【序章】共通5話:選択の扉
『咎の上に咲く花』
この物語は、「罪とは」「赦しとは」「記録とは何か」を問う、
恋愛×ファンタジー×構造ミステリ。
乙女ゲーム形式のマルチルート構成で、
主人公は6人の登場人物と出会い、
それぞれの“咎”と“記録”に向き合っていきます。
最後には、全ての真実が収束する“構造の中枢”に至ります。
夜の帳が下りた修道院。
静かに扉がきしむ音に、胸の奥がわずかにほどけた。
【エルノア】
「……おかえり」
その声は、変わらず穏やかだった。
祈りにも似たやさしさが、私を包む。
【アメリア】
「ただいま、戻りました」
少しの沈黙。
エルノアはわたしを見つめて、そっと問いかける。
【エルノア】
「なにか、掴めそうな気配はあったか?」
(家族のこと。なぜ消されたのか、なぜわたしだけが生きているのか──)
(……ほんの少しだけ。なにかが、繋がりそうな気がした)
【エルノア】
「何を記すかは、君が決めることだ」
「記すというのは、ただ書くだけのことではない。見ること、聞くこと、そして──そのすべてに、向き合うこと」
「書き残すことが、すべての救いになるとは限らない。記されたことで、誰かが傷つくこともある」
エルノアは静かに目を伏せた。遠い記憶を辿るかのように。
【エルノア】
「それでも君が帳面を開くのなら、私は止めない。君の言葉で綴るというのなら……それはきっと、君だけの祈りになるだろう」
「記すかどうかは、君の選択に委ねる。だが、それとは関係なく──」
「私は、君が笑っている未来を願っている」
私は頷き、静かに部屋へ戻った。
机に記録帳を広げる。羽根ペンを手にしても、しばらくは書き出せなかった。頭の中に、さまざまな声とまなざしが残っていた。
出会った人たちの姿、言葉、そして、触れかけた感情。
ふと、窓辺の花に目がとまる。まだ固く閉じた蕾が、光に触れて、少しだけ開こうとしているようだった。
(まるで、わたしみたい)
あの人も──心に蕾を抱えているのかもしれない。
(あの人は──きっと、何かを知っている)
(私が記すことで──真実は、見えてくるだろうか?)
選択肢が、心の中で浮かんでは消えていく。
それは、すべての"記録"の始まりになるのだった──




