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ROUND 01 : 伝説の帰還

「さあ、2年に1回のリトルヒーローズカップ世界大会もいよいよ決勝です!」

国技館に司会の声が響いた。

スポットライトに照らされたステージには直径3メートル程度の浅いすり鉢状のリングがあり、その外周は高さ5cmのフェンスで囲われている。

「赤コーナーは日本大会地区予選の最中にデビューしたばかりの超新星!

日本大会の初戦であの"神童"烏丸ツバサを一方的に下すなど、圧倒的な強さを見せつけた!」

司会の言葉に合わせ、1人の少女がステージに上がった。

「MIO選手!

使用機体はガン・デュミナス!」

眼鏡にポニーテールのその少女は、手にしていたロボットをリングの端に置いた。

高さ10cm程度のそれは暗緑色と黒の外装で、右腕は銃のようになっている。

そして司会は入場アナウンスを続ける。

「対する青コーナーは昨年の国内大会から無敗!

先程の準決勝では"王者"ジャック・ブラッドリーの3連覇を食い止めた男!」

MIOとは反対側から1人の長身の少年がステージに上がる。

「堂守ハヤト選手!

使用機体はブリューナク!」

少年はリングに青い甲冑と長い槍のロボットを置いた。

「さあ、日本大会決勝の再戦となったこの勝負!

どちらが勝っても初優勝!

そんな決勝も審判はこの男、ミック!」

体格の良い大男がリング際に立ち、リング左右の2人を交互に見た。

「準備はいいですか」

審判の問いに答えるように2人はリングから1メートルほど離れ、コントローラーを手にした。

MIOは拳銃のようなコントローラーを左手だけで握り、腕を突き出して構える。

対するハヤトは一般的な市販コントローラーを右手で持ち、左手はタッチパネル操作をする構えだ。

「制限時間は3分!10ポイント先取または時間内にポイントの多い者を勝者とする!」

審判が改めておおまかなルールを説明し、その背後のスクリーンにリングの様子が映し出された。

「それでは──」


決勝のゴングと共に始まったその25秒は、後に語り継がれる事となった。




ROUND 01 : 伝説の帰還




千葉県のとあるバス。

小学校の授業が終わり、学校前のバス停からいつも通りの面子が乗ってくる。

まずはフードを目深に被った少女。

それから、学年が上らしい少年達。

少年達はいつも通り一番後ろに座り、楽しそうに話の続きを始めた。


「いや、本当に良かったよな昨日の西東京大会」

「全国予選の終盤はやっぱり強い人が集まってるよな」

少年達の話題は昨日TV中継されたロボット大会の事だ。

「でも優勝した猫村マイカって、昨日がデビュー戦なんだって……しかも俺らと同い年」

「いいじゃん!

俺達も大会出ようぜ!」

盛り上がる少年達だったが、1人は冷たかった。

「やめとけよ……いくら金がかかると思ってるんだ」

窓際に座った少年は窓の外を眺めている。

「市販キットで数千円、それを改造するともっとかかる。

しかも壊れた時の予備部品代だってバカにならない」

「ケンイチはやっぱり詳しいな」

「シュウ、大会出る気なら知っとけよ……それに、この辺りは環境が悪い」

少年の視線の先には駅前の大きなビルがあった。



そのビルの最上階。

そこにはリトルヒーローズカップに協賛するミヤノ模型が一般解放しているホールがあり、練習用のリングが3個用意されている。

しかしそのリングの周りではケンイチ達より年上の少年達が既に荷物を広げていた。

「今日もダメか……」

シュウはその様子を見て落胆する。

たまに彼らがいない日もあるため一応は来ているのだが、ここ最近は毎日3個のリング全てを占領されている。


彼らはチーム・ブラックウイング。

大会ルール違反すれすれの過激なプレーで知られる不良少年集団で、メンバーは全国にいるもののリーダーの住むこの街は特に勢力が大きい。

一応は声をかければ脇に避けてくれるのだが、小学生のケンイチ達には声をかけにくいというのが正直なところだ。

だが、そんな彼らにケンイチ達の背後から声をかける者がいた。

「あなた達!いい加減にして!」

その声の主はケンイチ達のクラスメイトのサキだ。

「もう来ないでって言ったでしょ!」

サキはケンイチ達の脇を素通りしホールへと踏み込む。

少年達はいつも通り作業の手を止め、いつも通り雑な対応をする。

「そうは言っても宮野のお嬢さん、俺達はルールは守ってるぜ?

使いたいって言ってもらえれば脇に避けてるしな」

「声をかけにくいのよ!

ガラの悪い集団で騒いで!」

サキは一歩も引かない。

「だから今日は、正式にお願いに来たわ」

鞄から何かを取り出したサキに少年達がざわついた。

「チーム・ブラックウイング……その代表に果たし合いを申し込む」

サキが少年達に見せたのは、『果たし状』と書かれた往復ハガキだ。

「伝統の果たし状……本気なんだな」

少年達の中の1人が歩いてきた。

「生憎、今日はツバサはいない。

今日は俺が相手でも構わないか?」

少年の言葉に、サキは強気で返す。

「構わないわ。

私が勝ったら来ないでもらうわよ」

サキは一番手前のリングの際まで移動し、鞄から自分のロボットを取り出す。

対する少年もリングの反対側に立ち、別の少年から自分のロボットを受け取った。

そのブルーの外装にマントを取り付けたロボットを見てシュウが声をあげた。

「宮野!その人はマズい!」

しかしその忠告は間に合わず、サキが自分のロボットをリングに置いた瞬間に少年は自分のロボットを投げた。

少年のロボットはサキのロボットの首をはねてしまった。

「──えっ」

サキは理解が追い付かない。

その足元に愛機の首が落ち、少年のロボットが左腕の剣をサキに向ける。

「……ゴング前の先制は卑怯だが即失格にはならない。

そして、試合を続行できない損傷を受けたらクラッシュアウトとして敗北になる」

シュウが大会の公式ルールを説明する。

「だが、ゴング前のクラッシュアウトを狙う程の卑怯者は滅多にいない。

それを平気でやるのが氷室ソウヤ……その人だよ」

「詳しい奴がいるな」

氷室は一瞬だが視線をシュウに向けた。

「そういう事だ、宮野のお嬢さん……俺の勝ちだ。

もう来るなとは言わないが、まだ立ち退きを求めるなら何度でもやってやる」

「取り込み中、失礼……烏丸ツバサはいる?」

突然、ケンイチ達の背後から誰かが話に割り込んできた。

少年達もケンイチ達も声の主を見る。

「こいつは驚いた」

氷室はその少女を知っていた。

「おい、マジかよ」

シュウも当然知っている。

「どうしてここに」

少年達もざわつく。

その眼鏡にポニーテールの少女はケンイチ達の隣を通り、氷室の目の前で立ち止まった。

「烏丸ツバサに話があるの」

「悪いね、今日はまだ──」

「今日はツバサは来ないよ」

氷室の言葉を遮ったのは、またケンイチ達の背後からの声。

「犬飼、遅いぞ」

「悪いね、氷室さん……そっちじゃ面倒事があったみたいで」

歩いてきたのは小柄な少年。

背は低いが中学の制服を着ている。

「それで、世界2位のMIO選手が直々に何の用?」

その問いに、少女は──MIOは答えた。

「烏丸ツバサに話があったの。

貴方にも伝言は頼めない」

「ああ、じゃあ明日がいい……明日なら来れる筈だ」

犬飼の答えを聞き、MIOはもう用が済んだ様子だった。

「わかったわ……明日、また来る」

「その前に、」

しかし犬飼はMIOを帰すつもりは無かった。

「せっかく2年ぶりに表に出てきたんだ、ちょっとくらい付き合えよ」

「あら、貴方じゃ釣り合わないんじゃない?」

MIOの言葉に犬飼は返す。

「そういうのがオイシイんだよ」

「……わかったわ、相手してあげる」

MIOはリングの際に立ち、氷室は自分のロボットを回収してリングから離れた。

「遠慮はいらない……本気で来い」

対する犬飼もサキが離れたリング際に立つ。

「おいおい、タダで見ていいのかコレ……」

シュウは2人がリングにロボットを置くのを見て興奮を隠せない。

「日本ランキング20位のアヌビスと、2年前の世界大会準優勝のガン・デュミナスの勝負だぞ」

そんなシュウを無視し、2人はコントローラーを構える。

MIOはコントローラーを握った左手を突きだし、犬飼は両手でしっかりと持つ。

「準備はいい?」

「いつでも来い」

2人がコントローラーのボタンを押すと、音声が流れ出した。

『3、2、1、FIGHT!』

その合図に合わせ、2人のロボットは同時に動いた。

犬飼の真っ黒なアヌビスは足のローラーを回転させ正面へと突撃し、MIOのガン・デュミナスは右腕の銃を構える。

ガン・デュミナスの銃から光る弾が放たれるが、アヌビスは右腕のブレードでそれを弾いた。

「アヌビス!」

犬飼が叫び、音声認識でアヌビスが前屈みになる。

「ハウンドファング!」

そのまま4つ足の姿勢になったアヌビスは大きな口を開け、ガン・デュミナスに食らい付いた。

アヌビスはガン・デュミナスをリング際まで押し込み、2機はフェンスを乗り越えリング外へ飛び出した。

「衝突のダメージポイントが2点、更に両者にリングアウト・ペナルティで3点ずつ」

シュウが解説する通り、犬飼は既にふたつのLEDが点灯しているコントローラーに更に3つ点灯させた。

MIOもまたLEDを3つ点灯させる。

「そしてリングアウト後はまた両コーナーから仕切り直しだ」

2人は自分のロボットを回収しリングに置く。

「時計は止まらない……試合再開タイミングは任意だ」

数秒間2人は睨み合っていたが、アヌビスが先に動いた。

「ハウンドファング!」

再び音声認識でアヌビスが大きな口を開いたが、ガン・デュミナスは横へ時計回りに回転しながら1歩脇へと逸れるとアヌビスの側面から右の肘を叩き付ける。

更にガン・デュミナスは回転の勢いを乗せた蹴りでアヌビスを突き放し、今度は銃身を叩き付ける。

1回転半したガン・デュミナスは銃を構えた姿勢で立ち止まり、素早く2発の弾丸をアヌビスに浴びせた。

「……発射体の命中は1ポイント、それが2発。

更に打撃がそれぞれ2、2、1の合計5ポイント」

シュウの解説通りMIOのコントローラーのLEDは新たに5つ点灯しており、更にMIOが発射体のカウントをふたつ足す。

「先のリングアウト・ペナルティと合わせて10ポイント。

私の勝ちね」

MIOはそう告げ、ガン・デュミナスを回収するとホールから立ち去った。


それは、はじめて間近で目の当たりにした世界トップレベル選手の戦いだった。




登場機体紹介


アヌビス

操縦者 : 犬飼ケンジ

ベース機体 : ソニックギア・スタンダード

クラス : アドバンスドクラス

パワー : 7

スピード : 5

レスポンス : 7

モーション : 8

ウェイト : 5

リーチ : 1

バランス : 7

備考 : 凶器使用あり


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