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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

負の連鎖

作者: 毛玉丸子

王様→異世界トリッパー×女

攻めと受けの間に愛はありません。




お腹が重い。膨らんだお腹だ。この中には俺と奴の子どもがいるのだ。

なんて、おぞましい。

時折、お腹が内側から蹴られる。

なんて、恐ろしい。

俺の腹の中には負の結晶が寄生している。


「お加減はいかがですか、御腹さま?」

この部屋の唯一の出入り口である扉から入ってきた男が俺の横たわる寝台までやってきて微笑む。

「この鎖を外せ。俺を解放しろ。」

忌々しげに男を睨む。俺の四肢は鎖によって俺が横たわっているベッドに縛り付けられていた。腹に故意に衝撃を与えられないようにか手足を動かすわずかな余裕さえ持たされていない。

「外したら逃げるでしょうに。まあ、逃げてもすぐ捕まえますけどね。しかし、お子に何かあると私の首がとぶんですよね。」

「お前の首がどうなろうかなんて知るものか。俺はあいつの子を産む気なんてない。」

男がさもおかしそうにクスクス笑うのが異様にいらついた。

「なんでですか?かつては愛していた相手じゃないですか?」

「かつては、な。」

そう、俺は奴をかつては愛していたかもしれない。しかし、今では奴を嫌っている。それどころか、恨んでいるとも言っても良い。あれは此の世界に来て右も左もわからなかったために拾ってくれた奴に対してひな鳥の刷り込みのように好きだと勘違いしただけだ。あれから三年も経てば奴がどれほど冷酷で愛を感じる心なんてかけらも持っていないということに気づく。それどころか今では愛する女性とているのだ。

なのに、異世界の人間というだけでこうして孕まされて閉じ込められている。

この世界にはどうやら異世界の人間を得た者がこの世の覇者となるという伝承があるらしい。その異世界の人間である俺を手に入れるため手っ取り早くこうして孕ませたわけだ。「そうそう、あなたを誑かした女狐。あれが、子を産んだそうです。」

その言葉が俺に与えた衝撃は計り知れなかった。

「ど、どういうことだ。彼女は妊娠していたというのかっ!?」

「そうです。大変でしたよ。もちろん、我々としてはあなたさえ手元にいればよいのであの女のことなど放っておいたのですが、毎日のように城門で喚いていたあの女がある日突然消えましてね。あなたのことを諦めたのかと思ったのですが、ふと調べてみたら大きなお腹を抱えて隣国へ逃げようとしているということじゃないですか。急いで捕らえましたよ。ところが捕らえたのがちょうど、出産の後でしてね。最初は母子もろとも殺してしまおうかと思ったのですが、何かに利用出来ないかと思いましてね。子どもの方は生かしておいたんです。」

驚きだった。まさか彼女が俺の子どもを……。子どもの方、子どもの方というのは、まさか彼女は……。

「女狐の方は捕らえたあとすぐに死んでしまいましてね。あれですよ、産後の肥立ちが悪かったんですよ。まあ、確かに殺してしまおうかと思いましたがどうするか決める前に死んでしまいましてね。」

得体の知れない笑みを浮かべながら淡々と話すこの男をすぐさま殺してしまいたかった。彼女が死んでしまったなんて……。産後の肥立ちが悪いというのも到底、信じられなかった。こいつらは平気で嘘をつくし、顔色一つ変えずに女子供を殺せるような奴だった。

「それで、子どもの方はつい先日、この王宮に到着しましてね。今は乳母代わりの侍女に預けていますが、まあいつ殺されるかわかりません。」

思わず跳ね起きそうになるものの鎖のせいで俺の体は数ミリ程度しか動かなかった。

「もちろん、愛しい方との子どもですものね。殺して欲しくはないでしょう?」

食いしばった歯がぎりぎりと鳴る。

「何が望みだ。」

そう聞くとさも嬉しそうに男は手をたたいた。

「さすが、察しがよろしいですね。陛下もですね、愛しいあなたとの子が待ち遠しくてたまらないのですよ。」

「白々しいことを。奴が俺を愛してるだと?へそで茶を沸かすね。」

「おや、そんなことありませんよ。あの方はあなたのことを愛していらっしゃいます。そうでなければあなたとの子を作ろうとなさるはずがありません。」

「そんなご託はどうでもいい。何が望みなんだ。」

男はにんまりと笑うと言った。

「ですから、あなたのそのお腹のお子をちゃんと産んで欲しいのです。産んでさえくだされば、今よりずっと待遇はよくなりますし、時折、こっそりあの女との子にも会わせてあげます。そして、陛下のそばに寄り添ってくださいな。そうすれば周辺諸国もきっと天命は我が国にあるということがすぐわかりますからね。」

了承するしかなかった。心の中であの人に何度も謝罪する。俺らの子どものためなんだきっとあの人も許してくれる……

「よい子ですね。ではご褒美です。赤ん坊を見せてあげますよ。」


ほんの少しの間だったけれども、俺とあの人との子どもとの対面はそれから先、ずっと俺を支えることとなった。





あとがき

攻めが出てこねえ。一応、この男は攻めの側近。攻めは王様で受けは異世界トリッパー。受けが好きな女性は多分、侍女かなんか。

気が向いたら続編を書くかもしれません。

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