壱
渋谷。スクランブル交差点中心部。
そこに、普通の人間には見えない透明なトビラがある。
何千人もという人間が、何も無いかのように交差点を渡ってゆく。
私は今、透明なトビラの前に立っている。
平然とした顔で私の横を通り過ぎる人々は、私の目の前にあるトビラの存在など気づいていない。
そして、私の存在を気にしていない。私もまた、通り過ぎる人々の存在を気にしていなかった。
私はトビラの取っ手に手をかける。
今の私の心は、まさに好奇心で埋めつくされていた。
──────────1週間前.....
私は映画を見に、姉と共に渋谷に来ていた。
そこで1つの街頭アンケートに答えた。
「少しお時間いただけませんか??簡単なものなのでお願いします」
声をかけてきたのは、大学生くらいに見える若者だった。やたらと背が高いのが特徴的だ。
このようなことは過去に何度もあり、そのすべてがキャッチセールス類のものだった。
今回もそういうものだと判断し、私はその場を急ごうとしたのだけれど・・・・。
「本当に10分程度で済みます。名前や住所などの個人情報は一切記入欄がありませんので・・どうか・・」
この言葉を聞いた瞬間、なぜか私の心は動かされていた。
まるで・・なにかの催眠にかけられたかのように・・・・。
私はいつの間にかアンケート用紙を手に持っていた。
内容は心理テストのようなものが3問ほどあるだけで、個人情報を書くところは彼のいっていたとおり一切無かった。
ただ、年齢とニックネームをかくだけであった。
ニックネームは適当に書き、ほんの30秒ほどで私はアンケートを書き終えた。
「ありがとうございました!」
彼は一仕事終わったサラリーマンのようにホッとした顔をした。
私が一礼すると、彼はさっさとその場を立ち去っていった。
初めてなのであやふやですが、
読んでいただけるとうれしいです。
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