刻印により精神支配され無理矢理に言わせられるのである。
無理矢理言わせられた言葉だったけれど、男は何やら嬉しそうに微笑んだ。シフォンとしては今朝からこの主人である男のことがよく分からない。
「シフォンは少し料理ができるんだよな?今日の晩のご飯はシフォンが作ってくれると嬉しいよ。俺は風呂の準備するから」
命令されたら嫌でも作るしかないのだが、あの感覚は嫌なので少女はこくりと頷いて見せた。
ご飯も風呂も自分の意思で動いてやった。
少し歩いてもみたが、この家はちょっと大きめだと今更気が付いた。
戦闘奴隷でもなく自分のような少女を買うだけあって男は裕福なのかも知れないと少女はようやく思い至る。
そして、今日も彼に軽く腕を回され、軽く抱かれて眠る。
日中を寝て過ごした彼女としては全く眠くないのだが、主人の就寝には付き合う契約なので逆らえない。
男の寝顔は起きている時と違って少し子供っぽく見えた。
どうやら襲われることもないみたいだしと少女は目を閉じた。
朝起きて見ると二人は正面から抱き合うようにして寝ていて男はまだ寝ていて両手で少女の尻肉をつかんでいた。
本当は起きているのではないかと思うほどで臍の下の下腹部になに来たくて熱いものが密着している。
窓から日の光が差し込み出す頃にまた男は少し動く。
両手が少女の尻肉を楽しむように動き、少女身体を自分の鍛え上げた胸板に押し付ける。
それによって聞こえる鼓動の音が昨日のように激しいものでないのを気が付いてシフォンは寝ているのだと察するが、これはやはりどう言うことだと考える。
抱かれる。
まあ、抱かれてはいる。
しかし、男女のでベッドを共にして抱くといえばセックスだろう性交だ交尾だ繁殖行為だ。
そんなのシフォンの十六と言う年齢ならば十分に理解している。
そして奴隷商人にも男の中には独占欲が強く抱いた女が他の男に媚びうるのを嫌いそう言う追加契約をする主人もいるから重々理解しろと言われていてこの男に追加契約を言い渡された時は絶望も激しかったが、なんだこれは。
確かに主人であるこの男に、肉体的接触を求められることは多いが、それは手を繋いで歩いたりだとか髪の毛に触ってみたいだとかそんなまるで初心な少年を相手にしているようなやり取りであった。
だから、彼に買われてから一ヶ月となる夜に聞いてみた。
「ご主人様、どうして私を抱かないのですか?」
「抱いている」
私が問いかけた時に、男の心臓が大きく動いた。この主人はシフォンが自分から彼に何かをするとよくこうして驚いたように反応したり鼓動早まらせたりする。この一月で随分とその反応を楽しく感じるようになってしまっていた。
「違います。どうしてご主人様は私をレイプして処女を散らさないのかと聞いているのです」
そう言うと暗がりのベッドの中で見つめあっていた彼が赤面してそっぽを向く。
「いや待て。年頃の少女がレイプだとな処女だとか、言うな……」
そう言ってチラチラとシフォンの顔をみて少ししてから観念したかのように息を吐き捨てて答える。
「私がシフォンの心を傷つけてしまったら君が奴隷から解放された後、幸せな生活が出来ないじゃないか……。それと君は性奴隷でも戦闘奴隷でもなく主人の生活の世話係の為の奴隷だと聞いている。商人があれほどしつこく世話係の為のと言うんだ契約を違えれば恐らく俺は君を無償で解放することになる。それは、俺の目的に反する……俺は身近に人の暖かさが欲しいだけなんだ」
はぁ?とこの鍛え上げられた黄色人種の男の顔をマジマジと見る。真面目そのものだ。見続けていると恥ずかしいと目を逸らす。
なんだこの男は、黄色人種と言えばかつて大陸の東側にいて余りにも他民族や他国の女を強姦するものだから根絶やしにされたと言う歴史を持つ種族だろ、と少女は心の中で叫ぶ。
「だから、そのセック……夫婦の営みは婚約者同士か結婚してからが基本だと思う」
それがこんなことまで言い出す。
この国の貴族や王族だって使用人に手を出して襲って不祥事を起こす世の中で、田舎の小娘だってこんなにピュアじゃないわぁ……とあり得ないと言うように男を見た。
名前をなんと言ったか。
今更のようにシフォンはご主人様と覚えてればいいやとしか思っていなかった男の名前を思い出す。
セン・クズリュー。
確か、そんな名前だったか。
名前を思い出すと唐突に可愛く思えてきた。
この無骨で巨躯な男がこんな純真な心の持ち主だったなんてと笑みが浮かぶ。
現代風に言えばゴツカワイイに分類されることだろう。存在すれば。
それにひと月も同衾すれば匂いも何も何となくなれてくる。朝に男のイチモツが押し付けられているのも男の生理現象らしいが自分が魅力的だと感じられるなら悪くない。
そうやって割り切ってみれば心に余裕もできるし今になってこの男がこんなピュアな世間知らずな小娘みたいなことを言って照れているのが可愛くて、愛しく思えてくる。
だから、少しサービスしたらどうなるのか気になった。
「ちゅっ」
小鳥がついばむような唇と唇とが触れ合う程度の口付けを男にして見たくなったからした。
すると男は目を丸くして硬直する。
「私の幸せ考えてくれてるって分かったからお礼」
そう言ってシフォンは微笑みながら目を閉じて男に密着した。
男の荒ぶる鼓動を面白く思いながら男の奴隷にして小悪魔となったシフォンは眠った。
この日、男は朝になってシフォンが起きるまで眠ることはなかった。
こんな生活は少女が十八歳になって奴隷契約が解除され、それを労い祝い将来の幸せを願う男を二年間同衾し続けたベッドに押し倒す日まで続いた。