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4 優輝君

「愛華ぁ! よかったじゃない! 男子を見たって、全然大丈夫じゃん!」

 雪乃ちゃんの声に、私は我に返る。

 そうだ、私やっぱり大丈夫だったんだ。

 それにしても、なんでいきなり、こんなに大丈夫になったんだろう?

 まるで、魔法がかかったみたい……。

 とりあえず、良かったってことだよね、うん。


「雪乃ちゃん、紅葉ちゃん、梨央……ちゃん」

 梨央ちゃん、やっぱり付き合ってるの?

 私に、一言も言ってくれなかった……。

 梨央ちゃん、ひどいよっ!

 どうして私には言ってくれなかったのかな。

 やっぱり、私の事なんか友達だと思ってくれてなかった?

「梨央ちゃん、その人って――――」

 私が言いかけているとき、梨央ちゃんが笑いながら大声で言った。


「あぁ、言ってなかったね、愛華には」

 愛華にはって……。

 やっぱり、私の事なんか……。

「この人、私の幼馴染なの! ほら、優輝ゆうき、自己紹介」

 は? お、幼馴染?

 なんだぁ、もー!

 私の早とちりだったってわけ?

 なにそれ、恥ずかしすぎるじゃんっ!


 でも、よかった。

 梨央ちゃんの彼氏じゃなくて。

 って、え?

 何ほっとしてるの、私。

 もしかして私って、もしかしてもしかして私って、あの、この人、えっと、優輝君のことが、好きなの!?

 いやいやいやいや、そんなはずは!

 だって、初対面だよ?

 あ、花火大会の時にも会ってるか。

 でも、ね、え?

 えぇぇぇぇ!?

 たった2回で、たった2回で?

 今まで男子と関わらないようにしていた私が?

 たった2回会っただけの男子に恋しちゃったみたいな?

 なんでなんで!?

 おかしいよね。

 絶対おかしいよね。


「あ、えーっと、古野ふるの優輝です。よろしくー」

 あっ、適当。

 私も自己紹介した方が良いかな。

「えっと、春野愛華です。よろしくお願いします」

「愛華ちゃんって、よろしくお願いしますばっかり言ってるね」

 優輝君がおかしそうに笑う。

 そうかな?

 無意識に言っちゃってるって感じかな。

 全然そんな感じしないんだけど。

 ってか、超恥ずかしい!


 うえぇぇぇ~~~。

 あぁ、泣きそう……。

 なんで、なんでなのぉ。

 悲しいよ、笑われたー。

 ひどくない?

 紳士的なイケメン顔しといて、内面かなりひどくない?

 え、それともこれって、私のせい?

 優輝君は、フレンドリーに振る舞ってるとか?


「じゃあじゃあ、次は触ってみちゃったら!? もち愛華から」

 紅葉ちゃんが楽しげに言う。

 他人事だな、おい!

 私の気持ちも考えてよ。

 私から?

 ないないナイナイ。

 無理無理ムリムリ。

 ノープロブレムって言うか、ノーサンキュー。

 お断りします。

「無理。嫌。絶対やだ。断固拒否」

 私が断ると、紅葉ちゃんは残念そうな顔をした。

 雪乃ちゃんも。


 でも、梨央ちゃんは……。

 なんだか、安心してるって感じの顔。

 ホッとしてるっていうの?

 さっきの私みたいな感じで……。

 梨央ちゃんももしかして、優輝君のことが好き?

 梨央ちゃんには勝ち目ないよなぁ。

 幼馴染って言ってたし。

 完全に、初恋からの初失恋だ。

 悲しいっていうか、なんか……。

 何なんだろう、この気持ち。


「ならさあっ、優輝がさ、触っちゃえば? それが良くない? ねっ、梨央!」

 ゆ、雪乃ちゃん?

 ってか、なんでそこで梨央ちゃんに振るの?

 雪乃ちゃんって、いじわるじゃない?

 微妙にひどくない!?

「えっ、ゆ、優輝が? それはちょっと、愛華も嫌がってたし、優輝も――――――」

「俺はいいよ」

「はぁ?」

 梨央ちゃんと私の声が重なる。

 いらんわー、マジでいらんわー。


「私はいや」

「やめてよそんなこと」

 また同時。

 奇跡的じゃない?

 私たちって、気が合うのかな。

 でも、でもでも、それにしてもさ、梨央ちゃんめちゃくちゃ嫌がってる。

 これはもう決定的。


 やっぱり梨央ちゃんは優輝君のことが、好きというか、もう、大・大・大好きですねっ!!

 梨央ちゃんも分かりやすいなぁ。

「と、とりあえずもう帰っていいよ、優輝。あんたの役目はもう終わったんだから」

 梨央ちゃんが優輝君の背中をぎゅうぎゅうと押して、部屋から追い出そうとしてる。

 そんなに私と近づけたくないの?

 なら、優輝君じゃない人を連れてこればよかったのに。

 梨央ちゃんもバカだなぁ。


「あ、そうだ、ねぇ愛華ちゃん」

 紅葉ちゃんが耳元でそっとささやく。

 何だろう?

「何?」

 私が聞くと、紅葉ちゃんは少し恥ずかしそうに顔を赤らめ、うつむいた。

「あのさ、愛華って呼んでもいいかな」

 そ、それだけ?

 意外と事が小さかったから、私はつい、オーバーに驚く。

「全然いいよ」

 紅葉ちゃんの声が小さかったからか、自然と私の声も小さくなる。

 巻き込まれちゃってるなぁ、私。


「あとさ、私の事も、紅葉って呼んでくれないかな? ほら、私だけ愛華って呼ぶのは、なんだか変っていうか、あの、私がなれなれしく話しすぎって感じがするからさ。ね?」

 なるほどー。

 そういうことね。

 全然普通な感じの事だなー。

 紅葉ちゃんも、じゃなくて紅葉も結構なんか、子供っぽいというか、かわいいな。


「あーっ! 紅葉ったら、抜け駆けなんてズルいぞーっ!」

 雪乃ちゃんの声が部屋に響く。

 抜け駆けって、大袈裟なんだから。

 雪乃ちゃんも、雪乃って呼んでほしいってことかな?

「私の事も、雪乃って呼んでいいからねっ! あと、愛華って呼ぶ! あ、あだ名考える? “まな”とか」

 そういうことね。

 あだ名かぁ。

 考えたことないなぁ。

 それに、私この名前のせいでぶりっ子って言われていじめられてたし。

 名前でいじめるとか意味分かんないけどね。

 やっぱり、子供の考える事なんか今分かるわけないか。

 いじめとか、バカみたいだしね。

 うんうん。


「あだ名より愛華の方が良いに決まってるじゃんかぁ!」

「はぁ? あんた何様のつもりなのっ!」

 あぁ、いつの間にか紅葉とゆき、雪乃がケンカしてる!

 私のせいだよね。

 えっと、こういうときはどうすればいいんだっけ。

 えーっと、えーっとぉ。

「あっ、あ、あの、やめてぇ!」

 二人の間に体を滑り込ませて叫ぶ。

 相変わらず梨央ちゃんは優輝君を追い出そうとしていた。

 その手も止めて、優輝君が転びそうになっている。

 し、静か……。


 紅葉と雪乃はポカンとしているし、なんだか、異様な光景なんですけど。

 っていうか、さっきの騒ぎが急におさまりすぎてて、怖いくらい。

「あ、えっと、みんな……?」

 まさかだけど、みんな石の人形みたいになって固まってるとかじゃないよね?

 メデューサの蛇だったっけ、あの髪。

 あの目から放たれた光線で、みんなが石に!!

「もう、びっくりするじゃん愛華ぁ~」

 そんなはずありませんよね。

 紅葉ちゃんのどこか抜けたような声に、再び部屋に温かい空気が流れ込んでくる。


 ほわぁ、やっぱり紅葉ちゃんって、ほんわかしてる。

 あっ、紅葉だった。

 すぐ紅葉ちゃんって言っちゃうんだよね。

 慣れないからかな。

 ま、すぐに慣れるよね。

 はやく慣れたいな。

 あ、梨央ちゃんの事も、いつか梨央って呼んでみたいし。

 梨央ちゃんは私の事最初から愛華って呼んでたなぁ。

 そんな人懐こくてかわいくて、無邪気な梨央ちゃんが好きになったんだ。

 梨央ちゃん……。

 私、梨央ちゃんの事大好きだよ。

 たとえ、恋のライバルになっちゃったとしても――――――。

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