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ROUND 05 : 交錯する願い

ROUND 05 : 交錯する願い




東京、稲城。

今日は半年に1度のタッグトーナメント大会の日だ。


会場のイベントホールにケンイチはいた。

「えー、本当に出るの?」

会場に到着しても面倒臭そうに口答えするケンイチだが、姉のナナミは折れなかった。

「もうとっくにエントリー完了してるよ。

パートナーだってわざわざ呼んできてるし、テキトーに結果出してくれればいいからさ」

ナナミはそう言い、控え室の扉を開ける。

「じゃ、私は審査員やってるから後は宜しくね」

ケンイチにそれ以上何も言わせずナナミは出ていってしまった。

「パートナーって言ってもね……」

ケンイチはナナミが連れてきたその少女をちらりと見た。



会場近くの駅前ではチーム・ブラックウィングのメンバーが合流していた。

「火向さん、お久し振りです」

「よ、お前らも元気にやってるか?」

犬飼の呼びかけに答えたのは火向トウキ。

4年前と6年前の世界大会で準優勝しており、一時は日本ランキングで1位にもなった事がある猛者だ。

そしてその隣には見慣れない少女。

「火向さん、その人は?」

「ああ、こいつは──」

「この間の北海道大会の優勝者、深山フブキ……随分と豪華なゲストを連れてきたね」

話に割り込んできた声は、その場にいる筈が無い者の声だった。

「やあ、チーム・ブラックウィングの皆さん」

「堂守ハヤト!」

声の主の少年の事はその場にいた全員が知っていた。

「世界チャンピオンがどうしてここにいる!?」

「まさか大会参加者!?」

「いやいや、その気は無いよ……ただ観戦に来たら君達に出くわしただけ。

パートナーにしたい相手なんて1人しかいないし、その1人からも拒否されてるからね」

ハヤトはチーム・ブラックウィングのメンバーから2メートル程の場所で止まる。

「でも、本当に驚いたよ……あの"北の女王"に勝てた2人目も君達の仲間だったとはね。

今日は参加するの?」

「いえ、私も観戦です」

フブキはそう答える。

「それは残念……でも、他にも見る価値のある参加者は多いし、予定通り観戦していくよ。

それじゃ、今日は頑張ってね」

ハヤトそう一方的に告げて立ち去っていった。



「さあ、半年に1度のタッグマッチ・トーナメントが始まりました!」

司会の声がホールに響いた。

「本日の審査員は四条工業社長の四条ハルト氏、工藤電動機の工藤ナナミ氏、三葉産業広報部の鍵山ロク氏が担当します!

そして審判はやはりこの男!ミック!」

審査員と審判の紹介が終わり、ステージをライトが照らした。

その中央に置かれた直径3メートルのリングはごく浅いすり鉢状で、外周は高さ5cmのフェンスで囲われている。

「本日のタッグマッチは2対2の変則的なルール!

まずは赤コーナーのチームから入場です!」

ステージに上がってきたのは女子高生だろうか。

制服を着たよく似た少女2人だ。

「チーム名、ラビットツインズ!

まだこの大会で聞いたことがない名前だ!」

2人の少女は白とピンクのウサギのぬいぐるみのようなロボットをリングに置いた。

「対する青コーナーは……なんと初戦からの登場!

チーム・ブラックウィングA!」

ツバサと犬飼がステージに上がった。

「頼むから手加減──」

司会の言葉を無視するように、ツバサと犬飼はレイヴンとアヌビスをリングに投げ込んだ。

試合開始前からウサギの首が飛ぶ。

「ああ!これはいきなりクラッシュアウトか!」

その司会の言葉に反し、首を失った2台はレイヴンとアヌビスを殴り飛ばした。

殴られた2台はリング外に飛び出す。

「あーあ、せっかく新人のふりして出てきたってのに……」

「まあ、見抜かれたなら仕方がありませんわぁ」

少女2人は自分のロボットから着ぐるみを剥がした。

中から出てきたのは頭部の無い無骨なロボットだ。

「あれは……2年前の日本大会を最後に表舞台から姿を消していた絶火と紅蓮!

と、いう事は──」

「審査員さん、チーム名の変更をお願いしますわぁ」

少女の1人がそう申告する。

「あの桜木姉妹が受験から帰ってきた!

勝負はわからないぞ!」

司会の言葉に観客から歓声が上がる。

「ウチらの復帰戦の相手があの"神童"の成れの果て」

「少しはウチらの事、楽しませてくださいな」

「ハッ、ツバサは2年前とは違うぜ?」

「楽には勝たせてくれなさそうですね」

4人はそれぞれリングの端に愛機を置く。

『3、2、1、FIGHT!』

今度は試合開始の合図を待ち4台が同時に前進した。

真っ先に突撃したレイヴンがそっくりな2台の片方──紅蓮に斬りかかる。

紅蓮もタイミングを合わせ真正面から殴りかかるが、レイヴンは横へ跳んで反撃をかわすとそのまま紅蓮の横を通り過ぎリング際で急停止する。

そこからレイヴンは反転し最高速で紅蓮に飛びかかったが、紅蓮は振り向き様に振り抜いた腕でレイヴンを殴り飛ばした。

更に遅れてリング中央でぶつかり合ったアヌビスと絶火もまたアヌビスが一方的に殴り飛ばされてしまう。

「さあ、試合開始1秒でいきなりダメージポイントは4点!」

司会の手元にもダメージポイントの情報が表示され、それが読み上げられる。

「犬飼、いけそうか?」

「ああ、何とか」

ツバサと犬飼はレイヴンとアヌビスをリング際へ下がらせる。

「おやおや、元"神童"が随分と弱気ですなぁ」

相手はツバサを煽る。

「まあ、所詮は敗北を恐れて堕ちた身……大したことありませんなぁ」

絶火と紅蓮が前進し、殴りかかる。

だが、

「ああ、俺じゃ勝てませんよ」

ツバサはあっさりとそれを認めた。

リング上ではレイヴンが攻撃をかわし、アヌビスは腕のブレードを絶火の突き出された右腕に真正面から突き刺していた。

アヌビスはそのまま絶火の前腕を根本まで裂き、抜けたブレードで絶火の左肩をも貫いた。

更にそこからアヌビスは紅蓮の右腕も切断すると、その胴体にブレードを叩き付ける。

「あー!これは2台連続クラッシュアウトだ!」

審判の合図を見て司会が叫ぶ。

「あの桜木姉妹ですら勝てず!

チーム・ブラックウィングAの勝利だ!」

その試合は呆気なく終わった。

「……相性の悪い相手に当たれば対策が必要。

でも、今の俺にはその対策がありません」

ツバサは告げる。

「それを任せられるパートナーがいますから」

リング上ではアヌビスが天に吼えるようなパフォーマンスをしていた。



「さあ、気を取り直して第2試合!

まずは赤コーナー、全米最強タッグのリーダーが地元の日本で新人に目をつけた!

チーム名、鉄板乙女同盟!」

ステージに上がったのはマイカと、左手の小指の無い眼帯の少女だ。

「なお毎度のお知らせですが、神楽坂リカ選手の手の怪我は工作機械によるもので、反社会的な団体との関連性はありません」

司会の大切なお知らせにリカは手を振って応える。

「対するはチーム名、ノーネーム……一切の情報が無いチーム!」

ケンイチがステージに上がり、そして会場の視線がケンイチの後ろの少女に集まった。

「待て待て待て、どうしてお前がそこにいる!」

眼鏡とポニーテールのその少女の事は誰もが知っていた。

「何と、世界大会準優勝のMIO選手の登場だ!」

「おいおい、勘弁してくれよ」

リカはリングに恐竜のようなロボット──Dレックスを置く。

MIOもまた暗緑色のロボット──ガン・デュミナスをリングに置いた。

「私だって、頼まれなかったら来なかったわよ」

「まあ、来たからにはやるんでしょ?」

マイカもケット・シーをリングに置き、最後にケンイチが赤いロボットをリングに置いた。

『3、2、1……』

試合開始のカウントが終わらないうちにケット・シーとDレックスが走り出す。

『FIGHT!』

そして試合開始の合図が鳴った瞬間、ケンイチのロボットは真っ直ぐに噛み付いてきたDレックスの口に拳を打ち込んだ。

Dレックスはタイミングを合わせてケンイチのロボットの拳に噛み付き持ち上げようとするが、逆にケンイチのロボットがDレックスを持ち上げる。

その横ではケット・シーの長くのびる腕をガン・デュミナスがかわし、それを見越していたのかケット・シーは左腕を構えて突撃していた。

そのケット・シーの脇に振り回されたDレックスが叩き付けられ、そこにガン・デュミナスが右腕から発射した弾丸を連続で命中させた。

「ダメージポイント10点!

あっという間に決まった!」

試合は僅か数秒で終わってしまった。


「……Dレックスを持ち上げた?」

客席のハヤトはその違和感に気付いていた。

「あの重量級を持ち上げるパワー……それに、MIOが出てきている……

ぜんぶナナミの仕業か」

ハヤトは審査員席のナナミに視線を向ける。

ナナミはというと、既にハヤトに向かってピースサインを突き出していた。



1回戦が終わり、2回戦が始まった。

「さあ、2回戦の第1試合は……これは見物だ!

チーム・ブラックウィングAとノーネームの対戦!」

司会の言葉に観客は盛り上がる。

「2年前の日本大会の1回戦第1試合、あの"神童"烏丸ツバサを新人のMIOが破った伝説の1戦のリベンジマッチ!

烏丸ツバサはチーム・ブラックウィングという新たな力を手にし、今度は世界大会準優勝のMIOに勝てるのか!」

「……随分と盛り上げてくれるね」

ツバサは静かにレイヴンをリングに置く。

「でも、リベンジマッチはシングルでやらなきゃ意味が無い。

この試合はノーカウントだ」

「勝つ前提……それだけ自信があるのね」

MIOもガン・デュミナスをリングに置いた。

「……悪いね、ケンイチ君。

君だけ外野みたいなメンバーで」

「いいんですよ、実際外野ですから」

ツバサの気遣いもケンイチには不要だったようだ。

『3、2、1……』

試合開始のカウントが始まるが、レイヴンもアヌビスも動き出す気配が無い。

『FIGHT!』

試合開始と同時にケンイチのロボットが前に飛び出すが、ツバサ達はそれを待って一瞬遅れて動き出した。

右腕を振り上げたレイヴンと左腕を振り上げたアヌビスは、孤立したケンイチのロボットに向かう。

「クロス・ブレイド!」

ツバサと犬飼はタイミングを合わせ、レイヴンとアヌビスの左右の刃が叩き付けられた。

ただしそれは、ケンイチのロボットではなくその後方にいたガン・デュミナスに対してだった。

レイヴンとアヌビスはケンイチのロボットの左右を素通りしていたのだ。


レイヴンの爪とアヌビスのブレードに挟まれ、ガン・デュミナスの首が宙に舞った。


ハヤトはその試合も観客席で観戦していた。

「そうだ、それでいい……」

ハヤトはそう口にする。

「敗北は、誰の元にも公平に訪れる」




登場機体紹介


Dレックス

操縦者 : 神楽坂リカ

ベース機体 : オリジナル

クラス : ハイエンドクラス

パワー : 35

スピード : 5

レスポンス : 4

モーション : 3

ウェイト : 20

リーチ : 2

バランス : 5

備考 :


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