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ROUND 04 : たったひとつ、鉄の拳

ROUND 04 : たったひとつ、鉄の拳




「園田ァ!」

自分を呼ぶ声を聞きながら、園田カンタは状況を理解した。

目の前の大男の懐から飛び出したロボットが、長い2本の爪で園田の胸を切り裂いていた。

だが、傷は浅い。

園田は背中が地につく前に踏み留まり、全身に力を込めると筋肉の隆起でシャツが弾け飛んだ。

「そっちの相手ならしてやる!」

園田は腰のポーチから自身のロボットを取り出した。

「あ!あれは!」

少年達が反応する。

「日本ランキング6位!

ホーンビートルだ!」

シュウが口にしたその名の通りカブトムシのような角が頭部にあるロボットが、地面に落ちると同時に大男のロボットへと突っ込んだ。

その角が高速で前後し、大男のロボットに襲いかかる。

しかし大男のロボットは右腕の爪だけで高速の連打を受けきり、左腕の爪をホーンビートルの胴体に強く打ち込んだ。

その一撃でホーンビートルは大きく吹き飛ばされ、胴体正面のフレームも割れてしまった。

「なんてパワー──」

園田が最後まで言い終わらないうちに大男の懐から2台目のロボットが飛び出し、再び園田の胸が引き裂かれた。



車の中でサーバル・グランツは収録現場の様子を見ていた。

「はい、予定通りマーゲイがゴーストを2台出しました。

もう1台もそろそろ出る手筈です」

そう、サーバルは誰かに連絡する。

「ええ、我らブラックローズ社の初の実戦ですから……予定は守りますよ、ネロ社長」



「生身で近付くのは危ない!気を付けろ!」

監督の指示でスタッフ達が大男とロボットから距離を取って向き合う。

「バッテリー切れまで消耗させて──」

その時、監督達よりも後方から漆黒のロボットが投げ込まれた。

そのロボット──レイヴンは大男のロボットのうち1台へと襲いかかり、爪で弾かれる。

「荒事なら俺達の役割、でしょ?」

ツバサは弾かれたレイヴンを着地と同時に跳躍させ再び大男のロボットへと斬りかかった。

更にもう1台に対しては氷室のマルートが左腕の剣を叩き付ける。

だが、大男の方から3台目のロボットが飛び出し、レイヴンとマルートの間を通り抜けてしまった。

「犬飼さん!」

マイカのケット・シーが右腕を上げた。

「合わせろよ!」

意図を察した犬飼がアヌビスの左腕を上げる。

2人は同時に愛機を大男のロボットへと突っ込ませた。

「クロス・ブレイド!」

その掛け声を合図にタイミングを合わせ、2台は全く同時に大男のロボットへと斬りかかる。

しかしそのロボットは3本の爪を展開し、アヌビスとケット・シーの頭部を同時に破壊してしまった。

そのまま3本爪のロボットはギャラリー達の方へと──


その時、赤い外装のロボットが3本爪のロボットに殴りかかった。

3本爪のロボットがその拳を弾き、火花が散る。

「……本当は、面倒だから出たくなかったけど」

そう口にしたのはケンイチだ。

その右手にはコントローラーが握られている。

赤いロボットはというと、左側より一回り大きな金属製の右の拳を低く構えた。

「避難、急いでください。

ダメだと判断したらすぐ逃げるんで」

「全員、駅まで行って!急いで!」

スタッフがギャラリーを移動させ始めた。

3本爪のロボットはというと、ケンイチ達のやり取りを待つように爪を畳み両腕を下げている。

「……やっぱり、戦う相手がいるならそっちが優先か。

じゃあ、相手がいなくなったらまた人を襲う?」

3本爪のロボットはケンイチの問いに答えるように左右の爪を展開し、右の爪でギャラリー達の逃げた駅を指す。

「……」

ケンイチは無言でコントローラーを操作した。

『3、2、1……』

試合開始のカウントが始まり、

『FIGHT!』

その合図で赤いロボットと3本爪のロボットが同時に前進した。

まずはケンイチの赤いロボットが右の拳を突き出し、3本爪のロボットが左の爪で払い除ける。

3本爪のロボットは間髪入れずに右の爪で斬りかかったが、ケンイチのロボットは拳を弾かれた勢いのまま機体を一回転させて右の拳で爪を弾く。

そのまま両者はすれ違い、3本爪のロボットは立ち止まりながら振り返る。

しかしケンイチのロボットは既に後方へと跳びながら空中で回転しており、そのまま防御の間に合わない3本爪のロボットの顔面へと着地しながら拳を打ち込んだ。

3本爪のロボットは後方へと吹き飛ばされたものの立ち止まる。

ケンイチも無理に追撃をせず赤いロボットを立ち止まらせる。

立ち止まった3本爪のロボットは左の爪で地面を3回叩いた。

その意図を理解したケンイチはコントローラーを操作しダメージポイントを2点入力する。

「3点は多いでしょ?」

3本爪のロボットは再び地面を3回叩いたが、ケンイチは構わず赤いロボットを前進させると右の拳を真っ直ぐに突き出す。

今度は3本爪のロボットは無理に防御せず横へと跳んで攻撃をかわした。

防御ごと押し込むつもりでいたケンイチだったがかわされたと判断した瞬間には機体を回転させ拳で凪ぎ払い、3本爪のロボットも即座にもう1歩跳んで避けると着地の瞬間に右の爪を振り上げた。

ケンイチのロボットはその爪を左腕で受け流すが、外装に深い切り傷がついた。

3本爪のロボットは更に左の爪で間髪入れずに追撃し、今度は右の拳で受けたケンイチのロボットが弾き飛ばされる。

「今のは3点?」

ケンイチの問いに3本爪のロボットは立ち止まり、地面を2回叩いた。

「謙虚だね、さっきから」

ケンイチは赤いロボットの右腕を高い位置で構える。

対する3本爪のロボットも左腕を突き出し右腕を引いた構えを取る。

そのまま睨み合う両者。

しかし近くのスピーカーから12時を知らせる音楽が流れ出した瞬間、3本爪のロボットは大男の方へと戻り出した。

ツバサと氷室が相手をしていた2本爪のロボット2台も同様だ。

そして大男もやはりその場から逃走し始めた。

「……やっと終わった」

ケンイチの口から本音が漏れた。



月曜日。

校長室から出てきたツバサを出迎えたのは同級生のカエデだった。

「随分と短い話だったのね」

「ああ、テオさんが先に話をつけてたみたいで。

特に叱られたりとかは無かったよ」

廊下を歩きながらツバサは説明する。

「結局、あの後も逃げた男の行方はわからないまま……どこの誰かもわかってはいない」

「園田さんは?」

「あの人は軽傷だってね。

でも元傭兵のあの人じゃなかったら重症だったかもしれない」

ツバサは少し迷い、そして口にする。

「多分、一番近くで顔を見た園田さんはあの男を知ってる。

テオさんは話を聞いてて、そのうえで俺には『誰かわからない』って言ってた……嘘だとわかるくらい動揺してた」

「……大人の事情?」

「どういう事情なんだろうね……出来れば二度と関わりたくない。

あのテオさんが動揺してたんだもん」

ツバサは先日のMIOの話を思い出す。

軍事ロボットの開発者であるネロ氏による宣戦布告、そして元傭兵である園田が知っている可能性のある実行犯。

恐らく無関係では無いだろう。

だが、それはカエデは知らなくて良い話だ。

「どちらにしても、謹慎処分みたいな事にはならなくて良かった。

予定通り、来週は稲城に行けるよ」

ツバサは笑った。

「向こうがその気なら見せ付けてやるよ……リングの上でね」




「さあ、お集まりの皆さん!お待たせしました!」

インターネットの奥、ごく限られた者しかアクセスできないサイトでその配信は始まった。

「本日、ブラックローズ社の製品紹介をさせていただくのは代表のネロ・クロノワール・ブラックと申します!」

画面に映っている部屋にいるのはまだ子供のように見えるが、10年ほど前からロボット工学で名を知られ数年前に軍事ロボット開発に乗り出したという実績のある人物だ。

「さてさてさて、本日紹介するのは先日発表した新商品!

ゴーストのフルパッケージ版です!」

画面には先日の公開収録現場を襲撃したロボットが映し出される。

各関節の角ばったモーターユニットは一般的な競技用よりも一回り大きく、それを競技用の機体サイズにまとめている為にかなりずんぐりとした印象だ。

頭部は半透明のバイザーの奥に単眼のようなLEDが点灯し、そして何より両腕の長い2本の爪が目を引く。

「先程動画を公開したように日本で実戦試験を行いました!」

『子供に止められていたな』

配信画面の端にコメントが表示された。

「ワタクシの敬愛するチーム・ブラックウィングの上位陣ともなれば流石に分が悪い!

しかし彼らと戦っていた2台は1人で同時に操縦していたのです!」

画面にはあの大男の様子が拡大される。

「脳波操縦システムに操縦支援AIを搭載!

大まかな命令で複数台を操縦する事もできますし、逆に1台の操縦に注力すればより複雑な命令も可能です!」

更に画面が切り替わり、3本爪のロボットがアヌビスとケット・シーを迎撃したシーンが再生される。

「この通り、1台に注力すればこの戦果!

おまけにコントローラーは小型で手も使わないから操縦者を隠せます!

この1台はギャラリーの1人が操縦していましたが気付かれていません!」

画面はまたネロのいる部屋に戻る。

「競技用サイズの小型のロボットで普通の鞄に隠して持ち運びが可能!

更に大容量バッテリーで長時間の運用が可能!

まあ当然ながら純粋な殺傷能力は通常の兵器に劣りますが、それらと併用する事でお互いの弱点をカバーできます!」

『暗殺に使えそうだ』

『市街地に大量展開できる』

様々なコメントが飛び交う中、ネロは上機嫌に笑う。

「にゃっはっは、その通りです!

隠密性こそが最大の武器!

誰にも気付かれず大量展開する事も、最後まで気付かれず任務を遂行する事も、それは使用者のアイディア次第!」

ネロが耳に小型の機器をかけるとゴーストの実機が画面の前に飛び出してきた。

「品物は全て受注生産となります!

ご予約お待ちしています!」

配信はゴーストがカメラのレンズを叩き割る姿を映して終了した。




登場機体紹介


ゴースト

操縦者 : マーゲイ・グリント

ベース機体 : オリジナル

クラス : ハイエンドクラス+

パワー : 32

スピード : 20

レスポンス : 28

モーション : 9

ウェイト : 12

リーチ : 3

バランス : 6

備考 : 凶器使用あり


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