表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

1 お祭り

 私は春野愛華ハルノマナカ!

 コンプレックスありの女子中生。

 友達はいるんだけど……。

 で、そのコンプレックスというのは……男性恐怖症!

 実は私、男性恐怖症なんだ~。

 だから、男性に見られたりするのが、怖い……のかな、うん。

 それで、つい友達の後ろに隠れちゃったりしちゃうんだよね。

 今日は普通の休日……のはずなんだけど、お祭りとかいう面倒くさいものに呼ばれちゃいました。

 友達からの、お誘いなんだけど……。

 その友達というのは、夏川梨央ナツカワリオちゃん!

 あと、秋山紅葉アキヤマモミジちゃんと、冬音雪乃フユオトユキノちんがいるんだ!

 みんなはいつも男性恐怖症の私をサポートしてくれるんだけど、今回だけは違うみたい……。


「愛華! 聞きなさい!」

 梨央ちゃんが突然叫んだ。

 私はびっくりして慌てた。

 なに?


「今日は祭りで~す!」

 ぴょこっとジャンプして出てきたのは雪乃ちゃん。

 祭り? お祭り? 今日に? 冬なのに? 寒いのに?

 正月でもないのに? なんでもない日なのに?

 全く分かんない……。

 どういうこと?

 私が聞いてみると、横から飛び出してきた梨央ちゃんが笑顔で言った。

「今日はね、春山神社200周年なの!」

 そうなんだ……。

 私は梨央ちゃんのテンションの高さに圧倒されながらも、笑いながら言った。


「す、すごいね……」

「それでね、行こうよ!」

 行こう? 今日帰ってすぐに?

 って、また疑問が。

「何時に? 夜?」

 私が聞くと、梨央ちゃんはあきれながら「そうに決まってるじゃんか!」と叫んだ。

 ですよね~。

 で、だから何時?

 まったく、梨央ちゃんは重要な所だけ言わないんだから。

 困るんだけど、って、心の中で言ってるだけじゃダメなんだよっ。


「ねぇ、何時?」

「ん~、6時くらい!!」

 絶対適当に言ったよね、梨央ちゃん……。

 なんか不安だな……。

 まぁ、行ってみようかな!

 男子と目が合わないように気を付けて。

「寒……」

 私は浴衣なんて超寒いものを着て、この真冬の空の下に来た。

 中はすごいほど着こんでいるんだけど……やっぱり、寒い。

 待ち合わせ場所の春山神社前でしばらく待っていると……。


「ごめん遅れた! お待たせ~!」

 そう言いながら、梨央ちゃんが息を切らして走ってきた。

 後ろの方から、雪乃ちゃんと紅葉ちゃんも走ってきてる。

「はぁ、疲れた……。もう、梨央っ!」

「早いったらないよ……」

 二人は梨央ちゃんよりもっと息を切らして、倒れこむようにして止まった。

 だ、大丈夫かな。


「私、早く来すぎた?」

 私がそう聞くと、全然そんなことないと言われた。

 私は本当に良かったのか、分からないまま会場へ向かった。

 少し歩くと、人ごみが現れた。

 それに……広い!

 迷子になっちゃいそうな感じだけど……。

 大丈夫かな……?

 私は心配で心配で仕方なかった。


「早く早くっ!」

 梨央ちゃんの叫び声に、私は慌てて答える。

「あ、ちょっと待って~!」

 梨央ちゃんったら、すごい走ってる。

 私も追いかけてるんだけど、つ、疲れる……。

 死にそうなほど、しんどい……。


「愛華ちゃん、早くっ!」

「そうだよっ、待たせすぎるとうちらが怒られちゃうんだから~!」

 雪乃ちゃんと紅葉ちゃんが叫んだ。

 二人とも、すごい大きい声。

 あんなに遠くにいるのに、結構大きな声に聞こえる。

 まるで、耳元でまぁまぁ大きい声でしゃべられているくらいの、そんな声。

 って……怒られる?

 他に誰かいるのかな?

 私が一生懸命走って、やっと三人に追い付くと、梨央ちゃんに手で目を塞がれた。


「はい、目を閉じて~」

 私はパニックになりながらも、言われた通り目を閉じた。

 と言っても、梨央ちゃんの手で目を塞がれているから、そんなに変わりないんだけどね。


「じゃじゃ~ん!」

 パッと手を離されたから、私は目を開こうかと思った。

「何?」

 私がそっと目を開けてみるとそこには……。


「やだぁ~~~~~~~~っ!!」

 私はダッシュッ!

 そして逃げるっ!

 誰がいたか?

 そんなの分かる、よね?

 男子……ですよ。

 し、死ぬかと思った……。

 って、死ぬわけないか。

 いくら男性恐怖症でも、死にはしないよね。

 でも、イラつく……。

 あ~も~!

 嫌だあぁぁぁ!

 ほんっとにヤバかったんだからぁっ!

 もう、耐えらんない!

 触られるとか、終わってるんだから。

 男性恐怖症って、触られると不安になるとか言うけど……。


 私の場合、もう、なんだろう。

 とりあえず、嫌っていうか、逃げちゃうっていうか。

 一緒にいるだけで嫌なんだ。

 だからわざわざ女子校に入ろうとしたんだけど……受験落ちちゃって、普通の共学の中学に通ってる。

 女子校にいけたら、どんなに良かったかな。

 でも、まぁ仕方ないよね。

 頑張るしかないっ!

 それに、私には梨央ちゃんと紅葉ちゃんと雪乃ちゃんがいるんだもん、大丈夫!

 絶対絶対大丈夫なんだからぁっ!

 って、私ったら何言ってるんでしょーか。


 ……そういえば、ここ、どこ?

 見えるものは木。いくら神社でも、こんなに木が生えてるものなのかな?

 そのせいでか視界も悪いし。

 も、もしかして私……迷子? まさかっ!

 中2にもなって、迷子ぉ?

 そんなのダメじゃん。

 ダメじゃないけど、でもやっぱりダメじゃん!

 誰か探しに来てよぉ~っ。

 その時だった。


「愛華~!」

「愛華ちゃん!」

「愛華ちゃーん!」

 みんなの声が聞こえてきた。

 でも、今行くとダメなんだよぉー。

 だって、男子達のはしゃぎ声が聞こえるから……。


「もういないから、大丈夫だから~!!」

 梨央ちゃんの叫び声。

 うぅ……。

 さっきの人たちはいなくても、周りにいるから無理なんだよぉ。

 怖いし。

 そこらへんにウジャウジャいるんだよね……男子って。

 大勢で遊ぶの好きそうだし。

 それに対して私は多ければ多いほど、ぶつかったりするし、危険なんだ。

 だから、こういう所は怖いんだよね……。


 それでも来た理由は、ただ一緒にいたかったから。

 あの三人と。

 私は休日に遊んだりしないので、あまり一緒にいることがない。

 それも男子のせいなんだけど。

 でも、たまには一緒に遊びたい。

 たまには、三人に気を使わせたくない。

 私はそう思った。

 だから、ここに来たんだ。

 逃げてちゃダメ。

 男子がいたって、構わない!

 私はもう逃げたりしない。

 ちゃんと、現実と向き合うんだっ!

 私はかっこよく決意すると立ち上がって、森のようになったその場所から出ようとした。

 でも、葉っぱのせいで暗くなってよく見えない。

 浴衣のせいで動きにくい。


「痛い……っ」

 私はかすれた声を出した。

 痛みを感じる右腕を見ると、そこには細い枝が刺さっていた。

 刺さっていたと言っても、そんなにグッサリ刺さっていたんじゃなくて、ただ単に腕に食い込んでいただけ。

 でも、痛いものは痛い。

 私は左手で枝を避けると、また歩き出した。

 っていうか、声が聞こえなくなった……?

 もしかして、私もっと奥に行ってるんじゃ……?

 そう考えると、私は背筋が凍りついたような気がして、震えた。

 なんか、風が強くなってきて、寒い。

 まずはこの森から出なくちゃ!

 帰りたい、けど帰れない!


「愛華~!」

 雪乃ちゃんの声がした。

 こっちに来てるのかも。

 目の前から光が射した。

 まぶしいけど、あそこに行けばきっと、雪乃ちゃんたちに会える!

 男子の声はしないし……大丈夫なはず!

 私は歩き出した。

 そして、光のもとに辿り着くと、そこには三人の姿があった。


「みんなっ!」

 私は叫んだ。

 三人は声に気付いて振り向くと、可愛い笑顔を輝かせて、抱き着いてきた。

「愛華っ! どこ行ってたの、心配したんだからねっ!」

 梨央ちゃんは泣きそうな顔になって、私に向かって叫んでる。

 みんな、怒ってるに決まってる。

私はその場の空気に耐えられなくなって謝った。

「ごめんなさい……」

 すると、予想外の声が返ってきた。

「愛華ったら何謝ってんの!」

「私たち、友達でしょ! ……怒ってたけどさ、もういい」

「そんなつまんないことで謝んない謝んないっ!」


 えぇっ!?

 私は叫びそうになりながら、頭の中で何かと格闘する。

 さすがに、謝んなくていいってことはないんじゃ?

 いくら友達でも、それくらいは区別つけなくちゃいけないよ。

 ギギギィィィィィーーーー!!

 わっ!

 突然大きな音がした。

 な、何?

 その時、大きな何かが私たちに向かって近づいてきてることが分かった。

 あれは何……?

 私は避けることができなかった。

 体が固まったように動かない。

 そのとたん、ドンッと、何かにぶつかる音がした。

 私は目の前が真っ暗になっていくことに恐怖心を抱きながら、パニックでどうにかなってしまいそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ